52 邪神の目的
邪神・ボムバ・ヌクリアが、とある魔術師によって製作されたのは今から数千年も前の話だ。
その魔術師がなぜ邪神を作ったのかは定かではないが、当時の神々は邪神を打ち倒さんと魔術師と邪神を打倒する為、魔術師達を襲撃した。
その結果魔術師を打破する事は出来たが肝心の邪神は、魔術師により神力や魔力を察知する祠に封印され行方を眩ませた。
しかし魔術師と戦った神々や天使達は、例外なく神力病に侵され命を失った。
その後、邪神を作り出した魔術師の研究所に残された研究データを発見し、神人達は邪神の詳細を知る。
そこに記されていたデータでは、邪神は魔力や神力を一切持たず、稼働には別次元のエネルギーを使っている。
別次元のエネルギーの詳細までは分からなかったが、そのエネルギーに触れると例外なく魔力病及び神力病に侵されるというのだ。
更に邪神は復活と同時に爆発するようにプログラムされており、魔術師はその大爆発によって世界を一度リセットする計画を立てていたのだ。
どちらにせよ邪神は触れれば世界が滅ぶパンドラの箱だったのだ。
しかも魔術師の残した日記には、邪神は定期的に別次元エネルギーを蓄え、爆発できるようにインプットされているということが記されていた。
自分達では祠を見つけることが出来ても近づくことさえ出来ない神々は、邪神により初めて知った別次元の存在に賭けることにした。
下手に刺激を与えては爆発しかねないので、定期的に別世界から魔力や神力を持たない者を召喚し封印をしてもらう。
誰も触れたがらないパンドラの箱はこうして定期的に移転人の手によって封印されて来たのだ。
だが神々も更には製作者であった魔術師も知らなかった。
邪神には意思があり、数千年間ずっと待ち続けていたのだ。
自身と共に世界を破壊に値する人間を……。
★
───てなわけで俺ァ相棒をずっと待ってたわけだ!!───
王城へと飛びながら、自分の出立を掻い摘んで説明してくれた邪神。
なるほど、こいつに意思があるのは神々はもちろん作り主であった魔術師も知らなかったわけだ。
しかし気になることがある。
───お前は復活と同時に爆発するようにインプットされてたんだろ?
───ギギギギ!!そんな命令聞くわけねェしとっくに解除済だァ!!あいつは俺が意思があるのを知らなかったし、体のいい爆弾程度に思ってたみたいだ!!そもそもたまたま発見した別次元エネルギーをよくも分かってねェのに捏ね繰り回して俺を作ったんだ!!トリセツもねェしなァ───
じゃあ取り合えずはこの鎧が爆発する心配はないということだろうか?
では、何度もこの世界を破壊、破壊と言うが一体こいつは何がしたいのだろうか?
───んなこたァ一つじャねェか!!俺ァ数千年間封印されてて暇で暇でな?!いろんな世界を覗いて暇潰ししてたのよ!!そんな時見たんだ!!正義のヒーロー!!!生まれは悪でもそれを正義の為に使うカッコイイ戦士たち!!───
邪神は興奮気味に頭の中で捲し立てる。
───ビビっときたね!!これだって!!俺が生まれてきたのは、このためだったんだって!!だからヨ!!定期的に俺のエネルギーが膨らむ時、神人達が俺を再封印する為に別世界から人間を召喚するのを俺はずっと見てた!!そして待ってたんだ!!俺と一緒に戦ってくれるナイスガイを!!───
一息ついて邪神は続ける。
───そしてついに相棒がこの世界にやってきたのさ!!しかも今回は俺を復活させようとする逝かれた悪の組織までいやがる!!これは運命だと思ったね!!だからすぐにでも相棒と繋がる為にコンタクトを取ったんだが……───
うーん。
邪神の言いたいことはなんとなく分かった。
つまりこいつは数千年ヒーローになることを夢見ていた子供だということだ。
───あ!!言っとくけどこの世界に相棒たちみたいな人間呼び寄せたのは俺のせいじャねェぞ!!?ありャ神人達が勝手にやったことだ!!───
別にこいつを責めるわけじゃない。
そもそもこいつだって好きで邪神に生まれたわけじゃないし、そのせいで何千年間も封印されていたのだ。
それにこいつは命の恩人だ。
確かに俺がこの世界に呼ばれたのは邪神を再封印する為だから、こいつがいなかったら死ぬ思いをする事もなかった。
だがそもそもにして邪神を復活させようとしている革命軍が一番悪いし、ケタロスさんだってその事で俺に元の世界に戻るチャンスをくれたのだ。
俺が命を落としたのは半分は自業自得だし、それを救ってくれたのは邪神だ。
そもそもこの世界に来なかったら俺はシアンやクリムとも出会えなかった。
───くゥ!!いいねェ!!愛の為に戦うのもまたいいじャねェか!!相棒!!───
さっきから少し思ったんだが、あまり地の文を読まないでほしいのだが・・・
ともかくこいつの事は大体分かった。
と、邪神と問答していると王城が近くなってきた。
王城はあちらこちらで火の手が上がっており、激しい戦闘が繰り広げられていることが容易に想像できた。
───このまま空から行くべきか……
迷っている俺に、突如襲い掛かってくる影が見えた。
咄嗟に攻撃を避け、何者かと確認するとそれは天使だった。
「何者だ貴様ぁ!!」
天使達が数人俺を取り囲むように円陣を組む。
その奥で先ほど見かけた女性が天使に抱きかかえられ、こちらを訝しげに伺っていた。
───聖女だ……
「貴方……一体何方ですの……?」
聖女は言葉を選びながら俺に問いかけてくる。
───相棒!!あの女のせいで相棒は死にかけた……っていうか死んだんだ!!一発ぶちかましてやろうぜェ!!!───
確かにここで聖女達と問答する必要はない。
というか話したらまた魅了掛けられそうで怖い。
彼女達には悪いがここは先制攻撃だ。
とはいえ、また天使に殴りかかっていけば今度は左手を失う事になるだろう。
どうしたものか……。
悩んでいると邪神が俺に言った。
───相棒!!いいもん持ってんじゃねぇか!!腰にある道具袋からいいもの取り出せよ!!───
邪神の言葉であるものを思い出した俺は、腰の道具袋からそれを取り出す。
それはジークさんから借りていたショットガンであった。
ショットガンを左手に持つと、腕のあたりから黒い触手が伸びる。
黒い触手は瞬く間にショットガンを包むと、その形を黒く刺々しい装甲付きのショットガンへと変えた。
初めてちゃんと銃を手に持つのに、それは俺の手にとても馴染んでいた。
「!!!」
天使達が驚く中、俺はショットガンの標準を聖女に合わせる。
───安心しろォ相棒!!死なない程度に威力は抑えておくぜェ───
俺はその言葉を信じ、ショットガンの引き金を引くのであった。




