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ドクタースイサイド  作者: 多谷昇太
雲の上の錐最戸医院
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なに保険証?…あ、あるさ

林(M)『え?保険証?あ、あるさ。ちょっと待ってくれ。いまあんたの目の前で出してやる。ちぇっ、まったく。人を頭から爪先まで胡散臭そうに見やがって……待ってろよ、いまこうして尻のポケットから財布を取り出してと……えーっと、ほらここに……ん?なんだ?この十万円ほどの札束は。なぜこんな大金を……そうだ……確か俺は有り金ぜんぶを貯金からおろして、車に乗って、青木ヶ原樹海へと……それから首を吊っている……男の姿が見えて……そして俺は……』

荒木田「ま、あるじゃない、保険証。(小声で)と、お金も。失礼しました。今日日世知辛い世の中ですからね、一応保険証の有無を確かめませんと(追従笑い)それならどうぞ、中へ……どうしました?ボーっとして表札など見つめたりして。変な方ね。もっとも変でなければうちへは来ないんだけど(軽笑)」

林「あ、いや、ちょっと……この表札の名前、キリモトって読むんですか?」

荒木田「そう。金偏に隹、それに最高の最、それから戸棚の戸で、キリモト」

林「錐最戸、ですか。音読みすればスイサイド。英語の自殺……となりますよね」

荒木田「そうなりますかね。それがなにか?」

林「おたく精神科なんですよね?人を癒して、救う……」

荒木田「はい、おっしゃるとおりです。なにかご不満でも?」

林「い、いや、別に。入ってもよろしいですか?」

荒木田「はい、どうぞ。保険証お預かりします。(小声で)これさえあれば誰だって……」

林「なにか云われました?」

荒木田「い、いいえ。下界にいた時の癖がつい……」

林「え?下界?」

荒木田「い、いいえ、なにも云ってません(誤魔化し笑い)さあさ、どうぞ。保険証お預かりしたからにはもう逃がしませんからね。商売、商売(笑い)」


 ドアが閉まる音。スリッパを出して履き替える音、看護婦がカウンター内に入って腰掛ける音等。

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