二十升目。
「やっぱり安心と信頼の理穂だな」
保管されている家具を見て満足そうに言う幸太。
「・・・・・・。・・・・・・」
「アキちゃん、急に黙っちゃってどうしたの?
言葉が出ないまま二人を見てるアキに気がついて理穂が話しかける。
「えっと。これって、これって」
「うん、これって?」
「これって幸太が買うって言ってたものなんですか?」
「そうよ。これ、幸太の注文の品」
「幸太・・・・・・こんなに沢山家具買ってどーするの?
お引越しするの?高そうだよ。お金は?」
「アキ、確かに俺が注文したし、俺が買うけど俺のじゃない」
「じゃあ、これどーするの?」
「幸太ー。あんた、ひょっとしてアキちゃんに自分の仕事説明してない?」
「あ。説明してなかった」
「うん。聞いてない!」
アキは目をくるくるさせて理穂と幸太を交互に見る。
ピリリリリリリリリリ。
ちょうどそこへ幸太がアキに預けた携帯がなる。
「わ、ど、どうしよう?幸太ー」
「仕事のだから気にするな。
しかし今日かかってくる用事なんかあったか?」
アキから携帯を取って着信を確認し、
「ちょっと電話出る」
二人に向かってシーっというように人差し指を唇にあてる。
五分ほど会話の後。
家具の一部を指でさしながら、
「理穂、悪い。それとそれとそれ。ちょっと保留でいいか?
それからまた注文するかも」
「りょーかい。設計変更?」
「ま、そんなところ。一部だけどな。
ほれ、アキ。もう今日はかかってこないと思うから」
携帯をまたアキへ渡す。
「むー。アキだけぜんぜんわからない!」
「あ、ごめんね。アキちゃん。
幸太の仕事知らないとわかんないよね」
「ごめんなさい。大きな声出しちゃって」
「いいのよ。説明しない幸太が悪いんだから。この極悪人」
「なんで極悪人になるんだよ」
ため息をひとつしてから、
「アキ、俺の仕事は一応建築家。設計士とかそういうやつ。
説明しそびれてて忘れてて悪かったな。ごめん」
「建築家?あのテレビとかでてくるよーな?」
「まあ、そんな感じでいいよ。んで、自分が建てた物には自分で選んだり、
デザインした家具を置きたい。それで、これだ」
保管されてる家具に親指を向ける。
「幸太はね、こんな馬鹿に見えるけど、
この業界じゃ結構な有名人なのよ」
「馬鹿に見えて悪かったな」
「ごめんごめん。実際馬鹿だった」
「アキ。理穂はな、とうがたってるけど、
ああ見えて業界じゃ・・・・・・」
言い終える前に幸太は不穏な気配を感じて理穂を見た。
「幸太。あんた無事に店から出れる自信、ある?」
「ごめんなさい」
あっけにとられてるアキに前で幸太は平謝りしていた。




