どっちが絶景か?!
荒木田「どうしました?林さん。うずくまったりして」
林「こ、こわい、怖いんです!こ、こんなに高い所にいたなんて。俺は……高所恐怖症なんです!」
荒木田「まあ、男のくせにだらしない。待っててください。いま行きますからね」
ドアを閉めて看護婦が階段を降りて来る靴音。風音。
林(M)『あ、ありがたい。荒木田さんが来てくれる。それだけで恐怖が癒える気がする。それと……吹き上がる風で荒木田看護婦のスカートがまともにめくれ上がった。白のショーツ姿がまともに目に入る。思った以上にきわどいV字カット、絶景だった。足下の光景とどちらが絶景か……』
荒木田「まあ、だらしない、林さん。こんなにふるえちゃって。はい、私につかまって。途中まで送ってってあげる」
林「お、送るって……こんな高い所から」
荒木田「すぐ着きますよ。ずーと降りるわけじゃないから。あ、あんまりしがみつかないでくださいよ。変なところに手をまわしちゃいけません」
林「すいません、うっかり手が腰にまわって……あ、荒木田さん、あなたに支えられていると身体があたたかい。先生の部屋のあの壁と同じで、心がやすらぎます」
荒木田「どういたしまして。あの時のお礼です」
林「え?あの時?……」
荒木田「い、いいえ、何でもありません……それより林さん、ほらお迎えのサイレンの音が聞こえて来ましたよ。私はここまでです……じゃあ先生と必ず待ってますからね。こんどこそ本当の、バイビー(艶笑)」
林「え?サイレンの音……」
風と雷鳴が、パトカーの鳴らすピーポー音に変わって行く。