表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
合成清酒  作者: 初菜
合成清酒一
1/89

一升目。

お昼近く。

幸太は目を覚ました。


大きく伸びて、あくびをしてから

「あったま、痛ってー」

とひとり言

「はい、お水」

幸太は差し出された冷えた水のコップを受け取り

「おぅ。ありがとう」

と答え。


頭をふってから、水を差し出した相手の方へ顔を向け。


『・・・誰?この女の子』


その言葉は幸太の頭の中で発せられた。

そして顔を向けたままコップを持ってしばらく固まった。


時間を戻そう。


幸太は昨夜、

居酒屋をハシゴして帰る時にいわゆる家出娘と出会った。


酒の勢いで、面白半分同情半分で家に一泊させる事にした。

部屋は2DKだから問題もない。あっちとこっちで寝ればいいだけだ。


その時かなり酔っていた幸太の記憶はすっとんでいるが、

そういう経緯で連れてきた子。


しかし酒の勢いと面白半分と同情半分とは、

どういうことかと言われそうだが、

これはこれで全否定は出来ないような気もする。

終電間近に会った女の子が、行く場所がない、とか。


言い訳ではあるけれど。


そしてそれだけではなく、

幸太自身気づいているかいないか、というところだが、

どこか行き詰まりなそのまま進んでいく日常。

そこからどうやってでもいい、その日常に変化を欲しがっていた事もある。


固まって記憶がすっとんでいる今の幸太に、

「昨日は飲みすぎだよ。はい、冷たいお水飲んで、

シャワー浴びてくるといいよ」

「あ、ボク勝手にシャワー使わせてもらったね」

「お昼ご飯、どうしよっか?」

その子はテンポ良く話しかけてくる。


「おーい、どうしたの?」


ん?っといった表情で幸太の頬を軽くぺしぺしと叩く

「やっぱし飲みすぎー。忘れてるんでしょ、ボクのこと」


『ボク?ボクっ子か?』


肝心なところの思考を飛ばして、

それでもやっと色々動き出した幸太の、

「あ、ああ・・・。ええっと・・・」

なんとか何か話そうとしだした声をさえぎって、

元気のいい、高らかな。誇らしげな。


そしてまた幸太が固まる自己紹介が始まった


「ボクは明子。今は明子!女装好きなんだ。

だから、女装してる今は明子なの。女装してない時の名前はアキだよ」


「むー。また、ぽかーんとしちゃって。

やっぱり忘れてるね。昨日ちゃんと自己紹介したのになあ。

ま、いいや。女装好きな男の子だよ!

昨日は泊めてくれてありがとう。改めてよろしくねっ」


これが幸太と明子の出会い。アキは、そのうち。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