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42 進化の種

進化の種。

それはカイン・アルベルトが作り出した最高傑作である。


生物に進化の種を投与することによって、文字通りその生物に進化を施すのだ。


基本的に投与する種族により効果は異なり、魔物及び魔族に投与すればその力は何倍にも増し圧倒的な成長を施せる。


また人間族およびそれに準ずるエルフやドワーフ、獣人などといった人間界に住む者に投与すれば、文字通り上位種族へと進化する。

中には(オーガ)や天使族への進化するものもいた。


どんな種族になろうとも簡単にパワーアップできる夢のアイテムであったが、当然進化の種にはデメリットも存在した。


それは進化の拒絶。

体が変化することへの無意識の抵抗が、進化を拒絶することによる進化途中の体の崩壊を招く。

拒絶が起ると体の進化は中断され、例外なく死に至る。

その拒絶は自身が望むにしろ望まないにしろ無意識化で起こるため、進化できるかは完全に賭けなのだ。


事実ディオスパイダーも進化の種による強化に成功するまでに多くの失敗を繰り返した。


今革命軍が所有している進化の種はディオスパイダーやスライムに投与した試作型よりも強力な効果を持っており、投与後すぐに進化が始まり進化完了までのプロセスが非常に短くかつ効果的である。


しかしその分拒絶のリスクも爆発的に大きくなっており、事実新型の進化の種で進化に成功したのは王国筆頭軍7番隊隊長バンギアス含むたった数名であった。


そんな進化の種だが、製作者であるカイン・アルベルト亡き今、残った数はたったの10個しかなかった。


「この残った進化の種を全て聖女クラシー、其方に預ける……」


そう言って聖女クラシーに残りの進化の種を授けた革命軍の長、イオグマ・マグナッソは、他の指導者達を見渡し言葉を続ける。


「この進化の種を使って革命軍の戦力を増強し必ずやファルデア王国を滅亡させるのだ」

「はーい」


その言葉に異を唱えるべく手を上げたのはリーサ・エリザベスであった。


「もうそんな力ずくに拘らないで、クラシーさんの魅了で内部壊滅させた方がはやくないっすかぁ?」

「そうしたいのは山々なのですが、国王含む重要人物数人が未だに(わたくし)に心を開いてはくださらないのです」


その疑問にクラシーは答えるとため息をつきながら続けた。


「司法などは支配したと言われていますが、実際の所王族の上位の方々を魅了出来なければあの国を完全に壊滅させることは不可能ですので……」


力及ばず心苦しいですわ。と悲しそうに言うクラシーにリーサが更に問う。


「それでも何人か魅了してるんしょ?じゃあ何とかなるんじゃないですか?」

「そうですわね。王族やそれこそ国王に近い立場におられる方々に頼めば内部からの革命は可能かもしれませんが、それではもう遅いと思いますわ」

「……?といいますと?」


「先ほどイオグマ様も言われましたが、前々から我々革命軍を探っておられた方々が、今回のブルリカの事件を受けてさらに深く調査を開始いたしました」

「まじか……」

「その中には(わたくし)に目星をつけている方もおられます。(わたくし)の魅了は(わたくし)に少しでも好意的に思って下さる方には例外なく効果を発揮しますが、初めから(わたくし)を疑っておられる方に効果は薄いのです」

