60 邪神到着
「申し訳ありません……国王陛下……ぐぅ……」
ファルデア王国筆頭軍10番隊隊長タッラゴは苦悶の声と共に崩れ落ちた。
国王をお守りせんと最後まで戦っていた筆頭軍の隊長が今、革命軍に打ち倒されたのだ。
「タッラゴ……!」
ファルデア王国国王、レオパルド五世は苦渋の声を上げる。
自分を守っていた筆頭軍の隊長は彼が最後であった。
他の筆頭軍の隊長たちは全て革命軍に組している。
───もはやこれまでか……
「国王陛下。お覚悟を……!」
タッラゴの死体を踏みしめ玉座に押し入っている革命軍達。
その先頭にはファルデア王国筆頭軍3番隊副隊長のアナシスが立っていた。
利き腕を無くしたアナシスであるが、早急に義手を用意させ装着している。
「ち……父上……」
「情けない声を上げるなボナパルト。最後の瞬間まで堂々としていろ」
息子である第一王子のボナパルトに声を掛けレオパルド五世は反乱軍達に言った。
「逝かれた聖女に唆された阿呆共が。精々聖女の手駒として踊るがいい。俺達は先に地獄で貴様らの破滅を楽しみに待っているとしよう!!」
「最後まで口の減らな方ですわね。ご安心を。貴方様の死でこの国はまた寄り良い世界に進みますわ!!」
言葉と共にアナシスは細剣を振り上げる。
「父上!!!」
ボナパルトの叫び声が玉座にこだまする。
レオパルド五世はゆっくりと瞳を閉じで最後の瞬間を待った。
だがアナシスが細剣を振り下ろそうとした次の瞬間、玉座の窓ガラスを破って漆黒の鎧を身に纏った存在が侵入してくる。
漆黒の鎧は玉座に着地すると、迷うことなくアナシスに向かってショットガンを撃ち放った。
「!!!」
突然の乱入者に呆然となっていたアナシスは、防御する事も儘ならず弾丸の餌食となる。
「ああああああ!?」
次の瞬間アナシスは、今まで感じた事のない激痛に苛まされる。
堪らず床に転がる様にのたうち回り始めるアナシスに、革命軍達がたじろぐ。
「……貴様……何者だ……?」
「アルデンさんの仲間です。貴方を守るために此処にきました」
そう言って漆黒の鎧は十字架のペンダントをレオパルド五世に渡した。
「……!!……なるほどな。貴様がこれを持っているということは殺して奪ったか預かったかだろうが、この状況で俺をたばかった所で何の意味もなかろう」
「それはどうでしょか?」
レオパルド五世が納得しかけた時、漆黒の鎧が破った窓から聖女クラシーが天使に連れられて舞い降りた。
神々しさすら感じる登場に、レオパルド五世は顔を顰める。
「女狐め!現れおったな!」
「国王陛下、ご無事なようでなによりですわ?……それよりもその御方。彼こそ先ほどこの現世に復活された邪神・ボムバ・ヌクリアその人ですわ」
「邪神だと!!?」
予想だにしていなかった聖女の言葉にレオパルド五世は驚く。
この漆黒の鎧の男が邪神だったとすると、それこそ革命軍との小競り合い所では無い。
この世界そのものの危機となってしまう。
「間違えありませんわ。ですわよね?邪神様」
「……俺は確かに邪神の力を使ってますけど、国王様に敵対する気はありません」
「うふふ。どうでしょうか?貴方の力があればこの国を掌握するなど容易いでしょう?国王様を……「よし信じた!!」……は?」
邪神と聖女の問答に口を挟むようにレオパルド五世は言った。
「こいつが邪神なのも信じたし、貴様と敵対しているのも分かった。ならばこいつは今現在、俺の味方だと言う事だ!!」
「……彼は邪神様ですのよ?」
「邪神だろうがなんだろうが、貴様よりはましだ女狐!!貴様の敵ならば今は味方!!こいつが本当に邪悪な存在かどうかは、貴様らを始末した後に考えればよかろう!!」
そう言うとレオパルド五世は邪神に言った。
「さあ邪神よ!!この国を破滅に導こうとしている愚か者どもを一人残らず始末するのだ!!」
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「さあ邪神よ!!この国を破滅に導こうとしている愚か者どもを一人残らず始末するのだ!!」
とびっきりの笑顔で俺にそう言う国王様に面食らいながらも、俺は聖女に向かって銃を向ける。
「……貴方と言う人は……本当にどこまでいっても救えない人ですわね?」
「ははははっはは!!どうした聖女!!いつもの気色悪い笑顔が剥がれてるぞ!?」
楽しそうに笑う王様。
聖女はさっきまでの余裕そうな表情を少し歪めている。
この二人多分相当中悪いんだな……。
───まぁ考えたったしゃあないし、相棒!!いっちょかましてやろうぜ!!───
そうだ。
取り合えず此処にいる人たちを戦闘不能にしなければ、王様達は殺されてしまうだろう。
俺は気合を入れなおし、ショットガンの引き金を引く。
エネルギー弾が聖女に向かって発射されると、聖女を守る様に天使たちが盾になる。
「ああああああ!!」
俺のエネルギー弾が着弾すると、予想通り天使たちは苦しみながら悶え倒れた。
「おお!!なんという威力!!天使どもが一撃とはな!!」
王様が嬉しそうに声を上げるが、俺はそれ所では無い。
この銃弾で人は死ななと邪神は言っているが、人に向かって銃を何発も撃つのは気分的にあまり宜しくは無い。
そんなことを言ってる場合でないのは分かってはいるが、撃つたびに精神的に疲労するのだ。
───相棒!!とにかく今は戦う事を考えろ!!じゃなきゃ王も周りの人たちも死ぬぞ!!───
邪神が俺を奮い立たせる言葉を発する。
そうだ、俺の心労など後でどうとでもなる。
今はとにかく王様達を救う事を考えよう。
「奴の銃は危険だ!!皆盾を構えろ!!」
俺を警戒して革命軍側の兵士の人達が盾を構える。
───ギギギギギ!!盾構えたって無駄だぜ!!あいつら自然と魔力を纏う癖がついてる!!盾に魔力纏わなきゃ俺達の攻撃はガードできるが、この状況でその判断は出来ねぇだろ!!───
その言葉を信じて俺は今度は革命軍に向かって銃を連射する。
大分エネルギー弾を撃つのに慣れてきた俺は、エネルギーをチャージするコツを掴んできた。
どんどん早くなっていく俺の連射に革命軍の人達はなすすべなく倒れていく。
合間に此方に飛び掛かろうとしている天使達に銃を撃ちつつ、俺は無心で引き金を引き続ける。
盾で守ろうが、剣で弾こうが、魔力や神力を纏っている限り俺達の弾丸から逃れる事は出来ない。
こうして俺は、ものの数分で王様を取り囲んでいた兵士や天使達を無力化するのであった。




