50 俺yoeee!!
『王の門』抜け道から中に入ると、辺りは騒然としていた。
見るからに身なりのいい人たちが『王の門』の外へ出ようとして『王の門』へとごった返しているのだ。
それを横目に俺達は城へと急いだ。
幸い城は一番に目立つためすぐに見つかった。
「裏路地へ行こう。ここを通れば城の裏手まで直ぐだ」
そうすれば無用な争いからも遠ざかることが出来る。
そう言うバラバさんに連れられて俺は裏路地へと走った。
バラバさんが言うにはその先にスワンナさん達が、俺達に合流するために待機しているらしい。
───くそったれ!!相棒!!こりゃ罠だ!!───
また頭の奥底で奇妙な声が聞こえる。
一体さっきからなんなんだ?
俺が頭の中の妙な言葉に顔を顰めていると、突如後ろからバラバさんが言った。
「すまない。勝利殿」
「え………?」
★
佐藤勝利たちが走り去った後、暫く静かにしていたバンギアスが辛抱たまらんと大笑いし始めた。
「……がははははっは!!!!」
「何が可笑しい?バンギアス」
突如本当に可笑しいとばかりに大笑いするバンギアスに、アルデンは怪訝な表情で問う。
「がはははっは!!これを!!笑わずに!!いられるかぁ!!」
「なに……?」
「アンタもあの糞餓鬼も!!!本当におまぬけだぁぜ!!!」
「……」
アルデンは無言で銃を構えながら、バンギアスの言葉を待った。
「あの餓鬼は死ぬ!!!これは予想じゃなくて絶対だ!!!アンタはあの餓鬼を死地に向かわせたんだよ!!!」
「勝利君は確かに魔力などはないが、簡単に死ぬような子じゃない。それに彼にはバラバ殿も居る」
「ぐわはっはっはははは!!!アンタほんとに耄碌したなぁ!!!本当に疑問に思わなかったのか?!!」
「……!!!」
その言葉にアルデンは自分の失策を悟る。
確かに今朝から疑問に思ってはいた。
此方の作戦会議に合わせての敵の襲撃。
変装しているはずのシアンを一発で見抜いた聖女達。
此方の情報が洩れている。
当然廻者の可能性も考えた。
しかしあのメンバーの中に廻者がいるはずが無いと勝手に断定していた。
なぜならあそこにいるメンバーはジャランカを除いて、聖女に会った事すらないからだ。
スワンナはブルリカ所属のアークエンジェルズだし、アーシュリだってこのファルデア王国に舞い降りたのはつい最近のことだ。
バラバは元々神人であるケタロスの護衛なのだ。
だがもし、あの中に廻者がいるとしたら?
まさか……
まさか……!
真逆……!!!
「そうさ!!あの天使野郎は聖女の回し者さ!!!!」
★
「すまない。勝利殿」
「え………?」
その言葉の意味を理解するまでに俺は数秒かかった。
胸が熱い。
「恨んでくれていい。しかし愛ゆえだ」
何を言ってるのだろうか?
胸が熱い。
下を見ると俺の左胸のあたりから剣が飛び出ている。
そしてそれが引き抜かれた。
ゴプリと俺の口から血が出てくる。
「ごふ……」
「去らばだ。勝利殿」
俺が振り向くと、バラバさんは俺に向かって剣を振っていた。
バラバさんの剣がゆっくりと視える。
これが世に言う走馬灯というやつなのだろうか?
バラバさんの剣が俺の首に触れる。
俺の首は碌な抵抗も出来ずバラバさんの剣を受け入れていく。
そして───
★
「ショーリさん?」
魔王マッハブージと苛烈な戦闘を繰り広げていたシアンは、ふと嫌な予感を感じた。
佐藤勝利の身になにか起きたのだろうか?
上空に現れた目玉の化け物と、クリムが戦闘を開始したのは察知していた。
つまり今、佐藤勝利の元には変装道具をくれたおじさまと、天使しかいないという事になる。
その隙をついて何者かが佐藤勝利を害したのだろうか?
一瞬だが完全に意識が佐藤勝利の安否へと逸れる。
そしてそれは致命的な油断。
戦闘が始まって初めて見せるシアンの致命的な隙をマッハブージは見逃さなかった。
「どうした!!!大魔王の娘よ!!!隙だらけだぞ!!!」
「!!」
言葉と共にマッハブージの拳がシアンの鳩尾に食い込む。
戦闘が始まって初めてのクリーンヒット。
シアンは弓なりに体を反らして吹き飛んだ。
───手ごたえあり!!!
マッハブージは勝利を確信する。
瓦礫の山に突っ込んだシアンは、自分のダメージも気にせず佐藤勝利を想った。
───ショーリさん?大丈夫ですよね……?
★
「ご主人様?」
クリムは座天使の炎の車輪から放たれる灼熱の光線を掻い潜りながら縦横無尽に飛び回っていた。
スワンナやアーシュリは邪魔になるためと、逃げた聖女達を追うために既にこの場にはいない。
時折魔術で反撃しつつ、座天使の倒し方を考えていたクリムだが突如嫌な予感を感じる。
縦横無尽に飛び回っていたクリムが佐藤勝利の安否を想い一瞬止まった。
その瞬間放たれる座天使からの必殺の光線。
炎の車輪と中心の大目玉からの熱線の束は全てクリムに向かって集中砲火される。
「あ……やば!!!」
クリムがその光線に気付いた時には既に遅く、光線はクリムに着弾した。
激しい轟音と爆発音が鳴り響き、座天使の集中砲火を受けたクリムは墜ちていく。
自身が墜ちていく中、クリムが心配していたのはやはり佐藤勝利の安否であった。
───ご主人様……大丈夫かな……
★
宙を舞う。
体が軽くなった様だ。
いや違う。
体は軽いどころか宙を舞っている俺に体が着いてきていない。
それもそのはず、俺は今バラバさんに首を刎ねられたからだ。
人間の脳は血液の補充が無くなると意識が途切れるという。
つまり首を切られたりすれば本来、その場で血液の循環が止まるわけだから意識を失うはず。
なぜ俺はそんな中で意識を保っているのかは分からないが、まぁどちらにせよもうすぐ俺は死ぬ。
いや。
首を斬られた時点でもう死んでいるのだ。
───ごめん……シアン……クリム……
最後に想ったのは二人の魔族の少女の事だった。
最後に想うのが好きな子たちの事で家族の事じゃないなんて俺もなかなか薄情な奴だな……
そんな思考ももうまどろんでいる……
俺はそのまま意識を手放し───




