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29 旅立ち

「飛竜で飛んで行けばすぐに王都までたどり着けるはずだ」


満身創痍のオスマンさんは息も絶え絶えに俺にそう言った。


スワンナさんとレコアさんの回復で少しは傷も癒えたようだが、それでも痛々しい姿に俺はどうしたものかと考えいていた。


「何言ってんだ!!そんな体で王都まで持つわけねぇだろ!!」

「だが彼女は私かアナシスしか制御することはできない……」


ジークさんがオスマンさんを説得しようとするが、オスマンさんは頑として譲らない。

このままでは、満身創痍のままオスマンさんは王都に飛んで行ってしまうだろう。


───どうすりゃいいんだ……


「ならば私が飛竜に乗って彼を王都まで案内しよう」


ジークさんたちが問答を繰り返していると、後ろから俺を含め二人に話しかける声があった。

この人はたしか……


「伯父貴!」


そうこの人は警備隊の隊長のアルデンさんだ。

ジークさんの叔父でもあるらしい。


「私はこう見えても元王国筆頭軍隊長だ。その時には飛竜に跨って戦っていた」

「アルデン殿……」

「オスマンよ。まずは傷を癒し、それから王都に来るがいい」

「しかし……」


直も納得できないオスマンさんだが、傷が痛むのか蹲って震える。


「どちらにせよ、その体では無理も出来まい。大丈夫だ、こっちの事はヴァイスに任せてきた。それに……」

「それに?」


ジークさんがアルデンさんに問いかける。


「今、王都と通信がとれんのだ」

「なに?!どういうことだ、伯父貴?!」

「それを確かめるためにも、私が行こう」

「……アルデン殿」


もはや問答は終わりだ、というようにアルデンさんは飛竜に近づいた。

すると飛竜はアルデンさんをジィっと見つめた後、頬をひとなめした。


「彼女も私に気を許してくれたようだ」

「アルデン殿……」


オスマンさんは固く目を瞑ると、絞り出すように言った。


「申し訳ありません。よろしく……お願いします」

「ああ。お前も早く傷を癒し、王都に来ると言い」

「……はい!」

「よし。ジーク!お前はどうする?」


オスマンさんが納得すると今度はジークさんに問いかける。

ジークさんは頬をかきながら答えた。


「俺も行きたいのは山々だが、今、俺が言っても足手まといになっちまう」


愛剣を奪われちまったんでな、と肩を竦めるジークさん。

アルデンさんは大きく頷くと、今度は俺に話しかけた。


「というわけだ、勝利君。申し訳ないがこの老体とともに飛竜に乗ってくれるね?」

「はい!よろしくお願いします!」


俺の返事に大きく頷くと今度はアークエンジェルズに問いかける。


「スワンナ殿!バラバ殿それと……」

「アーシュリよ」

「アーシュリ殿!お待たせした。参りましょうか」


その言葉に三人の天使(アーシュリは微妙な顔をしているが)が大きく頷いた。


「はい!行きましょう!」

「承知した」

「へーいへい」


アークエンジェルズたちの反応に頷いたオスマンさんは飛竜に跨る。

俺も緊張しながらそれに続いた。

鞍がついているとはいえ、意外と不安定な乗り心地に少し怖くなる。

若干震えていると、ジークさんが俺に何かを投げ渡してきた。


「??」

「少年!!俺のショットガンだ!!」

「ちょっとジーク?!」


レコアさんが驚いてジークさんを見ているが、それを無視してジークさんは言葉を続ける。


「見りゃ少年が持っている銃じゃ少し心もとないだろ!!だからそれも使え!」

「ちょっと彼にはまだ危ないでしょ?!」

「大丈夫だ!!引き金ひきゃ弾は出る!!」

「もう!!そういう事じゃなくて!!」


大体にして銃なんて野蛮だよ!!と怒るレコアさんを無視してジークさんは話を続ける。


「一緒に弾も何発か入ってる道具袋もある!!少年が持っている金用の道具袋とちがって、いろいろ入るから基本はそん中に銃をいれとけよ!!」

「……もう!!」

「あ……ありがとうございます!」


お金が入ってる道具袋とはケタロスさんがくれた袋だろうが、ポケットに入れていたはずなのによく見てるな……。


「勝利くん!ジークの銃は普通のやつより威力が高いかわりに反動も半端ないから!気を付けてね!!」

「大丈夫だろ!!な?少年!」

「誰しもジークみたいに筋肉馬鹿じゃないんだからね!」


そもそも普通の銃も撃ったことないので反動と言われてもよくわからないな……。

そんなことを考えいていると飛竜は羽ばたいて浮上し始める。

あわててオスマンさんに掴まり、そしてジークさんたちに言った。


「いろいろありがとうございます!」


「ああ!俺も剣を新調したらすぐに行くからな!!」

「すまない勝利君。私も傷を癒したらすぐに行く!!」

「私たちもこっちの跡片付けとか復旧作業とか手伝ったら行くからね!!」

「先ほどの魔族の少女にまた会ったら、是非とも私が話をしたいと伝えて下さい!!」


気を付けてね!と手を振るレコアさんにこっちも手を振り返す。

スレッタさんが言った魔族の少女って、クリムのことか?

確かにクリムはまた来るって言ってたけど……。


クリムの事を思い出してまた頬を赤くしてると、飛竜はあっという間に街が見渡せる高さまで羽ばたく。

そして飛竜がぐっと体に力を入れるのがわかった。


「勝利君、しっかり掴まっていなさい」

「はい!!」


すると飛竜は一気に加速しすごいスピードでブルリカから離れていく。

三人の天使たちもそれに追従するように加速する。


───シアン……今いくからな!


シアンは俺と違い一人で何の問題もないだろう。

だがシアンは俺を待っていると言ったのだ。

だから俺も早くシアンに合いたい。


こうして俺は初めて訪れた人間界の街、ブルリカを後にして、陰謀渦巻く王都デポカに向かうのであった。

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