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合成清酒  作者: 初菜
合成清酒三
22/89

二十一升目。

アキは目を輝かせて雑貨を見てる。


幸太が理穂に平謝りし、無事理穂の店を出た後・・・・・・。

アキは幸太が一緒に行くと約束した店を回っている。


栄子にやられてアキを自分の家にしばらく住まわせる事になった幸太。


しかし他人の家にしばらく住むとなると、

アキはアキで自分用の雑貨や服が少しは要る。


「先に服が欲しいなあ」

雑貨店にくる前に服を買いたいと言うアキに付き合って、

服屋で三時間ほどかかった幸太は、

雑貨店の外でいかにも疲れたという顔で煙草を吸っていた。


アキは男物の服はもちろん女物の服も選んでいたから三時間は短い方かもしれない。


「お前、俺が連れてくるまであんなところにいたくらいだから、

あんまり金持ってないだろ。服くらい買ってやるよ」


ぴょんぴょんと飛び跳ねて嬉しそうに、

「いいの?ホントに好きなの買っちゃっていいの?」

テンションを上げて小躍りするアキ。

「持ってきた服だけじゃ足りないだろ」

「ありがとー!こーた!!」


喜びながらも流石に遠慮がちにアキは服を選ぶ。


ちらっと幸太の方を見て、好みの服を目で指す。

幸太はいいんじゃないかと頭をかきながらうなずく。


そんな事を繰り返していたのだ。

だからやっぱり三時間は短かったのかもしれない。


「ヱビスビールは高級品、か」

煙草の灰を落としながら呟く。


普段の幸太は発泡酒などを飲んで節約していたりする。

幸太自身なぜそうしているのかわからないまま、そうなっていた。

アキと会うあの夜も飲み放題プランの居酒屋が贅沢だった。


しかし実のところ幸太はそれなりに金は持っていた。

建築家として、デザイナーとしての彼の才能はかなりの評価がある。


『そうだな。岸田の馬鹿がおいてけぼりにさっさと死んでから、

俺はあの頃のままの生活続けてるのかもな』


死んだ友人の事を思い出しながら吸い終わった煙草をちょうど灰皿に捨てた時、

「幸太ー、買ってきたよ!」

アキが雑貨店から出てきた。

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