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使役を捨てた召喚師の成り上がり ~最弱のミニドラゴンと、虐げられた仲間たちと歩む世界改革~  作者: チョコ大福


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15/53

第15話:特命クエストの波紋、動き出す悪意

登場人物

レイン・アークライト

主人公。アークライト家を出奔し、ミニドラゴンのファル、ウルフのフェリル、小型ゴーストのポルカ、そして召喚師の少女シルビアと共に新しい旅を続ける心優しき召喚師。知性的で柔らかな物腰と「僕」という一人称を好む。

ファル

レインの相棒である手のひらサイズのミニドラゴン。前回の戦いで『フレア・スパーク』を覚えてから自信をつけ、お兄ちゃん的存在としてさらに張り切っている。

フェリル

レインの相棒である小さなウルフ。優れた嗅覚と警戒心で、街に漂う不穏な気配や悪意をいち早く察知する。

ポルカ

小型ゴーストのマスコット。ファルに続いて自分も何か新しい技を覚えたいと、日々ファルたちの真似をしてトレーニングに励んでいる。

シルビア

名門の家出中で、レインのパーティに正式加入したエリート召喚師の少女。メルトーナのギルド制度や特命クエストに関する深い知識を持ち、パーティの参謀役として活躍する。

ガレルト

名門出身の高慢な召喚師。レインたちの活躍に激しい嫉妬と怒りを燃やし、彼らを蹴落とすために危険な計画を巡らせる。

前書き

『使役を捨てた召喚師の成り上がり ~最弱のミニドラゴンと、虐げられた仲間たちと歩む世界改革~』第15話をお届けします!

前回、ファルの成長とシルビアの心温まる和解を経て、絆をさらに深めたレインたち。第15話では、商業都市メルトーナのギルドに貼り出された「大規模な特命クエスト」を巡る騒動と、水面下で牙を研ぐガレルトの不穏な陰謀が本格的に動き出す、緊張感とワクワクが詰まったエピソードを描きます。ぜひじっくりとお楽しみください!

商業都市メルトーナの朝は、いつものように活気のある喧騒とともに始まっていた。

だが、その日の冒険者ギルドの本部ホールだけは、朝からどこかピリピリと張り詰めた異様な空気に包まれていた。

中央の巨大な掲示板の周囲には、朝一番から多くのベテラン冒険者や名のあるパーティが集まり、一枚の真新しい羊皮紙を囲んでざわめいていたのだ。その羊皮紙の縁には、特別警戒を示す赤い紋章がしっかりと刻まれていた。

「おい、見たか……これ……!」

「ああ、メルトーナの北部に広がる『霧幻の谷』で、大規模な魔力の暴走スタンピードの予兆が観測されたらしいぞ」

「しかも、ギルドからの『特命クエスト』として、指定された精鋭パーティしか受注できない超高難度の討伐・調査任務だ……! 報酬の桁が普段とは全く違うぜ……!」

あちこちから、驚愕と興奮が入り交じったざわめきが漏れ聞こえてくる。

宿を出てギルドにやってきたレインの一行は、その人混みの様子を少し離れた場所から眺めていた。

「『霧幻の谷』の魔力暴走予兆……か。以前から少し不穏な魔力の淀みがあるって噂されていたけれど、ついにギルドが本格的に動いたのね」

シルビアは腕を組み、エメラルドグリーンの瞳を細めながら掲示板のほうをじっと分析するように見つめた。エリート召喚師としての知識を持つ彼女には、その特命クエストがどれほど危険で、同時にどれほど重大な意味を持つのかがすぐに理解できたのだ。

「なるほどね。メルトーナ全体を守るための大規模な任務ってわけか。僕たちにとっても、見過ごせない依頼だね」

レインが穏やかな笑みを浮かべながらそう呟くと、肩の上のファルが『きゅっ! なんかすごく大掛かりなお仕事みたいだね! 僕たちもお手伝いできるかな?』と、小さな翼をパタパタさせながら興味津々に覗き込んだ。

