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18 犯人は

銃声の聞こえた現場に到着したアークエンジェルズ副隊長カナンは、現場の惨劇に目を覆いたくなった。

カナンはスワンナの下で多くの事件を解決してきた男性天使だ。

先のスタンピードでもスワンナと共に勇敢に戦った。

そんなカナンですら目も覆いたくなるような惨劇が目の前にはあった。


首を刎ねられて凍り付いている女性の遺体。

そしてその横では、首を刎ねられ凍り付いている飛竜の死骸。

普段ボランティア団体が炊出しの集会場として使っている広場には、凍り付いた多くの遺体があった。


「いったい……なにが……」


カナンはこの惨劇を目のあたりにして呆然と立ち尽くした。


「カナンさん……」


そんなカナンにアナシスが話しかける。

アナシスはカナンたちよりも先に現場にたどり着いており、そこで先に戦闘して敗北したというオスマンを介抱していた。

気絶しているオスマンを王国筆頭軍に任せ、アナシスはカナン言った。


「犯人は恐らくあの魔族の少女ですわ……」

「……え?!」


魔族の少女とはあのスタンピードで、ディオスパイダーの群れを撃破してくれた少女の事だろうか?

この街を救ってくれた救世主である彼女がなぜこんなことを……?!

俄か信じがたい言葉に混乱するカナンを無視してアナシスは続ける。


「信じられないのも無理はありませんわ……」


そして目を伏せ言葉を続ける。


「彼女はこの街にとっては英雄。でも隊長は倒れる前、確かに言ったんですの。自分はあの魔族の少女にやられた……と」

「オスマンさんが……」

「ええ……。(わたくし)も信じられませんが、一度彼女と話してみるべきですわ」

「しかし……」

「ええ、わかっていますわ。事は慎重にならねばならない。ディオスパイダーを蹂躙する彼女をもし刺激してしまえば、もしかしたら(わたくし)たちが今度は餌食になる可能背がある」


そしてアナシスは顔を上げカナンの両手を握る。


「今回の件。(わたくし)たちファルデア王国筆頭軍に任せていただけないかしら?」

「それは……この事件の責任者をあなた達にお任せするということですか……?」

「ええ。貴方たちは彼女に大きな恩がある。それ故判断を誤る可能性がありますわ」


だからこそ。っと言ってアナシスは続ける。


「一歩距離を置いた立場である我々王国筆頭軍なら、今回の事件の真相を暴けると思いますの」

「……」

「カナンさん。事は一刻を争いますわ。もし彼女が犯人ならば、誰も止めることができません」

「その場合どうされるのですか?」

「勇者の派遣を願います」

「!!!」


勇者とはファルデア王国も加入している国連に所属する最高戦力である。

まだ若いため、三界大戦は経験していないが、三界大戦の経験者は口を揃えて言う。


『勇者の実力はラジゴ・ドラキングを上回っている。あの時彼がいれば、我々は敗北しなかった』と。


天界、人間界で全ての者が口を揃えて最強と唄う勇者ならば、あの魔族の少女を討てるかもしれない。

だがしかし……


「あの時、我々を助けてくれたのは勇者ではない……」


ディオスパイダーの蜘蛛の糸に絡めとられ、餌として食べられるのを今か今かと待つしかできなかった自分たちを助けてくれたの勇者ではない。

たとえ彼女が気まぐれで自分たちを助けてくれたとしても、わざわざ治療までしてくれたのだ。

彼女には多大なる恩がある。


「それが魔族の罠ですわ」


カナンが苦悩しているとアナシスは諭すように言った。


「魔族はそうやって、人の心に漬け込みますわ」


「ディオスパイダーを解き放ち自ら倒すことで多大なる恩をあなた達から受ける」


「あのディオスパイダーにしても、もしかしたらマッチポンプの可能性もありますわ」


「魔族に心を許してはいけません」


苦悩するカナンにアナシスや更に優しく言う。


「大丈夫ですわ。(わたくし)たちも、なにも彼女が完全に黒と思っているわけじゃありませんわ」

「アナシスさん……」

「さあ……今回の件、(わたくし)たちに任せてくださいますね?」


優しく微笑みかけるアナシスにカナンは頷きそうになった。だが……


「ちょっとまちな、カナン」


それを遮る男の声。

二人が声の方を振り向くとそこにはAランク冒険者のジークが立っていた。


「すこし話を聞かせてもらったが、今回の犯人は魔族のお嬢さんじゃあねぇ」

「……は?なにを根拠にそう言われますの?」

「お前さんは現場を又聞きしただけだから知らねぇかもしれねぇが、彼女の氷はしばらくすると砕け散るのさ」

「……」

「現にお前さんたちが現場に来た時、砕け散ってバラバラになった氷の結晶しか現場にはなかっただろう?」

「今回はたまたま砕け散らなかっただけかもしれませんわ」

「おいおいなんでだよ?なんでそんな面倒なことするんだ?まるで自分が犯人とわざと残すような真似をしたってことか?」

「……」


ジークは首を振って更に続けた。


「犯人は彼女に罪を擦り付けようとしているだれかだ」


だから……とジークは続ける。


「カナン。捜査権を王国筆頭軍に譲るな。この事件は俺達で解決するんだ」

「ジークさん……!」

「この街の英雄を勝手に犯人に仕立て上げようとしたやつを許すわけにはいかねぇよなぁ!」


なぁ?と今度はアナシスに笑いかける。


「だからアナシスさんよ!あんたはオスマンを見ておいてやれよ!あいつが犯人を見間違えたんなら、ちゃんと話を聞く必要があるだろ!」


そう言って締めくくるジークをアナシスは憎悪の目で睨みつける。

そんなアナシスを見てジークは笑いながら言った。


「あとアナシスさんよ!もう少し感情を抑える術を学んだ方がいいぜ?」


じゃないとばればれだぜ?と笑いかけるジークを無視してアナシスはその場を去ろうとする。

去り際にアナシスはカナンに言葉を残す。


「先ほども言いましたが、魔族を信じないほうが身のためですわよ」


捨て台詞を残して今度こそアナシスはその場を立ち去った。

そんなアナシスの背中をジークは疑いの眼差しで睨んでいた。

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