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合成清酒  作者: 初菜
合成清酒三
31/89

三十升目。

はしゃぐ二人を見て、幸太はまた海面に視線を落とし、

釣り糸の先・・・・・・。海の中のことを何ともなしに想像する。

図鑑やテレビ、水族館で観た光景を想い出し、

さらになにか幻想的なものまで想い浮かべていた。


その時。


「おぉおお!」

「おーーー!」

アキと滝口、二人の歓声が上がった。


再び二人の方を見る。

スズキの大きいのが釣り上げられていた。

「ちょっとアキちゃんは離れてて」

滝口がそう言いながら手際よく締める。

「すっごいすっごい!!」

「アキちゃん、初めてなのにやるねー。

よし!これでオッケー」

血抜きを終わらせ、アキの方を見て、

「持ち上げてみる?」

アキは大きくうなずいて、

ものおじせず滝口に手伝ってもらいながら持ち上げる。

「70センチちょっとってところかな」

そう言いながらスズキを抱き上げてるアキを記念撮影。

「すごい!でっかい!」


「今夜の魚はこいつだな」

はしゃいでるアキからスズキを受け取り、滝口は幸太を見る。

「なんだよ、俺が捌くのかよ。

魚ならお前のがうまく捌けるじゃないか」


滝口は船の保冷庫にスズキを入れながら、

「ああ、捌くのは俺がやる。調理は幸太な。

じゃ、アキちゃん。もっと釣って行こうか。他の魚も釣って食べよう。

俺らが食べる以外はオーナーと栄子さんへお土産に持ってこうな」

「うん!」

すっかり楽しくて仕方がないアキは目をきらきらさせて、大きく返事をした。


幸太の釣果は灰皿にタバコの吸殻が増えてゆくだけだった。

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