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 【 照へ


  お手紙をありがとう。無事にメディウに帰れたと知りホッとしているわ。


 あなた達が私の家にいたあの日々を思い返して、もう懐かしい気持ちで一杯なの。一緒に家系図を探したり、恋の相談に乗ったり、とても楽しかったわね。


 それで、今度は私がそっちへ行くと約束したでしょう?今すぐにでもあなたに会いに行きたいのだけれど、実はしばらくお城から出られそうにないの。


 なぜなら…。私と樋成さんの元に新しいいのちが宿ったから。あなた達が帰ったあとに分かったのよ。


 私たちの願いがようやく叶いました。嬉しくて嬉しくて、とっても幸せです。私はいま猫の国を明るい朝に出来そうなほど元気だから、心配しないでね。


この子が生まれたらあなたにいち早く知らせるわ。あなたが一番に私たちのおチビさんに会ってちょうだいね。


 例のモグ・モグは見つかったかしら?また知らせてね。あなた達のお仕事が上手くいきますように。くれぐれも危険なことはせず、体に気を付けて。


                           暈陰雲ういだれより 】










  うだつは仕事を終えると、職場近くの路地裏にある行きつけの飲み屋に入った。いつもの長い卓に座り、何も言わずとも安いリンゴ水が出てくるのを待つ。


その間に店の中をぐるりと見回した。うだつの後ろにある四角い卓に三匹のオス犬が座っている。


白毛と黒毛と茶毛で、彼らはうだつのようにすっかりこの店の常連となった三匹だ。


他には狼のような見た目で、白と灰色の毛をした大きな犬と、赤茶の毛で濃い縞模様の入ったメス猫が店の奥隅にある卓でひっそりと飲んでいた。


 「おい。聞いたか?」うだつの後ろの卓にいた茶犬が言った。


 うだつは提供されたリンゴ水を舐めるようにひとくち飲み、肴のために耳を広げた。


 「なんだよ」黒毛が聞く。


 「白組の病院ですごいことが起こったらしい」茶毛は興奮していた。


 「なにがあったんです?」声の高い白毛の犬が言った。


 「なんでもよ、猫が二匹殺されたらしいぜ」茶犬は声を潜める。

 

 「ええ!」小さな白犬は驚いた。


 「そういえば誰かがそんなこと言ってたな」黒毛は知っている話題だったので、つまらなさそうにした。


「殺しなんて治安の悪いこの街じゃそこまで珍しいことでもないんじゃないか?」とふざけたように言う。


 「でも殺されたのは医者と看護師だぜ?その辺の裏通りにいるゴロツキや、犬畜生じゃねえ」茶毛はぶるっと身を震わせた。


「一匹は喉を掻き切られて、もう一匹は八つ裂きだってよ」


 「キャン!」白犬は恐怖で耳を塞いだ。


 「そいつはえげつねえな」黒毛は深い事情は知らなかったのか興味を持った。「一体だれがそんなことを?」


 「そこまでは知らねえよ」茶犬は首を振る。「病院の中で殺されてたんだとよ。なんの手掛かりもなかったらしい。こりゃ相当な手練れの仕業だぜ」


 「恐ろしいねぇ」黒毛は呑気にゆっくりとリンゴ水を飲んだ。


 「しかもよ、噂によるとその医者と看護師ってのは裏で相当な悪事を働いてたらしい。患者やその家族から文《もんk》を巻き上げてたとか何とか」茶犬はさらに小声になった。


「なんだそれ。それじゃあ殺されても文句は言えねえな。当然の報いってやつだろ」黒毛は呆れる。


 「おっかねえよなぁ。この街はどんどん駄目になっていくぜ」茶犬も呆れ気味だった。


 「お話終わりました?」白毛の犬は耳から手を離した。


 「あぁ?聞いてなかったのかよ。もう一回してやろうか?」茶犬は白犬の耳元に口を近づけ揶揄った。


 「やめてくださいよ!」小さな白犬はもう一度耳を塞ぐ。


 うだつはそのじゃれ合いを聞きながらリンゴ水を飲んだ。



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