33 到着
「見えるかね?勝利君。あれがファルデア王国の王都デポカだ」
アルデンさんの言葉に、飛竜の飛ぶ風圧で目を開けれなかった俺は薄目を開ける。
目に映ったのは巨大な城壁に囲まれた都市だった。
ブルリカも結構な都市だったが、失礼だが目の前の都市とは比べ物にならない。
「すげぇ……!」
目の前の都市に感動していると、飛竜は速度を落とし始めた。
「よし。では降下しよう」
アルデンさんがそう言うと、飛竜はゆっくりと降下していく。
そしてあっと言う間に城壁の城門まで降り立った。
スワンナさん達もついて降り立つ。
「すこし待っていてくれ」
そう言うとアルデンさんは飛竜を降り、城門へと歩いて行った。
「アルデンさんは元、王国筆頭軍の隊長さんだったので顔が効くのでしょう」
スワンナさんはそう言うと大きな城門を見上げた。
「いつ見てもとても立派な城門ですね……」
「そう?人間たちの臆病さが出ててなんだか情けなく感じるけど」
「もう!アーシュリ!臆病なのは立派な防衛本能!むしろ褒めるべきよ!」
「それ褒めてんの?むしろ馬鹿にしてない?」
スワンナさんとアーシュリが言い争っていいると、アルデンさんが帰ってきた。
「大丈夫だ。飛竜はここに預けて私たちは中に入ろう」
そう言って飛竜をひと撫でする。
飛竜は「ぐるる」と気持ちよさそうに鳴いた後、城門の方へと飛んで行った。
「城門から向かって左側に飛竜の厩舎がある。彼女たちは普段そこにいるんだ」
俺が飛び立った飛竜を見ていると、アルデンさんが説明してくれた。
「本当ならば街に入るのには正門と呼ばれる門を通ってしか入れないが、今回は特別に筆頭軍が普段使っている門を通ることを許可してくれた」
正門は入るまでにとても時間がかかるからね。と言って門の方をアルデンさんが指さすと、そこには多くの人の列があった。
門の外には彼らが乗っていたであろう車も多く停まっている。
たしかにあそこに並んで街に入るのであれば、それこそ日が暮れてしまいそうだ。
すると門の方から軽装の鎧を着た騎士が歩いてくる。
あの出で立ちはたしかオスマンさんと同じ格好だ。
ジークさんを思わせる厳つい男性で、右目には眼帯をしている。
「お前さんが佐藤勝利か!話はアルデン殿から聞いた!!」
がはは、と大きく笑って男性は続ける。
「俺様はファルデア王国筆頭軍7番隊隊長バンギアスだ!!」
よろしくなぁ!!と俺の手握って激しく上下してくるバンギアスさん。
俺はそれによろけながらも挨拶を返した。
「よ……ろしくお願い……します!佐藤……勝利です!」
「がはは!!どうしたぁ!!元気ねぇなぁ!!」
そんなんじゃ筆頭軍には入れないぞ!!と言って笑うバンギアスさんをアルデンさんが諫める。
「バン。勝利君を放してやれ。お前の馬鹿力で彼の肩が外れてしまう」
「がはは!!これぐらいの年のガキはそんなやわじゃあねぇですよ!!」
「自分基準で物事を図るな」
アルデンさんはため息をつき、俺とバンギアスさんを引きはがす。
「ありがとうございます……」
「いや。こちらこそすまなかった」
「なんでアルデンさんが謝るんですか?」
「ううむ。こいつは私の元部下でな。そのころから礼儀がなってない男だったが……」
アルデンさんが渋い顔をすると、バンギアスさんは更に笑う。
「がはははは!!みんなが言うには俺様は人ではなく熊から生まれてきたらしい!!」
だから礼儀作法などしらんのよ!!と、そう言って笑うバンギアスさんだが、俺はこの人の事が嫌いではなかった。
さっきは本当に肩が外れるかと思ったが、この人に悪気はなかっただろうし、どうやらこの人のお陰で自分たちは正門を避けて街に入れるようだ。
「あの」
「あん!?」
「ありがとうございます。バンギアスさん。よろしくお願いします」
「おお!!いいってことよ!!」
