二十七升目。
「じゃ、開けるぞ」
オーナーが鍵を出し、
岸田の倉庫に入ろうとした時。
携帯のバイブレーション。
「あ、俺です」
慌てて幸太は携帯を見て
「すいません、ちょっと電話出ます」
通路の奥に少し入り、
背中を向けながら電話に出る。
しばらくし戻ってきた幸太に、
「お前のお母様は超能力かなにか使えるのか?」
「え?なんで母だってわかったんです?」
「なんとなくな、なんとなく。
今のお前の背中を押してやるような話だったんだろ?」
「・・・・・・オーナーの方が超能力ですよ」
アキと滝口が顔を見合わせて笑う。オーナーはそれを横目で見て、
「今度アキを親御さんに紹介したらどうだ。
なあ、アキ。滝口も面白そうだと思わないか?」
「オーナーは相変わらずっすねえ。アキちゃん困ってますよ」
「軽口だ、軽口。人のプライベートにはあまり触らん」
「もうっ。みなさん!ボクで遊ばないで下さいっ」
なにか照れたような感じを隠すようにアキがドアの方へ向かう。
今までの岸田や幸太たちの昔話で重たく感じていたそのドアは、
アキが近づくと迎え入れるようにすっと左右に開いた。
「え?」
予想外のことに立ち止まるアキ。
幸太と滝口もそのまま開くと思っていなかったので、
ぽかんとしている。
オーナーはアキの方へ近づきながら後ろへふりかえり、
「お前ら二人が頼りないからアキに開けてもらった」
「気にしなくていいぞ、アキ。
ここに来ると決まったときにもう鍵は開けてあった。
あとは誰がドアを開くか、だけだったんだ」
アキの肩に手をのせてから頭を軽くぽんぽんとたたく。
「幸太、滝口。ほら、いくぞ。
ドアはアキが開けてくれた。入るのまで任せるのか?」
幸太と滝口はうなずいて開いた倉庫の中へ入って行く。




