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エピローグ 佐藤勝利という人間の死

結局のところ佐藤勝利と言う人間は特別な人間ではなかった。


平々凡々。

人助けが趣味で、少しだけ惚れっぽいだけの男子高校生。


当然心臓を貫かれ、首を刎ねられれば命を失うしそれに抗う術はない。


こうして佐藤勝利は生まれ故郷を離れた別の世界で、十五年という短い歴史に幕を閉じるのであった。



「!!」


コップが割れるけたたましい音がした。


───勝利……!!


佐藤勝利の母、佐藤詩織は手から零れ落ちて割れた勝利のコップを見て呆然としていた。


佐藤勝利が行方不明になって早四日、息子の友人たちの話では息子は教室を出ようとして突然消えたらしい。


そんな怪奇現象のような事で息子を失う事になるとは思ってもみなかった。


警察も捜査を続けてくれてはいるが、如何せん状況が状況だ。

クラスを出て突然消えたなんて神隠しのようなケースは今まで聞いたことが無い。


息子の友人たちの話ではクラスの男子がもう一人その場で消えてしまったらしい。

二人も教室から姿を消したのだ。


学校もその後、説明会を開いたのだが当然彼らも何が起きたか分からないため、保護者達からの質問にしどろもどろに答える事しか出来なかった。


勝利の兄、佐藤武はこの四日間、武の友人たちと共に駅でビラ配りをして情報提供を呼び掛けてはいるが、成果はなかった。


父親に似て困っている人を放っては置けない優しい子だった。

兄の武の様に特別優秀ではなかったが、そんな事詩織にとっては関係なかった。

二人とも愛する息子だ。


詩織の視界が涙でジワリと歪む。


そんな時、詩織の携帯電話が音を鳴らす。


───もしかしたら警察かもしれない!!


そんな期待を籠めて携帯電話を出す。

相手先の番号を見れば、どうやら警察ではない様だ。


失望のため息をつき、詩織は電話に出る。


「……はい、もしもし」

「失礼します。こちら佐藤勝利さんのお母さまの電話番号で間違えありませんか?」

「!!───はい!!佐藤です!!あの……!!」

「私は不動京谷と申します。この度佐藤勝利さんが突然行方不明になってしまったということですが、その行方を私の父が心当たりがあると……」

「本当ですか!!?あの!!息子は一体何処へ!!?」

「落ち着いて下さいお母さま。その件は電話では話づらいですので、一度我が家へ来ては頂けないでしょうか?」

「……ご自宅へですか?」


最初は興奮していた詩織だが、若干の冷静さを取り戻す。

少し怪しくはないだろうか?


情報提供なら電話越しで構わないはずだが、なぜわざわざ自宅へ招こうとするのか?


「あの……」

「ああ!ご心配なさらず。もちろんお一人で来てほしいなどとは申しません。ご家族で来られて下さい」

「いえ……そう言う事ではなく……」

「もちろんもう一人の行方不明者である三谷和也さんのご家族も呼んでおります」

「……」


正直の話とても怪しい。

だがもし彼らが本当に善意で情報を提供してくれるのであれば、ここで断れば勝利の情報を絶たれることになる。


「分かりました……。よろしくお願いします」

「良かった。では住所ですが─────────


住所を教えてもらい、訪問する日付を決めて電話を切る。

武が帰ってきたら相談するつもりだが、詩織はもう行く気であった。


少しでも勝利の情報があるのなら……、藁にもすがる思いで詩織は電話を握りしめる。



しかしいくら新たな情報が手に入った所で、佐藤勝利の命は既に終わっている。


詩織はそんなことは露知らず、唯々佐藤勝利の無事を祈るのであった。

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