16 緊張の朝
目が覚めると全てが夢だった。
なんてことはやはり無く、俺はホテルのベットで目を覚ました。
デカリオさんの計らいで俺とシアンは、ホテルのスイートルームに泊まれることになった。
正直何もしていない俺までこんないい部屋に泊まれるのは気が引けるが、デカリオさんが言うには
「英雄のボーイフレンドを適当な宿に止めてしまえば、私が心苦しいからね!」
と言ってサムズアップしてくるデカリオさんの圧に負けて、俺までスイートルームに泊まることになった。
今日はこれから、天界の神人の遣いの人に会わなければならないはずだ。
なぜ俺がこの世界に呼ばれたのかを神人に聞かなればならないのだが、正直少し気が重い。
間違えなくこの世界でお偉いさんであろう神人に、使いの人とは言え直接会わなければならないのはなんだか緊張してします。
若干憂鬱気味にベットでぼうっとしているとドアがノックされた。
「佐藤勝利様。起きておられますか?」
この声は多分スワンナさんだろう。
俺は憂鬱な気持ちを振り払ってスワンナさんに答えた。
「起きてますよ!」
そう言ってドアを開けると、やはりそこにはスワンナさんが立っていた。
「おはようございます。勝利様。昨晩はよく眠れましたか?」
「あ……はい!おはようございます。おかげでよく眠れました」
当たり障りのない朝の挨拶をする。
「それはよかった。では朝食の用意ができていますので、移動いたしましょうか」
「はい……ん?」
そこまで会話して、なぜスワンナさんがホテリエみたいなことをしているのか気になった。
彼女はアークエンジェルズのリーダーだと聞いた。
ならば彼女がホテリエの真似事みたいなことをするのはおかしいのでは?
疑問に思っているとスワンナさんはクスクスと笑いながら言った。
「私が勝利様をお迎えに来たのは、今から行く朝食会場にルゴット家の遣いの……遣い?まぁお越しになっているからですよ?」
「ええ!?もう来られてるんですか?!」
「ええ……。私も驚きましたが、善は急げっと言われまして……」
すこし申し訳なさそうにするスワンナさんに俺は焦りながら言った。
「あの……。今起きたので、顔洗ってきていいですか?あと……着替え……」
「あ……!すぐに着替えを用意させますね!」
あわててその場を去るスワンナさんを見ながら俺は、申し訳なさと緊張で吐きそうになった。
★
ボランティア団体の集会所で今日も朝食の炊出しが行われていた。
ホームレスたちにとってこの炊出しが一日の唯一の楽しみだ。
昨日スタンビードで街が大変なことになっていたため、今日は炊出しが無いかと思っていたが、どうやら王国軍の復旧援助などのお陰で即、町が復旧したため今日も問題なく炊出しが行われるようだ。
ホームレス仲間たちが集まる中、いつも一番に来ている男がまだ来ていなかった。
「カンさんはまだきてねぇのか?」
「うーん。珍しいこともあるもんだねぇ……」
ホームレスたちが疑問に思っていると、遠くの方からフラフラと男が歩いてくるのを見つけた。
「なんだカンさん遅れてんじゃねぇか!」
仲間のホームレスたちは笑って男を迎え入れる。
「……」
「カンさん!昨日は大変だったけど無事だったみただね!」
「……」
「まさかカンさん!逃げずにあの後、街、漁ってたんじゃねんだろうなぁ!」
「……」
「カンさんならありえるわなぁ!」
「………」
口々に仲間たちが男に話しかけるが、当の男は無言で立っているだけだった。
何時もなら喧しいぐらいなのに、今日はどうしたのだろうか?
「カンさん?どうし……」
仲間の一人が疑問を口にした次の瞬間、男は膨れ上がった。
そしてそのまま爆発し、液状となった体で一気に炊出しに来ていたホームレス、そしてボランティア団体を飲み込む。
一瞬にしたその場にいた人間全て飲み込んだスライムはまたぐにぐにと形を変えていく。
飲み込んだホームレスとボランティア団体の人間を組み合わせて人間の形に変化していく。
そして
「ふう……」
見た目は完全に人の形になったスライムはため息をついた。
───ようヤくまともナ思考回路ヲ手に入れたナ……
スライムはまとまった思考回路で考える。
───フむ……派手にヤったが以外ト気付かれナいものだナ……
最初に保存されていた自分の記憶にアクセスしながらスライムは考える。
自分が作られた目的、そしてやらなければいけない責務。
そう。自分はディオスパイダーの計画が失敗したとき用の保険として作られたのだ。
99%成功するであろうディオスパイダー作戦がまさか失敗するとは製作者も考えてはいなかったようだが、まぁ自分が稼働しているということはそういう事なのだろう。
───まさかディオすパイダーが敗北すルとはナ……
驚愕の事態だが、スライムには関係なかった。
粛々と自らの責務を果たそうではないか。
「みなさーん?どうされたんですかー?」
おっと。
どうやらボランティア団体に生き残りがいたようだ。
運がいいのか悪いのか、この女はさっきまで食材を取りに遠くにいたみたいだ。
まあ帰ってきたのが運の尽き。
「あれ……?あなたは……?」
間抜けな女が自分に近づいてくる。
自分が次の瞬間食べられるとも知らず、のこのこと。
ああそれにしても
───ハラガヘッタ




