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閑話3 クリムの裏話

光に包まれ元居た場所に戻ってくる。

そこは城であった。


シアンと違い父親とそこそこ仲のいいクリムは、父親に魔王城を一つ任されているのである。


「クリム様!!大丈夫でございますか?!」


昔からこの魔王城に仕えているという、狼型の魔族の執事、ウルガがクリムを出迎える。


「まさかクリム様が召喚されるとは……お怪我は?!体に大事はございませんか?!」

「おおげさだなぁ……」


クリムは苦笑いをしてウルガに答える。


「ぼくは大丈夫だよ。それよりウルガ!ぼく、人間界に行くね!」

「……は?人間界でございますか?」

「うん!そこにご主人様とシアがいるから、遊びにいくんだ」

「ご……ご主人様ぁ?!!」


クリムのまさかの言葉にウルガはひっくり返る。

そんなウルガを余所にクリムは楽しそうに言葉を続けた。


「人間界にちゃんと行くのは初めてだけど、楽しみだなぁ。ご主人様の匂いは覚えたからどこにいるのかは多分すぐに分かると思うけど……」

「く……クリム様……」

「そだ、ウルガ。一応僕が今どこに召喚されたのか、調べてくれない?」


白目をむいて泡を吹いているウルガを無視して、クリムはウルガに言う。


「その方が無暗に探すよりも早いよね?その国の王都にシアは捕まったって言うし」

「シアン様が……?」

「あはは。まぁシアは大丈夫でしょ!」

「…………」


人間や天使ごときに捕まった所で、シアンには何の問題もないだろう。

それはウルガにも分かる。

しかし問題はそれではない。


あのシアン様が人間界のゴミどもに捕まり、クリム様は恐らく人間界のゴミに誑かされでしまった。

今召喚されたのは人間界なのだろうが、クリム様を召喚した何者かがクリム様を誑かしたのだ。


───生かしてはおけん……


「ご主人様になにかしたら、ウルガでも許さないよ」


ほんの僅かな殺意を気取られたのだろう。

見ればクリムがウルガを軽く睨んでいた。


それだけでウルガは足の先まで凍り付くような感覚に陥った。

しかし気合で乗り越える。


「クリム様!貴女様に何かあったらこの老体!死んでも死に切れませぬ!!」

「ウルガ……」

「貴女様は大魔王様、ラジゴ・ドラキング様の愛娘!!このウルガ!!命に代えてもお守りする義務がございます!!」

「ウルガ…………」

「どうか人間界に行くのはお考え直しください!!シアン様の事は我々で対処いたします!!故にどうか……!!」

「ウルガ……!」


「いいから調べて?」


クリムは二コリと笑って小首を傾げ、有無を言わせずウルガに命令した。

そしてウルガは察した。

クリムはウルガと問答するつもりなど微塵もない事に。


───こういう所は、大魔王様にそっくりだ…………!


自分が決めたことは何があっても曲げない。

圧倒的な力を持って必ず実現させる。


普段は比較的めんどくさがり屋な所も父親に似ているが、そういう所は本当にそっくりだ。

もはや問答は意味をなさないだろう。

ウルガは項垂れながら、クリムの言われた通り、召喚された場所を調べるのであった。


そんなウルガを横目にクリムは佐藤勝利を想う。


───面白かったなぁ。ご主人様


初めての召喚というイベントで出会った面白い男の子。

自分を召喚したという男の子は困惑とそして少しの照れを持って自分に見惚れていた。

しかし彼は自分に対して恐れは持っていなかったように感じる。


自分自身の容姿には自信がある。

だが、基本的に魔界の連中は容姿よりも強さが大切だし、事実もし他の人間に出会っても恐らくクリムを直視することは出来ないだろう。


下級の種族には魅力が効くが、それ以上に溢れる魔力の圧力で委縮してしまうのだ。


クリムはシアン程器用ではないため、魔力調整が少し苦手だ。

シアンのように発する魔力を極限まで抑える技術はなかなか難しいのである。


それ故、初対面で自分に見惚れてくれた勝利の反応は素直に嬉しかったし、可愛かった。

シアンがわざわざ自分の匂いを残してマーキングしているのも頷ける。

意識しては無意識かはしらないが、シアンも大層佐藤勝利が気に入っているのだ。


───ご主人様の事をシアも手放す気はないのかな?


それならば


───シアと二人でシェアしても構わないよね


シアンは大切な妹だ。

なんだかんだ言ってもシアンも恐らく自分の事は好いてくれいるはず。

大勢いる姉妹のなかでもシアンとクリム、そしてもう一人、(すず)と言う姉とは仲が良かった。


父親がそうであったように魔族は基本的に多重婚を気にしない。

まだそこまで考えているわけではないにしろ、一人の男を二人で仲良くシェアすることにクリムは特に問題はなかった。

なにはともあれ……


「待っててね?ご主人様」


笑みを深めてクリムは、佐藤勝利とまた逢う時を心待ちにするのであった。

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