そう言って親指を立てるバンギアスさんはやはりいい人なのだろう。
そんな俺たちをスワンナさんは優しい目で見ていた。
「バン。さっさといくぞ」
「おお!じゃあそこの天使どももついてこい!!」
「ああ!?天使どもぉ!?」
「アーシュリ!!」
バンギアスさんの言葉に怒りをあらわにするアーシュリだが、スワンナさんに諫められしぶしぶバンギアスさんの言葉に従った。
こうして俺たちは正門を避け、普段筆頭軍が使っているという裏門から王都に入る。
裏門を通るとそこは直ぐに宿舎があった。
アルデンさんが言うにはここは王都筆頭軍の宿舎の一つで、近くにさっきアルデンさんが言っていた飛竜の厩舎が見えた。
交代で王都筆頭軍の部隊がここに寝泊まりし、緊急などがあったら飛竜に乗って発進するらしい。
つい先日までは王都筆頭軍3番隊が当番だったが、彼らがブルリカに出動したため今は7番隊が当番をしているそうだ。
俺達はそのまま宿舎に入った。
すぐにでも街に出てシアンを探したいが、このまま街に入るには入門許可書がいるそうだ。
「7番隊でよかった。他の部隊ならこうも簡単に王都に入ることは出来なかったかもしれない」
「そんなこたぁねぇでしょうが!!アルデン殿に頼まれて嫌と言えるやつぁいねぇ!!」
「ふ。私を買いかぶるな。もはやただのロートルだよ」
「がはははは!!なに言ってるんすか!!あんたぁ今でも英雄だ!!」
宿舎でアルデンさんとバンギアスさんが話していると、一人の女性が宿舎に入ってきた。
軽装の鎧をピシッと着こなす長身の女性は宿舎に入りアルデンさんとバンギアスさんに敬礼する。
「隊長。アルデン様。佐藤勝利さんや天使様たちの入門許可が下りました」
「うむ。すまなかったな」
「いえ。他でもないアルデン様の頼みを無下には出来ません」
そう言ってまたアルデンさんに敬礼した後に、女性は今度は俺に話しかける。
「初めまして。自分はファルデア王国筆頭軍7番隊副隊長サラギ・アスです」
「初めまして!佐藤勝利です!今回はありがとうございます!」
「ふふ。いいのですよ?佐藤さん。それが仕事ですので」
そう言って微笑むサラギさん。
それよりも、と彼女は続ける。
「父がご迷惑をおかけしたようで。大丈夫ですか?佐藤さん」
「父?」
「ああ……。はい。隊長、つまりバンギ・アスは自分の父です」
「え!!そうなんですか!?」
「はい……。お恥ずかしながら……」
そう言って恥ずかしそうに頬を染めるサラギさんにバンギアスさんは大笑いする。
「がはははは!!似てねぇだろ!?こいつはかみさんに似たからなぁ!!」
「バン。もういい。許可が下りたのなら私たちはもう行く」
そう言ってアルデンさんが席を立つとバンギアスさんは笑いながらアルデンさんに言った。
「坊主や天使どもの街案内はサラギにさせて、俺たちゃ例の件を調べましょうや!!」
「そんな無責任なことはできん。勝利君をシアン殿と再会させるまでは、私は勝利君と共に行動する」
「……そうですかい!!なら俺も……「隊長!!」……!!」
「隊長はまだ仕事が残っています。それに街の事はアルデン殿がよくご存じでしょう」
サラギさんがバンギアスさんにそう言うと、バンギアスさんは渋々諦めた。
「あのバンギアスさん、サラギさん、本当にありがとうございました」
俺は二人に頭を下げて礼を言う。
この二人のお陰で俺はこの街にすんなり入ることが出来るのだ。
お礼は言っても足りない。
「いいってことよ!!さぁ!!さっさと彼女見つけてこい!!」
「気を付けて下さいね?佐藤さん最近の王都は少しおかしいので……」
二人に見送られ、俺たちは王都の街の中へと向かう。
この先にシアンはいるのだろうか?
───シアン!俺も王都に来たぞ!……無事でいてくれ。
シアン無事を祈りつつ、俺は王都へ足を踏み入れた。




