14 ギルド「オーバ」
「では……この街を救ってくれた英雄に乾杯!!」
ジークさんの乾杯の音頭と共にグラスが掲げられた。
屈強な戦士たちがグラスを掲げ次々に乾杯をしていく。
ここはジークさんが所属する冒険者ギルド「オーバ」という所らしい。
酒場のような場所に掲示板があり、そこに数多くの依頼書が張り出されている。
あの後、この国の王都から王国筆頭軍という人たちが来て、町の普及作業を手伝った。
王国筆頭軍の隊長さんと副隊長さんは飛竜といわれるドラゴンに乗って先にやってきた。
正直ドラゴンを見た時はテンションがかなり上がった。
遅れて車に乗った残りの王国筆頭軍の人たちがやってくる。
街に残った蜘蛛の糸を戦士たちが切り払い、壊れた建物などを魔術師の人たちが直していく。
凄まじい勢いで修復していく街を、俺はまるで一種のアトラクションを見ているかのように眺めていた。
修復作業が終わった頃にはすっかり夜になっていた。
街灯の光が街を照らすなか、ジークさんが俺たちに食事を振舞ってくれることになった。
そしてジークさんの仲間たち、警備隊の人たち、アークエンジェルズの人たちそして王国筆頭軍の人たちも交えてこの冒険者ギルドで慰労会が行われることになった。
皆が楽し気に話ながら食事をする中、俺とシアンはギルドの端のほうでゆっくりと食事を楽しんでいた。
慰労会が始まって最初こそ皆、シアンに感謝の言葉、そしてシアンの武勇伝を聞きに集まっていたが、シアンがあまりにもそっけなく対応しその場を後にしたため、それ以上皆シアンに話かけづらくなった。
そうして二人で食事を楽しんでいるとアーシュリとスワンナさんがやってきた。
「シアンさん。もっと早くに言おうと思っていたのですが……」
アーシュリは若干嫌そうにシアンに話かけた。
「改めてお礼を言わせてください!今回は本当にありがとうございました」
「……?」
「私からもお礼を言わせてね?シアンさん」
するとスワンナさんもアーシュリと共にシアンにお礼を言う。
「この街をそして人々を救ってくれて本当にありがとう。シアンさん」
「……別に構いません。私は私の為にやったまでですので、あなたたちに礼を言われる筋合いはありません」
ところで、とシアンは前置きしてスワンナさんに問う。
「最初にショーリさんを迎えに来た天使はどれですか?その天使に話があるのですが……」
「わたしだよ!!」
「……?」
「いやわざと?!それともガチで忘れてるの?!」
「こんなんでしたっけ?」
「こんなん……だと……!」
アーシュリが怒りで震えているとスワンナさんが助け舟を出す。
「シアンさん。彼女が転移人である佐藤勝利様をお迎えに行ったアーシュリよ。そして……」
今度はスワンナさんが俺の方に向き直り頭を下げた。
「佐藤勝利様。この度は私たちの手違いで貴方を大変な目に合わせてしまい、誠に申し訳ありませんでした」
「ちょっとスワンナ?!」
「本来ならばもっと早くに貴方に謝罪をするべきでしたが、この様に遅れて申し訳ありません」
と更に深く頭を下げる。
「ちょ……!ちょっと頭を上げてください!」
俺は慌ててスワンナさんに言った。
周りを見れば多くの人たちが俺たちに注目している。
「やめてよスワンナ!あんたが謝ることじゃないでしょ?!」
「移転人様を魔界のポータルに移転してしまったのは、天界のミスよ。それなら私も天界の一員として佐藤勝利様に謝罪する義務がある」
「だからって……!」
尚も頭を上げてくれないスワンナさんにとうとう俺は折れた。
「わかりました!もう大丈夫です!別に怒ってません!」
すると頭を上げぱぁっと明るく微笑んでスワンナさんは言った。
「ありがとう!勝利様!あなたの優しいお慈悲に感謝します」
「……確信犯ですね」
ぼそりとシアンが言うが、俺もそう思う。
公衆の面前で謝罪を受け取らなければまるで俺が悪者ではないか。
これで俺はこの先、天界の人たちが俺に何を言っても謝罪を受け入れてしまった以上強く攻めれないだろう。
───なんかやられた気がするな……
そう思って釈然としない俺をよそに、スワンナさんは話を進める。
「さて、勝利様。貴方様を天界にお連れしたいのですが、実はトラブルがありまして天界人以外の人たちが天界に行くことが出来なくなってしまっているのです」
だから貴方様が魔界のポータルに飛ばされてしまったのです。
とスワンナさんは言う。
「え?!じゃあ私が移転に失敗したのも、術を複雑にしたからじゃなくて」
「ええ。そのトラブルのせいみたいなの」
「なんですって?!」
「つい先ほどルゴット家から連絡があって、私も初めてそのトラブルの事を知ったのだけど・・・」
ですから、とスワンナさんは続ける。
「明日の午前中にルゴット家から貴方様へ遣いが来ます。その遣いはルゴット家の一員で神人なのですが、その時なぜ貴方様をこの世界に招いたのか、これから貴方様はどうなるのかをお話したいと思います」
それと、とスワンナさんはシアンを見て言った。
「貴女へのお金もその時支払うわ。ジルドさんのコアクリスタルと交換で15万バル。そして私たちに代わってこの街を救ってくれた謝礼金で50万バルの計65万バルを支払う予定よ」
そう言ってにっこりとスワンナさんは微笑んだ。
ロングのブロンドヘヤーがふわりと揺れてとても魅力的な女性だと思う。
しかし俺はそんなことより、自分の事よりもシアンがこのまま金を受け取って魔界に帰ってしまうという方が気がかりだった。
「シアン……」
「なんて顔してるですか」
するとシアンは笑いながら俺に言った。
「しばらくは此方にいますよ。まだまだいろいろと美味しいものとか、教えてもらわなければいけませんからね?」
「大丈夫なのか?」
「ええ。実はお金もそこまで急いでいるわけではなかったので。ですから……」
もっと私を楽しませてくださいね?
そう言って俺に笑いかけるシアンに俺は安堵していた。
この世界に投げ出されて最初に合ったからだろうか?
正直シアンがいなくなってしまうことが、俺にとって一番の不安だった。
そんな俺たちを見て、アーシュリが壮大に顔を引きつらせていた。




