十五升目。
「幸太、どこ行くの?」
「とりあえず駅。電車乗る」
「りょーかい」
二人は昼過ぎの太陽の下、歩いてゆく。
「ね、幸太」
「ん?」
「栄子さんって素敵な人だね」
「ああ、まあな。つーか、お前、それよりも、
栄子さんって変わり者。とか、なんであんなお店に土地持ってるの?とか。
そっちに疑問ないのか?」
「あるって言えばあるけど、気にしない」
にっこり笑う。そして。
「だって、栄子さんボクの事、何も聞かないで、
色々教えてくれたり遊んでくれたり」
「うちに泊まれるようにしむけたり、お酒くれたりか」
「うん!でもそれだけじゃないけど・・・・・・。
ほら、みんな色々あるんだから無理に聞いたりしないで、
その人が話したくなったらそういうときにちゃんと聞けばいいと思うんだ」
吸ってた煙草を携帯灰皿へねじりこみ、
「お前は本当に凄いのかもな」
幸太は煙を吐き出しながら言う。
「そうかなあ?」
「最初に会った時からもう色々とすげぇよ」
「まだ会って二日なのに遠い目してるよ、幸太」
「そういえばまだ二日しかたってないんだよなあ。
ところで、アキ。お前、結局買い物どうすんだ?」
「お買い物したいけど、ほら」
両手をばさばさと上下に動かしてカァーと鳴く真似。
「なにやってんだ?」
「旅カラス」
「・・・・・・。
お前、時々出てくるその変な知識どこで仕入れてくるんだよ」
「変じゃないよー」
「変だよ。じゃあ、買い物しないのか?」
「んー、でも行きたいなあ。
どうしても欲しいのあれば買っちゃうかもしれないし。
それにこの街、色々見てみたい」
幸太は足を止めて少し考えてから、
「とりあえず、行くか。俺も雑貨とか欲しいのあるし」
「うん、いこーいこー!」
「今日はとりあえず買い物中心だな。服とか雑貨でいいか?」
「はあい」
駅は目の前だ。
駅に入り、電車の切符を買いながら、
「買い物。それと・・・・・・」
つぶやく幸太。
その手から切符を渡されるアキ。
お礼を言ってから聞き返す。
「それと?」
自分の切符をひらひらさせながら
「一通り見たり買ったりしたら飲みに行く」
笑う。
「それがホントの目的でしょ、幸太」
「そういうこと」
あまり待たずに来た電車に二人は揺られて、
街へ向かう。途中、アキは物珍しそうに外を眺めていた。
降りる駅で幸太はアキの腕をつかんで、
「ほら、迷子になるなよ」
人ごみの中ひっぱってゆく。
「うん。もし、はぐれたら栄子さんの所にいるね」
「場所、覚えたのか?」
「ここから栄子さんのとこまではなんとなく」
「そりゃ、心強い。迷子になっても心配ないな」
「うーん。でも、駅の外で迷子になったらわからない」
「だろうなー」
「うん」
「じゃ、とりあえずそこの喫茶店、入るぞ」
人ごみを抜け、幸太とアキは目に入った喫茶店のドアを開けた。




