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49 王の門

『王の門』の秘密の抜け道へと急ぐ俺達に、突如ジャランカさんの密偵と名乗る人が接触してきた。


「城で筆頭軍が反旗を翻しました。現在国王陛下含むご家族は残った国王派の筆頭軍達に守られ無事ですが、それも時間の問題かと……」

「間に合わなかったか……!!」


苦虫を嚙み潰したよう表情でアルデンさんが呻く。

どうやら聖女達の方が一枚上手で、俺達が動くよりも早く革命を始めていたみたいだ。

これでは俺達が到着した所で国王陛下に助言するも何も意味がない。


「どうするんですか!?アルデンさん!!」


このままでは例えシアン達があの魔王と目玉の怪物を倒した所で、国王が討たれてしまった後ではこの国を救った事にはならないだろう。

アルデンさんは少し考えた後、俺たちに言った。


「実は昨日の夜。ジークやデカリオ達に連絡してブルリカのギルド含む警備隊達を率いてこのデポカに来るように連絡したのだ。万が一こういった事態になった時に少しでも仲間を集めるためにな」

「ジークさん達に!!」

「デカリオには他の街のギルド達にも声をかけるように言った。しかしあくまで保険であったため、彼らが間に合うかは微妙な所だが……。それでもジーク達が到着するまで残りの筆頭軍達が持ちこたえてくれるのを祈るしかない」


アルデンさんはそこで言葉を切り改めて言った。


「とにかく我々は戦闘を避け、陛下達に接触してこのことを伝えよう。反乱者達に押し込まれて白旗を上げてしまえば恐らく陛下たちは殺されてしまう」

「……!!」

「一秒でも時間を稼いで援軍を待つ。それに時間を稼げば希望もある。シアン殿かクリム殿のどちらかが勝利すれば、それこそそれだけで我々の勝利なのだからな」


確かに!

シアンかクリムさえいれば筆頭軍が何人いようとも負けはしないだろう。


とにかく国王達には耐えてもらうしかない。

そして耐えれば勝利できるかも知れないことを伝えるんだ。

アルデンさんはそのことをジャランカさんの密偵に伝えると、密偵の人は頷いて姿を消した。


「彼が陛下達に接触できればそれでいいが、我々も向かおう!」

「はい!!」


気持ちを新たに俺達は走り出す。

そうして走ること数分、俺達は『王の門』の秘密の抜け道へとたどり着いていた。


すると秘密の抜け穴の前に誰かが立っていた。


「こっちだあ!!!アルデン殿!!!」


一際大きな声でアルデンさんに手を振るのは、この街に入るのを手伝ってくれた筆頭軍の隊長のバンギアスさんだった。


「バン!!なぜここにいる!?」


アルデンさんが声を上げると、バンギアスさんは大きく笑って答えた。


「がはははは!!なにやら大変なことになってるみたいだからな!!俺もアルデン殿達の力になるために正門ほっぽってこっちにきてたんだ!!」


豪快に笑うと親指を立ててバンギアスさんはアルデンさんに言った。


「さあ!!アルデン殿!!行きましょうや!!!」

「……。分かったバンギアス」


アルデンさんは頷くとバンギアスさんの横に立つ。

俺達もそれに続こうとした次の瞬間轟音が鳴り響いた。


「……。どういうつもりだ?アルデン殿?」


その音の正体はアルデンさんの銃だった。

アルデンさんは銃をバンギアスさんに撃ったのだ。


バンギアスさんは脇腹を抑えてうずくまった。


なぜそんなことを?!


混乱している俺を余所に、アルデンさんは淡々と言った。


「見え透いた嘘はよせ、バンギアス。ジャランカ達に聞いた昨日の襲撃犯の特徴を合わせれば、その(オーガ)の正体がお前であることは直ぐに分かった」

「……」

「それにお前から血の匂いがする。貴様、先ほどの密偵を亡き者にしたな?」

「……くくく。ぐわははははっは!!!おとなしくしてりぁ楽に殺ってやろうって思ってたのによ!!!相変わらず妙な鼻が利きやがるぜ!!!アルデン殿よお!!!!」


その言葉と共にバンギアスさんから煙が発する。

目もくらむ煙が晴れると、そこにいたのは赤い鬼だった。


「!!!」


俺が驚いて目を見開くと鬼は大声で笑った。


「ぐわはははははは!!!なんでこんな糞役にも立たなそうなクソガキまだ連れ歩いてんのか!!!」

「!!」

「坊主!!!てめえは足引っ張るだけだから大人しくしてたらよかったのによ!!!」


その言葉と同時鳴り響く轟音。

アルデンさんは無言で銃をバンギアスさんに発砲していた。

しかし銃弾はバンギアスさんの赤い皮膚を貫通することは出来なかった。

弾丸が当たった場所は少し焦げて黒くなっているがそれだけだ。


「すまない勝利君。ここからは君とバラバ殿で行ってくれないか?」

「俺達が行った所で意味ないでしょ!!?」

「これを……」


そう言ってアルデンさんはバンギアスさんから目を離さず俺に何かを投げ渡してきた。

それは金色の十字架のペンダントだった。


「城の裏口から入って王族側の筆頭軍にそれを見せるんだ。そして私の名を言うといい」

「アルデンさん……」

「大丈夫だ。そうすれば君は私の仲間だと分かってもらえる。その後陛下にも私の事を伝えてくれ」

「……アルデンさん」

「すまない勝利君。君を危険な目に合わせてしまう」


バンギアスさんから目を離さず俺に謝ってくるアルデンさん。

俺が躊躇しているとバラバさんが口を開いた。


「大丈夫だ勝利殿。スワンナ達も戦線を離脱して此方に向かっている」

「スワンナさん達が!!」

「左様。逃げた聖女を追っている様だが、彼女たちとも合流しよう」

「……はい!!───アルデンさん!!」


俺はアルデンさんに向きなおると大きくお辞儀した。


「俺達行きます!!気を付けて!!」

「すまない。君も重々気を付けて行ってくれ。バラバ殿、よろしく頼む」

「承知した」


その言葉と共に俺達は振り向かず急いで『王の壁』の抜け道を渡る。


こうして俺は『王の壁』を抜け、国王の待つ城へと足を急がせた。


この先、俺に待ち受ける運命も知らずに……。

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