ポルカもフワフワと空中で飛び回りながら、『おっきな魔獣が出てくるなら、僕もびっくりさせちゃうぞー!』と意気込んでいる。

フェリルは低い位置で鼻を鳴らし、谷の方向から漂ってくるわずかな異変の匂いを敏感に察知しているかのように、耳をピクッと動かしていた。

その時だった。

ホールの入口付近から、周囲を威圧するような重い足音と、傲慢な笑い声が響き渡った。

「道をあけろ、雑魚ども! その特命クエスト、このガレルト様が真っ先に引き受けてやるわ!」

その声の主はもちろん、豪華な装飾を纏った若い召喚師――ガレルトだった。彼は相変わらず巨大なオークや屈強な魔獣を引き連れ、周囲の冒険者たちを我が物顔で押し退けながら、ギルドのカウンターへとまっすぐ歩み寄っていいた。

ガレルトの顔には、これまでの苛立ちを晴らすかのような、歪んだ自信と優越感の色が浮かんでいた。前回のギルドでの一件以来、周囲の冒険者たちから向けられていた「レインたちを見る好奇の目」を、この特命クエストを圧倒的な成果でクリアすることで全て自分に引き戻し、一気に叩き潰してやろうという算段なのだ。

ガレルトは受付の窓口にドンと手を突き出すと、冷徹な目で職員に言い放った。

「おい、そこに貼ってある『霧幻の谷の特命クエスト』の権利、俺たちエリートパーティが買い占める。ほかの連中には到底無理な代物だ、さっさと俺たちの名前で登録しろ」

受付の女性職員は、ガレルトの高圧的な態度に少し眉をひそめながらも、冷静に答えた。

「ガレルト様、特命クエストはギルドの厳格な審査と、一定以上の実績をクリアしたパーティしか受注できません。それに、今回の任務は単なる討伐ではなく、谷全体の魔力暴走を抑えるための高度な連携が必要です。ご自身のパーティだけで抱え込むのは――」

「ふざけるな! 俺が誰だと思っている! エリートと名高い名門の血を引くこの俺が、あんな低俗な雑魚どもと同じ扱いのわけがないだろう!」

ガレルトが声を荒らげ、従えているオークに威圧的な唸り声をあげさせると、周囲の一般の冒険者たちはトラブルを避けるようにサッと道をあけた。

その騒ぎの一部始終を、少し離れた場所からレインたちは静かに見守っていた。

「相変わらず、力と名門の看板だけで物を言う人だね……。あんなやり方では、連れている魔獣たちも心の底からは信頼していないはずなのに」

レインが静かにそう呟くと、シルビアは冷ややかな溜息をついた。

「まったくね。あんな状態で『霧幻の谷』の魔力暴走になんて突っ込んだら、自分の魔獣に裏切られるか、罠に足を取られて全滅するのがオチよ。……でも、レイン。あの特命クエスト、私たちも無視するわけにはいかないわ。もしあいつが暴走を悪化させたりしたら、メルトーナの街全体に被害が及ぶもの」

シルビアのその言葉に、レインは深くうなずいた。

「そうだね。街の人たちや、僕たちの仲間を守るためにも、あのクエストは僕たちがきちんと引き受けて、正しく解決しなきゃいけない」

レインがそう決意を固めたその時、ガレルトはふと視線を横に向け、そこにレインたちの姿があることに気づいた。

ガレルトの顔に、憎悪と嘲笑が入り交じった嫌な笑みが浮かんだ。彼はわざわざ大きな足音を立てながら、レインたちのほうへと歩み寄ってきたのだ。

「……おや、もしやと思えば、あの時の落ちこぼれのガキ共じゃないか。まさか、お前たちもあの『特命クエスト』の掲示板を指を咥えながら見ていたのか?」

ガレルトは鼻で笑うと、見下すような目でレインの足元から肩の上のファルへと視線を走らせた。

「笑わせるなよ。あんなトカゲや野犬、役立たずの幽霊を連れた遊び半分のパーティが、霧幻の谷の魔力暴走なんていう大層な任務に手を出せるわけがないだろう。命がいくつあっても足りないぞ」

