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47 四面楚歌

スワンナは崩壊するホテルからバラバとアーシュリと共に脱出すると、まずは仲間たちを無事を確認した。


魔王と戦っているシアンの無事は言わずもがな、クリムによって連れ出された佐藤勝利とアルデン、そして部下たちと脱出できていたジャランカの無事を確認すると安堵のため息をついた。


「バラバ!貴方は勝利様の護衛をお願い!」

「承知している」


バラバに勝利の護衛を頼み、スワンナはアーシュリと共に天使に連れられているクラシーを睨んだ。


世界を守護するために存在する聖女、そして天界から遣わされたアークエンジェルズ達が革命軍に組しているなど、ジャランカの話を聞いてなお信じたくはなかったがこの状況にあって信じざる負えない。


彼女たちは世界を守護する所か、世界を壊そうとしているのだ。


聖女達は今からどこに向かうのだろうか?

なぜか自分たちの動きを察知しているように先制攻撃を仕掛けてきた革命軍。


ならば恐らく自分たちが国王陛下に会うよりも先に、彼を亡き者にしようとしているのではないだろうか?


自分たちの目的は国王陛下との謁見。

聖女が革命軍に組していると国王に報告することによる革命軍への牽制。

それをされてしまうと革命軍としては、ファルデアでの活動が難しくなるだろう。


今まで国王陛下に手を出さなかった革命軍だが、彼らの目的はファルデア王国の滅亡。


ブルリカを落してから王都デポカを潰そうとする彼らの計画を阻止してきたが、彼らもついに業を煮やして最終手段に出るつもりかもしれない。


だとしたら


───そんな事をさせるわけには行かないわ!


一直線に聖女の元へ飛ぶスワンナ。

聖女を抱えて彼女を囲むように守るアークエンジェルズ達を睨みながら口を開いた。


「聖女クラシー!天界から遣わされたアークエンジェルズとして貴女を逮捕します!」

「あらあら、スワンナさん。貴女まで彼らの妄想に取りつかれたの?」


聖女は朗らかに笑いながらクラシーを嗤う。


「問答は必要ありません!!」


聖女と話していると彼女に魅了されてしまうかもしれない。

スワンナは会話を早急に打ち切り聖女に向かって翔る。


「させません」

「!!」


スワンナの先制攻撃を止めたのは、デポカ所属アークエンジェルズ隊長のイリシエだった。

彼女はスワンナの同期でもあり、正義感が強く有能で尊敬できる天使であった。


「イリシエ……!貴女がなぜ?!」

「それは此方のセリフです。なぜ突然聖女様に斬りかかるのですか?」

「分かっているでしょう?!彼女は革命軍『ル・ルシエ』なのよ?!」

「誰に吹き込まれたかは分かりませんが、貴女ほどの天使がそんな妄想を信じるとは嘆かわしい」


イリシエは剣を振るうとスワンナと距離をとる。


「客観的に見て、殺人犯の魔族を匿い、突然聖女様を革命軍と断定している貴女が可笑しいのは明白でしょう」

「なら先ほどの魔王を名乗る襲撃者が聖女クラシーを知っていたのはなぜ?」

「さあ?それこそ革命軍の自作自演では?と言っても貴女は信じないのでしょうね?」


イリシエはため息をつくと聖女クラシーに言った。


「聖女様。いかがなさいますか?」

「……本当なら彼女と腰を据えてお話したいのですが、仕方がありませんわ」

「分かりました。とは言え彼女はファルデア最強のアークエンジェルズ。故に早々ですが奥の手を使います」

「そう……。貴女達の覚悟見せてもらいますわ……」


クラシーの答えを聞くや否やイリシエは、クラシーの護衛に数名の部下を残し、聖女クラシーやスワンナ達からを距離をとる。


そしてイリシエ含む天使たちは手に持った薬を一斉に飲みこむと、今度はイリシエを中心とするように部下の天使たちが周りを飛び始める。


「あいつら……何してんの……?」


突然のアークエンジェルズ達の行動にアーシュリが声を上げる。

そして次の瞬間突如彼女達から眩い光が発せられた。


あまりの光に思わず目を逸らすスワンナ達。


数秒の後眩い光は収まったが、そこに現れた存在にスワンナ達は言葉を失うのである。


「……美しいですわ……」


うっとりと、クラシーが言葉を発する。


そこにいたのは天使と呼ぶにはあまりもかけ離れた存在であった。


巨大な眼を中心に、無数の眼がついた燃える車輪が二つ回転しながら宙を浮いている。

グロテスクでありながらも神々しいその御姿。


「そ……そんな……」

「───座天使(ソロネ)……!!」


天使達の階級の中でも最上位の階級にして、神々の最終兵器。

座天使(ソロネ)が今ここに姿を現したのである。



「何が始まったのだ……」


ファルデア王国国王、レオパルド五世は城の窓からでもはっきりと視える、空に現れた怪物に旋律した。


距離にすれば数キロは先の筈。

本来ならば目を凝らしても見えるか見えないか分からない距離でありながら、なぜこうもはっきりと分かるのか。


恐ろしい見た目ながら、どこか神々しくもある姿にレオパルド五世はかつての戦場での天界の最終兵器を思い出す。

あれは座天使(ソロネ)と呼ばれる最上位の階級の天使の筈。


なぜそれがこのデポカに……?


どちらにせよ何かとんでもないことが起きてる。

このまま玉座でじっとしていてはこのデポカのみならず、ファルデア全体で大変な事になるかもしれない。


大臣たちを集めこれからの事を話し合うため自らも玉座を離れようとした時、荒々しく扉が開かれた。

現れたのは息子であり第一王子であるボナパルトであった。

息を切らせながら、彼は声を荒げて国王に言った。


「父上!!筆頭軍たちが乱心した!!」

「なん……だと!?」


こうして革命が始まったのだった。


聖女クラシーを長として、今までコツコツと彼女が魅了してきた筆頭軍含め多くの兵士たち。

その全てがまさに王を打ち倒さんと立ち上がったのである。


外には恐ろしい化け物、城の内側には裏切った筆頭軍たち。

四面楚歌に立たされた国王は、苦虫を噛み潰したような顔で頭を抱えるのであった。


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