十九升目
「痛ってぇえ・・・・・・」
腰をさすりながら階段を上ってゆく。
「あんな蹴りで情けないわね。
ぶつぶつ言ってないでさっさと上る」
「理穂。お前、あんな蹴りって言うけどなあ」
「いいから行く」
「はいはい」
「あの、どこまで上るんですか?」
「一番上よ、アキちゃん。四階まで上るの」
「俺みたいに特別にオーダーしてるのは四階に移されて保管されてんだよ。
品物の保管もセキュリティも一番の場所」
「へえぇええ」
目をきらきらさせながらアキは理穂を見上げた。
「アキちゃん、そんな感心されると照れちゃう」
「え、でもだって、こんなお店持ってて、
お客さんに売るのも理穂さんが全部するって凄いです」
「まーな。だから俺も理穂んとこなら安心して任せてられるし」
「ちょっと、二人とも。変に褒めないでよ」
少し顔が赤くなる。
「褒めてないです。ホントにそう思ったんです」
「俺も本気で言ってんの」
理穂は
「ありがと」
顔を赤くして少しうつむいて一言ぼそっとつぶやく。
「よし。到着っと」
幸太はポケットからカードを取り出して壁のでっぱりにかざす。
ピっという電子音。そしてがちゃっと鍵が開く音。
「幸太、何したの?」
「鍵開けたんだよ。ここの鍵」
「今ので?」
「そう、今ので」
「アキちゃんカードキー知らなかったんだ」
「はい、初めて見ました」
「ちょっとしたSF映画みたいでしょ」
「はい!」
「あー、まあな。使い慣れるまでは俺もかっけーとか言ってたな」
「幸太はこういうの好きよねー」
「でも幸太のお家は普通の鍵だった」
「俺はこういうの好きだけど、ああいう鍵も好きなの」
「さ、二人とも入るわよ」
理穂が扉を開ける。




