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第2話:家出してるようなもの

 アルマがオレの腕を強引につかみ、強い力で引っ張りながらずんずん進んでいく。

 一方オレはただ困惑して引きずられているだけ。


 だが不思議と痛くはない。体に何かが当たった瞬間に跳ね返っているからだろうか。あるいはスキルのせいか。

 ま、どっちでもいい。


 廊下を曲がり、階段を上がり、そうしてあれこれ考えているうちにアルマはとある部屋の前で足を止めた。それにつられて視線を扉へと動かす。


 そこはアルマの部屋だった。


「今はもう午後八時だし、のんびりしてたらすぐに日付を超えてしまう。だからさっさと用意を済ませてすぐに行くわよ。ほら、ヴェインも自分の部屋に向かいなさい。そう離れてないでしょ? あ、集合場所はヴェインの部屋の前で。じゃ!」


 まるで嵐のような速さで一息にまくしたてた彼女は、その勢いのままに部屋に入り、気づいたころには大きな音と共に扉が閉まっていた。


 アルマの部屋の壁のあたりに見たことがあるような赤髪の男の写真があったような気もするが、一瞬すぎてよく覚えていない。

 きっと人違いだろうと自分にいい聞かせてオレも自室へと足を進める。


「追放、ねぇ……」


 オレはギルドマスターの息子だが、別に特別扱いはされていなかった。

 

 いや、全くされていなかったかと言われれば嘘になるが、基本的には他のメンバーと同じような扱いを受けていたように思う。

 同じように起き、同じように飯を食い、同じように訓練し、同じように寝る。そんなサイクルを繰り返していた。


 だから部屋の中身も普通のものだし、場所も普通だ。距離で言えばアルマの部屋から歩いて一分あるかないか、といったところだろう。


「出ていく、と言っても引っ越しじゃないしな。荷物は厳選しないと」


 オレのようなスキル持ちは、例外的に武器の携帯を許可されている。これからアルマが何をしようとしているのかは分からないが、持っていて損はないだろう。

 ちなみにオレの得物はよくあるロングソードだ。父さんは武器を持ったり徒手空拳だったりと変えるが、オレにそんな力はないので普通に剣を使っている。金額にすれば数万円の安物だな。


 次に服だ。数枚くらいは畳めばリュックに入るだろうし、なにより必要不可欠。水や食料はもうどうしようもないので、適当に置いてあったお菓子をいくつか選んでおく。


 ――そうしてリュックがパンパンになり、もう一つくらい詰め込んでおこうかと思案しているとき、部屋の外から重量のある足音が聞こえてきた。


 そして開かれる扉。


「ヴェインったら遅い! 私はもう準備を終わらせたというのに!」


 氷色の髪をなびかせてぷりぷりと怒っている。

 オレは慌ててチャックをしまい、ばつが悪そうな顔をしながら部屋を出る。


「そっか。これでもう最後なのか。この部屋も、このギルドホームも」

「あんまり思い出に浸ってると足が止まっちゃうじゃない……ほら、早く行くわよ」

「そ、そうだね。行こうか。でもどこに?」


 オレは至って軽い気持ちで聞いた。返ってくる言葉が、それはそれは軽々しい爆弾発言だとも知らずに。


「よくぞ聞いてくれたわね! それは――ダンジョンよ!」

「……へ?」


 それは自分でもびっくりするくらいに呆けた声だった。これほどのものは今までの人生で出たことがないと胸を張って言えるくらいに。いやまぁ、胸を張ることではないけど……


「だ・か・ら! ダンジョンよ! ダンジョン」

「聞こえてるって! オレが聞きたいのは、なんで追放される身の上の人間がいきなりダンジョンに行くのか、ってことだよ」

「ここでヴェインの強さを証明して、ギルドマスターを見返すためよ!」

「よし、やめにしよう。さーてどこに行こう――ってやめて耳痛い痛い!」


 むすっとした顔で、しかも無言でオレの耳を引っ張るアルマ。


 オレは必死に抵抗するも、上級スキル持ちはただ強い能力を手に入れるだけでなく。膂力や動体視力など諸々の身体能力が向上している。そんな相手にオレが勝てるはずもなく、アルマがふっと力を抜くまで痛めつけられる羽目になった。


 しかし、その直後に異変が訪れる。


 突然アルマが耳を押さえてうずくまったのだ。


「ア、アルマ!?」

「だ、大丈夫よ。別に致命傷とかじゃないから……ほら、行くわよ」


 そうやってオレの腕を、今度は優しく引っ張るアルマ。だがその表情は疑問符が頭から噴き出しそうなものであった。

 言葉にするならば「何が起こったのか理解できない」というような。


 アルマの様子は気になったが、そもそも反論ができなかった。

 次第に理由も忘れ、そのまま会話しつつ移動すること小一時間。アルマの言う「ダンジョン」へと到着したのだった。

 

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