「うえー。使えるんだか使えないんだか分かんない能力っすね」


更に、とクラシーは続ける。


「その(わたくし)を疑っておられる方の中に国王陛下も入っておりますわ」

「ダメじゃん」

「そうです……。だからこそ(わたくし)に関係のない外部からファルデア王国を壊滅させる必要があったのですが……」

「なーるほど。でもどーするんすか?クラシーさん派の人たちに進化施して革命ーだなんて、それこそクラシーさんが疑われるの決定じゃないですか」


「だからこそ早急に事態を動かし!!連中がクラシーを逮捕などどやっている場合では無くすために進化の種を使って兵力を増強して、王都を一気に落とすのであろうが!!!」


貴様は今まで何を聞いていたのだ!!とマッハブージが怒鳴る。

その声にリーサが驚いて小さくなるのを無視してマッハブージはクラシーに言った。


「クラシーよ!!その進化の種を一つ俺にくれ!!!」

「マッハブージ様?」

「俺もファルデアを潰すのに手を貸そう!!幸い俺は他の連中と違って人間界での役職などはない!!」


故に自由だ!!と言うマッハブージにクラシーは驚いて問いかける。


「よろしいのですか?マッハブージ様。そうは言っても貴方様は魔界の王の一人。魔王様が人間界の国を潰すのに手を貸したとなると、それこそ……」

「貴様こそ何を言っている?それこそ望むところではないか!!俺たちは今の三界を変えるために戦っているのだ!!」

「大魔王様の粛清は避けられないのでは……?」

「ぐわははははは!!!大魔王なぞ何する者ぞ!!それにファルデアを潰さんことには俺たちの革命も進まん!!」


それに、と付け加えてマッハブージ言葉を続ける。


「俺が進化の種を使って強化できれば、それこそ大魔王なぞ相手にならんはずだ!!」

「マッハブージ様……」

「そもそも俺にとっての脅威は大魔王のみよ!!そんな俺が進化の種を使えばまさに鬼に金棒!!すべて蹂躙して必ずやファルデアを潰して見せよう!!」


「事は早急に運ばねばならない。大魔王だけでなく勇者も動く前にファルデアを潰すのだ」


革命軍の長、イオグマ・マグナッソはクラシーに渡した10個の進化の種を一つとると、マッハブージに渡した。


「マッハブージよ。其方の力と覚悟。ここで見せてもらおう」


マッハブージはそれを受け取ると大きく頷き、躊躇なく口に入れる。


「ええー?!失敗したら死ぬんすよ?!」


驚くリーサを余所に、進化の種を飲み込んだマッハブージは直後体が大きく痙攣し始める。


「大丈夫なのかよ……」


今まで黙って事の成り行きを見守っていた褐色の女性アラナージも心配そうに声を上げる。

クラシー含め、リーサ、アラナージが心配そうに見守る中マッハブージは突如全身から大量の出血をした。

そしてフラフラと体を揺らすとそのまま地面に伏したのである。


「失敗ねぇ……」


アーガマジンが呆れた様に言う。

もはやピクリとも動かなくなったマッハブージを革命軍の指導者たちは失意のうちに見守っていた。


クラシーが動かなくなったマッハブージに近づきそっと首元に手を当てる。

しかしマッハブージに脈はなく、彼は完全に死に絶えていた。


「ええええ?!ここで死んじゃうとか普通ありえる?!ここは成功して奇跡のパワーアップするところっしょ?!!」


リーサが驚愕の声を上げるが、マッハブージはやはり動かない。


「………残念だが……どうやら失敗のようなだな……」


イオグマ・マグナッソが静かにそう告げる。


しかしその時マッハブージの体がビクリと震え急激に魔力が放出し始める。

そして一気に体が膨張し始め風船のように膨らんだ体はそのまま破裂してしまった。


革命軍の指導者たちが驚愕して見守る中、破裂した体の中から全身から煙を上げながら進化したマッハブージが姿を現した。

見た目の変化は進化前から無いが、驚くべきはその魔力。


元々高い魔力を持っていたマッハブージだが、今の魔力は前と比べても格段と変化していた。

見ただけで心臓を鷲掴みにされそうなほどの圧倒的魔力。


リーサはその魔力にあてられただけで気絶してしまい、他の指導者たちもその魔力に顔を顰める。


「……ふうううう」

「……マッハブージよ。私はどうやら其方を見縊っていたようだな」

「くくく。ご老公、どうやら心配をかけたようだな!!」


マッハブージはそのままクラシーに向きなおると厳かに告げた。


「さあ!!クラシーよ!!!ファルデアを潰しに行こうではないか!!!」


そんなマッハブージの声に威圧感を感じながらもクラシーは、その圧倒的魔力に見惚れていた。


こうしてファルデア王国にとっての最大の脅威が誕生してしまったのであった。

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