エルハンドラ騎士団
エルハンドラ皇帝陛下が即位して以来、国難を幾度と迎えていながらも、その全てをはねのけてきた騎士団がいる。
エルハンドラ皇帝陛下の名を特別に名乗ることが許された、唯一無二の騎士団。
それが、エルハンドラ騎士団である。
皇帝陛下が、国王陛下と名乗っていたときに創設されたため、すでに1000年近くの歴史がある。
皇帝陛下の身辺を警護するのが、この騎士団の最大の目的であるが、それと同時に、最強の軍人部隊でもあった。
これまでの騎士団の歴史を紐解くと、出征すること1万回、死者10万人超、負傷者はさらに5倍に登るとされる。
それでもなお、3つの大陸を統治する皇帝陛下は、暗殺の危機を幾度と乗り越えてきた。
それも全て、エルハンドラ騎士団がいたからである。
エルハンドラ騎士団の紋章は、スペイン型の盾状をしており、オーア。また、オーディナリーとしてギュールズをベンド状に設定されている。
盾の上辺中央に、アージェントでデキスター方向を向いたオープン・バイザー・ヘルメットが描かれている。さらに、マントがあり、先が割れていないものであり、表がギュールズ、裏がオーアとなっている。
ヘルメットと同じ高さには、クラウンがある。これは、3つの先端をもち、デキスターより、真珠、トパーズ、ダイヤモンドが付けられている。また、本体はオーアである。真珠は円形でアージェントを、ルビーは円形でギュールズを、ダイヤモンドは円形でセーブルである。
ヘルメットの上には、リースが描かれている。リースはマントと同じ色であるギュールズとオーアで、ねじられたリボンのように描かれている。
クレストとして、リースの中から飛び出しているのは、赤いバラと白いユリだ。それぞれ1本ずつがバラはシニスター方向に伸び、ユリはデキスター方向に伸びている。
また、盾のサポーターとしては、デキスター側に3つの輪を縦に並べたものを半分に切ったマークが、シニスター側にはフール・ド・リスの右半分を用いている。
盾のベース部分にはコンパートメントがあり、デキスター側から山、川、木を象徴しているアージェント、アジュール、ヴァードと言う配色となっている。それぞれが3分割をされている。
最下層には、モットーがあり、ラテン語で忠実であれと書かれている。
なお、女性で騎士団員になる場合は、スペイン型の盾状ではなく、ロズンジを用いることになるが、それ以外は特に変わらない。
主に男性団員が多いが、女性の団員の割合も最近は増えている。
どちらにせよ、この騎士団に入ることは、きわめて名誉なことであり、また、爵位がない者に対しては、自動的に男爵位が与えられる。
さらには、騎士団長は、皇統とつながりがある者であり、副騎士団長ともなれば、公爵は当たり前であり、議会にも籍を置く事ができるほどの職である。
このように選挙を経ずに議員になれるのは、名誉なことである。
名誉職とはよく言ったものではあるが、名誉よりも実務的なものの観点が強い意味合いで、使われることが多い。
このような騎士団に入るためには、複数の試験に合格しなければならない。
毎年1回、6月から翌年の2月までの長期間に渡る試験である。
資格や家柄は一切考慮に入れられる事はない。
騎士団員としてふさわしいのかを確認するための試験である。
その試験内容は多岐に渡っており、文書作成や語学、伝令から馬上槍試合、遠泳、徒手拳法と言ったものまである。
なお、受験者数は、例年であれば、1万人ほどであるが、合格するのは10人から、多くても30人程度である。
騎士団は、帝国領土の各地に存在をしているが、それぞれに特色がある。
例えば、エルード騎士団は、サルード大陸中西部に位置しており、帝国一歴史がある騎士団である。
この騎士団は、帝国に編入する前は、騎士団領をもち、騎士団長は領地の王として君臨をしていた。
そのため、今でも、エルード騎士団長は王として待遇されている。
だが、そのような騎士団も、終わりを迎えることとなる。
きっかけは、エルハンドラ帝国の崩壊だった。
崩壊することとなったのは、皇帝の乱心だった。
騎士団が守っている者が狂者であるということが明らかになると、求心力は低下し、新たな皇帝になろうとするものが現れた。
そのうちの一人が、騎士団長である。
王待遇を受けているため、その権利が当然にあると主張し、騎士団長は反旗を翻した。
それが第2の引き金となり、エルハンドラ帝国は事実上崩壊した。
これをもって騎士団の歴史は幕を閉じることになるが、それは、エルハンドラ騎士団としての歴史であり、実際の組織はしばらく続く事になる。
そして、名前を変えて、エルハンドラ帝国と言われる時代が終わりを告げてから、400年後に、最後の騎士団員が死に、エルハンドラ帝国は終焉を迎えた。
今では、その騎士団を復活しようとする動きもあるが、消滅してから数百年を経て復活することは、おそらくできないだろう。