三十二升目。
「アキ・・・・・・、お前・・・・・・」
「幸太ー。アキじゃないよ、明子だよ」
「風呂出たと思ったら明子か・・・・・・」
頭をかきながらもアキと明子の入れ替わりにもう慣れている幸太。
「幸太の話でしか聞いてなかったけど、
これがアキちゃ、じゃない、明子ちゃん?」
「うん。滝口さん、改めてよろしくお願いしますっ」
ぺこりと頭を下げる。
「あぁああ!さっきもそのまま可愛かったけど、
これはこれで別で可愛い。幸太、お前幸せものだな!」
「なんでそうなる・・・・・・。
明子も嬉しそうにもじもじするな。
というか、お前。髪型かなり違うくないか?」
「うん?あ、そか。ほらほら、今日はウィッグかぶってるの」
「ウィッグ?」
幸太と滝口は顔を見合わせる。
「んっと、簡単に言うとかつらかな」
「かつらでずいぶんと変わるんだねー」
嘆息する滝口
「つか、お前その服どうしたんだよ」
「これは明子の服だよー」
「あの大荷物、それか」
「うん。うち出るとき女の子の服持てるだけもってきたの。
だから部屋で着る服とかほとんどなくって」
「それでこの間の買出しか」
「うん!」
嬉しそうにくるりとターンをする明子。
くっ・・・・・・という呻き声が聞こえ、
肩に痛みを感じて振り返る幸太。
滝口がうつむきながら幸太の肩を力強くつかんでいる。
「どうしたんだよ、滝口。おい?」
「やっぱり、一緒に風呂入っておけばよかったぜ」
「・・・・・・明日から一緒に入れ」
「明日は俺いねえじゃん!」
「知るかよ」
「冷てぇえ!幸太冷たい!お前は毎日一緒にいるから・・・・・・」
「お前なあ」
「ねね。二人とも」
「なんだよ?」
「なに?アキ・・・・・・じゃない、明子ちゃん」
「ボクおなか減ったの」
にっこり笑う明子。