ガレルトのその侮蔑的な言葉に、ファルは『きゅっ……! なんだあいつ、失礼な奴だな!』と小さな翼を逆立てて怒りの声をあげ、ポルカも『お化けだぞって驚かしてやろうか!』と頬を膨らませた。

フェリルも低く鋭い唸り声を喉の奥から漏らし、いつでも飛びかかれるような緊張感を漂わせた。

しかし、レインは微動だにせず、穏やかで落ち着いた瞳のままガレルトをまっすぐに見据えた。

「僕たちのやり方がどうこう言う前に、ガレルト、君こそ自分の足元が見えているかい? 力だけで縛り付けられた魔獣たちは、ピンチの時に本当に君を助けてくれるかな?」

「なっ……! 雑魚が生意気な口を……!」

ガレルトの顔に激しい怒りの色が走り、彼は手元の魔導具を荒々しく握りしめた。

しかし、その場に居合わせた他の冒険者たちの視線が、かつてとは明らかに違う「レインたちの実力を認めるような空気」を含んでいることに気づき、ガレルトはこれ以上公の場で暴れるわけにいかないと悟ったのか、歯噛みしながら怒りを押し殺した。

「……いいだろう。そんなに大きな口を叩くなら、次の『霧幻の谷』での特命クエストの現場で、どちらが真の成果を上げるか競争してやろうじゃないか! もし途中で怖気づいて逃げ出したりしたら、二度とメルトーナの街を歩けないようにしてやるからな!」

ガレルトはそれだけ言い捨てると、従えていたオークを乱暴に引っ張り、荒々しくギルドの出口へと去っていった。

騒ぎが去ったあと、ギルド内には再びざわめきが戻ったが、先ほどのやり取りを見ていた受付の職員や周囲の冒険者たちは、レインたちのほうにそっと歩み寄ってきた。

「レイン様、今のガレルト様の言葉ですが……本当にあの『霧幻の谷』の特命クエストに挑戦されるおつもりですか? あそこは現在、非常に危険な魔力の淀みが発生しており、ベテランのパーティでも慎重にならざるを得ない場所なのです」

職員の女性は、心配そうな顔でレインにそう尋ねた。

レインは優しく微笑み、力強くうなずいた。

「はい。僕たちにできるやり方で、あの谷の異変を必ず解決してみせます。正式に、あの特命クエストを受理させてください」

その誠実で揺るぎない眼差しを見た職員は、深く息をつくと、震える手で申請書に判を押した。

「……かしこまりました。レイン様のパーティによる『霧幻の谷の特命クエスト』、正式に受理いたします。どうか、ご無事で……!」

こうして、商業都市メルトーナを巻き込む最大の試練――「霧幻の谷」での大規模任務への挑戦が、正式に決定したのだった。

ガレルトの悪意と焦りが渦巻く中、レイン、ファル、フェリル、ポルカ、そしてシルビアの5人(匹)は、それぞれの絆を胸に、さらなる高みへと歩みを進めていく。

後書き

第15話「特命クエストの波紋、動き出す悪意」を最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!

商業都市メルトーナのギルドに貼り出された大規模な特命クエスト「霧幻の谷の異変」と、それに猛反発して対抗心を燃やすガレルトの不穏な動きを描かせていただきました。ガレルトの焦りと悪意が交錯する中、レインたちが仲間たちと共に新たな試練へ立ち向かう緊迫感がしっかりと伝わっていれば幸いです!

次回の第16話では、いよいよ「霧幻の谷」へ向けて出発したレイン一行の道中や、谷で待ち受ける新たな魔獣や試練、そしてガレルトとの現地での直接対決(あるいは波乱)に繋がっていきます……!

ブックマークや評価、いいねなどをポチッと押していただけると、執筆のモチベーションがものすごく跳ね上がります!

それでは、第16話でお会いしましょう!

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