二十四升目。
「お、アキちゃんもいける方?」
「はいっ」
「そうかー。今日は幸太が心配しないで、
がんがん頼めって言ってるから、飲むか!」
「そうなんですか?」
「うんうん」
「じゃあ、飲みます!」
ソファーへ落ち着き、まず最初はビールから、と。
ビールを頼み、つまみを選び出す二人。
幸太は、二人が座るのを見てから
「ちょっと用すませてくる」
そう言って店のどこかへ行った。
「つまみはね、ハモとカンパチが今日のお勧め」
「滝口さん詳しいんですね」
「さっき俺が仕入れたやつだから」
そう言って大きな声で笑う滝口。
「すごい!このお店のも滝口さんなんですか」
「魚はね。今日はここで仕事終わりだったから、
そのまま飲みだしたわけ」
「盛り上がってんなあ」
幸太は案外早く戻ってきた。
「幸太ー!」
「幸太!」
「ごちそうさまー!!」
「ごち!」
アキと滝口が揃って乾杯しながら出迎える。
「はあ?ごちって、お前ら」
「今日は幸太がおごってくれるって」
「うん今日は幸太がおごるって」
「おい、滝口・・・・・・」
「いやー、幸太が怒ったー」
「怒ったー、幸太怒ったー」
「相変わらずいい性格してんな、おい。
・・・・・・いいよ、今夜は俺が出す。その代わり滝口」
「んー。わかってる。あれだろ。手伝うよ」
「ありがと、なっ」
言いながら滝口のわき腹に幸太のパンチが軽く入る。
「くっ。なんだよー」
「幸太ホントはホントに怒ってるの?」
心配そうな顔になるアキ。
「いや、感謝の挨拶だ」
「アキちゃん。そいうこと。それじゃ、三人揃ってあらためて」
「かんぱーい」
それから三人はしばらく飲んでライブに乗って騒いで遊んで・・・・・・。
アキはいつの間にか幸太にもたれかかり静かに寝息をたてている。
滝口が薄手のジャケットを上からかけ
「今日一日色々回ったみたいだから疲れたんだな」
ついでにウィスキーをロックで二つ頼む。
「幸太。お前、さっきオーナー探しにいったんだろ?」
「ん、ああ。けどまだ今日は来てないって」
「今日は来るの遅いってよ」
「お前、知ってたのかよ」
滝口の方へ体ごと振り向く幸太。
「んー、んにゃ・・・・・・」
何かつぶやいてまた寝息をたてるアキ。
「アキちゃん起きるから急に動くなよ」
「悪い」
「幸太。ここに魚入れてるの、俺だぜ」
「あー、そうだった。じゃあ、さっき教えてくれよ」
「用って岸田のあれだろ。
そんなの知らないアキちゃんの前だ。だから黙ってた」
幸太はウィスキーを一口なめなてから。
「お前は本当、昔からそういうとこ気が回るよなあ」
「だろ?気がきく男はもてるんだぜ」
にやりと笑いながらグラスをかかげる。
ふぅ、と一息はいてから、
「でも、ま、こいつにいつまでも内緒ってのも無理あるしな。
好奇心のかたまりみたいなやつで、
変なとこでちゃんと頭回ったり気を使うからさ。
岸田のことはそのうち言うよ」
「栄子さんや理穂、あと俺にかかわってたらそうなるか」
「うん」
「お前とアキちゃん、お似合いだよ。やっぱり」
「はあ?こいつ、こう見えて男だぞ、男」
「性別関係無くだよ」
「わっからねー」
「昔から幸太はそうだよな」
二人は顔を見合わせて軽く笑い、
今度は幸太もグラスをかかげて乾杯と言った。




