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54 望み

王国筆頭軍5番隊隊長ジャランカと王国筆頭軍2番隊隊長パルアキの戦闘は、魔王たちの戦いの余波を避けるため市街地戦へともつれ込んでいた。


先程のホテルの崩壊、そして突如上空へ現れた目玉の怪物の登場で街は大混乱になっていた。

目玉の怪物からの熱線により、街にも甚大な被害が出ていた。


目玉の怪物と先程まで戦っていた魔族の少女もどうやら墜とされてしまったようだ。


───くそったれぇ!!このままじゃ街がやべぇ!!


奇しくも革命軍の思い道理にこのデポカが破壊されている現状に、ジャランカは歯噛みする。


部下たちに住民たちの避難を支持し、ジャランカはパルアキの凶刃に耐えつつ叫んだ。


「これがお前の望みかよ!!?今の世界に不満があるからって、街にいる奴らまで殺しまくってそれで革命だあ?!!やってることが只のテロリストなんだよ!!」


ジャランカの怒号にパルアキは静かに返した。


「真の世界を作るためには犠牲は付き物だ……。私たちはこの犠牲を乗り越え次に進む」

「ざっけんな!!犠牲の先にある世界なんざなんの意味もねぇだろ!!!」

「その通りだ。だからこそ今の世界になんの意味もない」


その言葉と共にパルアキはジャランガを弾き飛ばし、刀に魔力を溜める。


「貴様もそうだろう?先の大戦で両親を家族を失ったのだろう?そしてそれをしたのは神人と魔族達だ」

「てめぇ……」

「三界大戦と言えば聞こえはいいが、結局戦場となったのは主に地上界だ。魔族は地上界へ攻めてきて、天界の連中は天使たちを派遣はしたが、結局俺達地上に住む者たちを自身の兵士として戦わせた」

「……」

「そもそも貴様はなぜ三界大戦が始まったのか知っているか?」

「……」


そこでいったん言葉を切り、パルアキは静かに構える。

そして目を見開くと爆発的な魔力を放出して言った。


「神人と魔王の小競り合いが大きくなり、地上をも巻き込んだんだ!!!私達地上に住む人々は奴らのくだらない争いに巻き込まれたんだ!!!そして多くの犠牲者が出た!!!だが一番犠牲者が出たのは巻き込まれた私達地上人だ!!!」


パルアキは魔力を溜めた刀を上段に振り上げると更に叫んだ。


「なにが平等だ!!!何が平和だ!!!勝手に私達を巻き込んでおきながら、未だに大きな顔をしている神人も!!薄汚い存在のくせにのうのうと地上へ現れる魔族も!!!そして!!!そんな天界の連中に未だに媚びを売る国連加盟国全てが!!!全てが憎い!!!!」


だからこそ!!っと叫びパルアキは言葉を続ける。


「だからこそ私やアナシスの様な人間が現れない為にも!!!今ここで多大な犠牲を払ってでもこの国を終わらせ、国連加盟国に恐怖を与える必要がある!!!そして二度と天界や魔界の連中達に屈しない新しい世界の在り方を作る必要があるのだ!!!それを行うのが我々革命軍『ル・ルシエ』なんだ!!!!」


言葉と共に全力の魔力を籠めてパルアキは刀を振り下ろした。


必殺の一撃。

例え槍で防いだとしてもこの斬撃は槍をも打ち砕き、ジャランカを確実に亡き者にするだろう。


勝利を確信するパルアキだが次の瞬間、パルアキの斬撃はジャランカの片腕で止められていた。

左腕の骨の部分で止まってしまった斬撃にパルアキは目を見張る。


「てめぇの言いたいことはわかった……」


驚愕に固まるパルアキにジャランカは静かに言った。


「確かに俺の家族は戦争に奪われた。……だからてめぇの気持ちも少しは分かる」


ジャランカは右手から槍を落し、手を強く握りしめる。


「だが俺達は王国筆頭軍。その目的はこの国の守護だ」

「き……貴様……!!」


ジャランカの腕に食い込んだ刀が抜けない。

焦るパルアキにジャランカは言葉を続ける。


「俺達がやらなきゃいけないことは、もう二度と俺達みたいな餓鬼を増やさねぇことだ。……そしてそれはぁ!!!」

「!!!」


ジャランカは右腕に魔力を籠めて構える。


「二度とあんな戦争を起こさせねぇ事だ!!!」


言葉と共に万感の思いを込めて、拳を振りぬく。

ジャランカの拳はパルアキに鳩尾に深く食い込み、パルアキは苦悶の声と共に吹き飛んだ。


「ぐっはぁ!!!」

「てめぇらの革命が上手くいきゃあ必ずまた戦争が起きる!!!そしたらまた悲劇は繰り替えされる!!!そんなことはさせねぇ!!」

「ぐぅ……貴様……」

「俺達は味わってきた恨みも憎しみも飲み込んで耐えていかなきゃいけねぇ!!今、平和な時代に生まれてきた餓鬼どもに、この憎しみのバトンを渡しちゃいけねぇんだよ!!!」


迷いのない眼差しで毅然と言い放つジャランカを見てパルアキは己の敗北を悟る。


───綺麗事を……だからこいつは気に入らないんだ……


薄れゆく意識の中で、パルアキは心の中で愚痴る。


そうして意識を失ったパルアキを見て、ジャランカはため息をつくのであった。


パルアキは真面目な男だ。

自分の中の正義感と憎しみの折り合いが上手くついていなかったのだろう。

そんな心の隙間に聖女は付け込んできたのだ。


───馬鹿野郎が……


ジャランカは少しだけ目を閉じる。

そして目を開き、倒れたパルアキを連れて部下たちと合流するため足を進め始めた。


パルアキとの戦闘で随分と部下たちと離れてしまった。

パルアキが倒れたのを確認すれば、王国筆頭軍2番隊隊は少しは剣を収めるかもしれない。


そんな事を考えていた刹那、ジャランカは吹き飛ぶように仰向けに倒れた。

ジャランカの額からは血が流れ、首は力なく落ちるのであった。



「ふう……」


ジャランカ達から数百メートル離れた建物の屋上で、狙撃を成功させた王国筆頭軍9番隊隊長ヴァージルはため息をついた。


ジャランカとパルアキの激しい戦闘をじっと見守り狙撃のチャンスを待っていた。

獲物が最も油断する瞬間は、狩りを成功させた直後だ。


パルアキが戦闘でそのまま勝利するなら良し、もしパルアキが敗北したとしてもその後自分が狩れば良し。


そして想像通りに事が運んだこと、にヴァージルはほくそ笑む。


───パルアキもジャランカも何をあんなに熱くなってんだが……


ヴァージルに二人のような立派な志などない。

唯々狩りを楽しめればいいのだ。


革命軍に与してるのも、革命軍の方が狩りを楽しめる。

そう思ったから革命軍にいるだけだ。


───さぁて、次の得物を探しますかね


消音性の高いスナイパーライフルに、更に自身の固有魔術である防音効果の魔術を掛けることによる超消音の弾丸。


静かなる襲撃者(サイレントスナイパー)の異名を持つ狩人は、次なる獲物を探して戦場を翔るのであった。

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