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59 座天使に一撃

「こりゃあひでぇな……!!」


デポカの城壁に辿り着いた開口一番の言葉がジークから漏れた。


ジーク達は昨日アルデンからの連絡で、急遽ブルリカの復旧作業を中断しデポカへ急いだ。

取り急ぎ戦えそうなメンバーを揃え車に乗り込み急いでデポカへ辿り着いたジーク達だったが、デポカの現状に目をひそめた。


城壁は街から逃げ出そうとする市民でごった返しており、城門の外からもわかるほど街からは煙が上がっていた。


空中を見れば目を見張る目玉の化け物が、街に向けて光線を放っている。

あの怪物も革命軍のものなのだろうか?


アルデンからの連絡では、革命軍が動き出すかもしれない為急いで向かってくれとのことだったが、ジーク達の創造以上に酷い現状に皆言葉を失っていた。


「……よし!!今城門は人だかりでまともに機能してないだろうから、車から降りて徒歩で渡れば今なら普通に素通りできそうだな!!」


ジークの言葉に皆が頷いたとき、突如スレッタが上げた。


「ふおおおおおおお!!あれは間違えなくあの時の魔族の少女!!ようやく出会えましたねぇええええ!!!」


そしてスレッタは奇声を上げながら車を降り、ジーク達の制止を振り切り目にもとらぬ速さで街へ入っていったのだ。


「……あいついきなりどうしたんだ?!」


残されたジーク達は、スレッタの奇行に唖然とするのであった。



座天使(ソロネ)に数々の魔術攻撃で牽制を行いつつスレッタはクリムに向かって叫んだ。


「私の名前はスレッタ!!天才魔術師にして冒険者です!!貴女にお会いしたかった!!前のスライムの騒動の時に貴方が放った禁術!!ビオラデ・グランデカ・ジグラデオメガについてどうしてもお話がしたくこうやって馳せ参じたわけなのですが!!」


突然現れて遥か上空にいるクリムにも分かる様に捲し立てるスレッタにクリムは面食らう。

そもそもスライムの時に禁術など放っていないクリムとしてはスレッタが何を言ってるのか分からないのだが、今この場でそれを説明するのも躊躇われた。


しかし一応スレッタは味方の様なので、これで光明が見えた気がする。


「グラデータ」


クリムはスレッタに向けて魔術を放つ。

引力系の魔術を使いスレッタを一気に自分の元まで引き寄せる。


「ふおおおお!?」

「ねぇお兄さん。君、空中浮遊は出来る?」

「お……おお…。一応は出来ますが……」

「じゃあお願いがあるんだけど、ちょっとだけあの天使の目を引いてくれる?なんか大掛かりな魔術でさ!」


お願い!と手を合わせるクリムにスレッタは一瞬驚いた後、ニヤリと笑い答えた。


「お任せあれ!!見事奴の気を引いてくれましょうぞ!!」

「ありがと!じゃあ、君が魔術使うまではぼくが奴の目を引くから宜しくね!」


そう言うが否やクリムは大きな朱い大鎌を召喚して座天使(ソロネ)に向かって飛んで行った。


クリムは大鎌を大きく振りかぶり座天使(ソロネ)の車輪を切り裂く。

クリムの読み通り座天使(ソロネ)の車輪は大鎌により切断されたが、数秒後には修復される。


だが今はこれでいい。

スレッタが魔術を発動するまでの間、こうやって時間を稼げば座天使(ソロネ)は地上への攻撃を中断してクリムへ標的を絞るだろう。


縦横無尽に座天使(ソロネ)の周りを飛び回りながら、クリムは大鎌と至近距離での魔術で座天使(ソロネ)にダメージを与えていく。


「よおおし!!!魔族の少女!!少し離れていて下さい!!!」


そうして時間を稼ぐと上空からスレッタの声が届いた。


「ぼくの事はいいから撃って!!」

「!!!」


クリムの言葉にスレッタは一瞬の躊躇するも、クリムを信じて魔術を解き放つ。


「ライデア・イルス・グラデリア!!!」


激しい雷が座天使(ソロネ)を襲う。

しかし雷が座天使(ソロネ)に直撃しても座天使(ソロネ)の車輪を少し焦がすだけで明確なダメージを与える事は出来なかった。


しかし今の一撃で座天使(ソロネ)の意識が上空のスレッタへと向けられる。


それだけで十分だった。


「あは!やっぱり!」

「!!!」


その声は座天使(ソロネ)の至近距離から届いた。


「君の周り回っている車輪は沢山目がついてるけど、あれはあくまで攻撃と防御用の砲台であって敵を見つける事は出来ないんだね」


じゃなきゃさっきの不意打ちに気付くもんね?とクリムは話す。

クリムは座天使(ソロネ)の車輪を掻い潜り、中心の目に到達していたのだ。


「さすがに監視されたまま車輪を掻い潜ってこの中に来るのは難しかったけど、君の視線を少しでもそらすことが出来たら良かったんだ」

「!!……!!!」


クリムの言葉をかき消す様に、座天使(ソロネ)は本体である中心の目に神力を溜める。

確かに車輪がメインの砲台であるが、決して本体も攻撃が出来ないわけではないのだ。

しかし───


「周りの車輪は頑丈だけど、こっちはどうなのかなぁ?───ビオラ……」


その言葉と共に至近距離から灼熱の熱線が放たれる。

それも連続で、だ。


「!!!!」


車輪ならば耐えることのできたクリムの魔術攻撃だが、本体の目ではそうはいかなかった。

クリムの強大な魔術の連打に、座天使(ソロネ)は確実にダメージを受けていく。


そして座天使(ソロネ)はダメージに耐え切れず大爆発を起こすのであった。


消えゆく意識の中でイリシエは最後の力を振り絞り、バラバに願い(呪い)を送る。


───バラバ……バラバ……私は此処までのようです。後は貴方に託します。……どうか聖女様の願いを叶えて上げて下さい……それが私の最後の願いです……



「う……うぉおおおお!!!」


倒れ伏していたバラバが突然叫び声を上げた事にスワンナ達は驚く。


「バラバ!!目が覚めたのね!?」

「ちょっとバラバ!大丈夫!?」


慌ててバラバに呼び掛けるスワンナ達。

バラバは神力病で痛む体に鞭を打ってスワンナ達に懇願した。


「勝利殿が……邪神に殺された」

「!!?」

「なんですって!!?」


バラバは一度目を伏せると言葉を続ける。


「邪神は殺害した勝利殿の体を操り私を攻撃した。スワンナ、アーシュリ奴の言葉に惑わされるな」

「何てことなの……」


バラバは思う。

恐らく今の佐藤勝利は邪神の力を操ることが出来る。

だが佐藤勝利の性格上、聖女に与する事は無いだろう。


ならば奴は危険だ。

イリシエの願いの為にも、あの男は削除しなければならない。


───すまない勝利殿。しかしこれも愛ゆえだ


そんなバラバの思惑も知らずにスワンナは固く決心する。


「アーシュリ、バラバをお願い」

「スワンナ?」

「私は邪神を追うわ。そして勝利様を取り戻す。……このまま邪神の思い通りにすれば勝利様が可哀そうだわ……」

「邪神は王城に向かった。急げスワンナ!手遅れになる前に!」

「ええ!!」


その言葉と共にスワンナは飛び立つ。

閃光の異名を持つスワンナは一瞬にしてアーシュリ達の前から姿を消すのである。


バラバが暗い微笑みを浮かべているとも知らずに……。

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