43 お目覚めのモーニングコール
───ギギギギ!!ようやく繋がったなぁ!!相棒!!───
何かが俺の中で語り掛ける。
一体誰だ?
───俺ァお前みたいなやつを待ってたんだ!!───
俺みたいなやつ?
───アアそうさァ!今までのやつァ最初はイヤだイヤだとごねてたくせに、いざ金塊を前にすると目の色変えてやがったァ!!───
?……なんのことだ?
───今の相棒のように命を狙われる心配もほぼないような簡単なお仕事だってのに!!奴らは他の世界の事なんざ知るかってヨ!!───
……自分のあずかり知らぬことまで面倒見切れないのは普通のことだろ?
それに命が狙われてないからって、無償でなんでもしてあげる人なんてそうそういないだろ。
───ソウなのかもなァ……!でも相棒は違う!!お前は何の関係もない世界の事を、金塊目の前に出される前から救おうって心に決めてた真の勇者だァ!!俺ァお前みたいなのを待ってたんだ!!───
俺の様な人間……
───この世界で相棒は最弱だ!!赤ん坊だって持ってる魔力も神力も持っていねェ!!だがそんなことァ関係ねェ!!俺がいる!!俺ァ相棒にしか使えねェ!!───
お前は一体……
───俺の名は●●・●●●・●●●●!!さァ相棒!!いっちょ俺と世界を壊そう!!───
俺は……
★
「朝だよ?起きて、ご主人様♪」
誰かが俺を起こしてくれている。
誰だろうか?
今誰かと話していた気がするんだ。
でも曖昧で、肝心の内容は殆ど覚えていない。
でも、もう少し寝ていたい。
気持ちのいいまどろみに、俺は再び眠りにつきそうになる。
「もー、起きて?おきてくれなきゃ……ちゅー、しちゃうよ?」
その言葉に俺は完全に覚醒した。
慌てて目を開け、体を起こそうとするがそれは出来なかった。
何故なら寝ている俺の上に跨っている少女がいるからだ。
「あは!おはよ。ご主人様♪」
淡いピンク色のツインテールをフワフワと揺らし、ルビー色の瞳で俺をのぞき込んでくる少女の正体は、ブルリカで俺を助けてくれた少女、クリムであった。
「ク……クリム!?」
「やほ。ご主人様!きちゃった」
ニコニコと俺に跨って笑顔を作っているクリムに俺は混乱で次の言葉が出ない。
「あはは!驚いてくれた?ぼく頑張ったんだからね?」
褒めて褒めて、と言ってくるクリムに俺は混乱と共に言った。
「クリム……。ほんとにこっちにまた来たんだな……」
「くふふ。また来るって言ったでしょ?」
「あ……ああ。ってあれ?バラバさんは?」
俺は隣のベットを見るがバラバさんの姿は見当たらない。
俺に何かあるとすぐに何とかしてくれると言ってくれていたバラバさんだが、一体どこに行ってしまったのだろうか?
「あ!もしかして天使の人探してるの?だったら大丈夫!」
「え?」
「なんかぼくに気づいたっぽくて動こうとしてたから、ちょっと静かにしててもらったんだ!」
「静かにって?!」
「ぼく隠密苦手だからさー。サプラーイズってご主人様に会いたかったから……」
と言ってクリムが指をさしたのはベットとベットの間だった。
「ご主様からは見えないかもしれないけど、ここにいるよ?」
「えーっと。生きてるんだよな……?」
「あはは!大丈夫だって!ちょっと眠っててもらってるだけだよ!」
本当に大丈夫だろうか?
心配しつつもクリムを信じて俺は頭を切り替える。
「あのークリム。上からどいてくれないかな?」
「んー、どーしよっかなー?」
クリムは楽しそうに笑うが、俺はそれどころじゃない。
朝から美少女に跨れてるなんてシュチュエーション、正直悪くはないのだが朝なのでいろいろとやばい。
そう、いろいろやばいのだ。
だからクリムには速やかに俺から離れてもらわなければならない。
だがクリムは簡単に離れるつもりはないようだ。
どうしたものか……
「朝からなにやってるんですか?クリム」
「あ!シアだ!やっほー」
俺が悶々としていると、部屋のドアを開けてシアンが入ってきた。
ドアの鍵はとっくに機能はしていないのだろう。フリーパスだ。
「あれ?シアってば捕まってるんじゃないの?」
「何時の話をしてるんですか?もうとっくに抜け出したに決まってるじゃないですか」
「いいの?怒られちゃうよ?」
「だれにですか……」
ため息をつきながらクリムの質問に答えるシアンだが、問答はいいので出来れば早く俺を助けてほしい。
「シアン!!」
「ショーリさん。おはようございます」
「おはよう……。じゃなくて!助けてくれないか?!」
「助けろと言われましても。何をですか?」
シアンが首を傾げる。
そして何かに気が付いたようにああ、と声をだしてクリムに言った。
「クリム。このままではショーリさんは漏らしてしまいますよ?」
「え?そなの?ごめんね?ご主人様」
申し訳なさそうに俺から離れるクリムだが、なんだがそれはそれで釈然としないというか……。
俺は釈然としないまま、取り合えずクリムとシアンに促されるようにトイレに向かった。
★
「改めて!昨日ぶり!ご主人様!」
クリムが弾けそうな笑顔を俺に向ける。
その笑顔に俺は一瞬見惚れてしまうが、首を振ってクリムに言った。
「クリム。昨日はほんとにありがとう!」
「なにが?」
「俺達を助けてくれてだよ!クリムがいなかった今頃俺達はスライムの餌食になってたんだ!」
「あはは!なーんだそのこと?」
クリムは笑いながら言葉を続ける。
「そんなことご主人様の為ならぜーんぜんだよ?あ!でもご褒美ちょうだい?」
「ご褒美?」
「うんうん!僕、ご主人様の為に頑張ったんだからご褒美!」
「えーっと……何をすればいいんだ……?」
当然クリムにはどんな報酬だって受ける権利がある。
だからどんな事を要求されても俺は答えなきゃいけないのだが、何を要求されるのだろうか?
俺は戦々恐々とクリムの答えを待った。
「えへへ。じゃあ……」
「ああ……」
「頭撫でて?」
「………へ?」
意外な要求に俺は一瞬言葉を失う。
頭撫でてって、それだけでいいのか?
疑問に思っているとクリムは俺が撫でやすいように頭を俺の前に出した。
「ほら。はやくはやく!」
促されるままに俺はクリムの頭を撫でた。
繊細で柔らかい髪がとても触り心地がいい。
「くふふ♪」
クリムは上機嫌に微笑んでいる。
本当にこんなご褒美でいいのだろうか?
「クリムばかりずるいです。私も撫でて下さい」
すると、シアンまで俺の前に頭を出してくる。
俺は混乱しながらもシアンの頭を撫でる。
クリムに負けずとも劣らない繊細で触り心地のいい髪だ。
「ふふ。気持ちいいですね」
「ねー♪ご主人様ってば撫でるのうまいねー」
二人は楽しそうに言うが、俺は緊張と混乱で頭がいっぱいだった。
結局、気絶していたバラバさんが目を覚ましそれと同時にスワンナさん達が俺の部屋を訪ねてくるまで、俺は二人を撫で続けるのだった。




