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ドクタースイサイド  作者: 多谷昇太
雲の上の錐最戸医院
12/26

映し出された人屑ども。この、クズども!

M(再びエンヤ系の女性声による、驚きを示す、一瞬のフォルテ音)


林(M)『驚いた!天国への入り口と称するあの四次元的な空間、というか‘場’が、いつの間にか映画のスクリーンのようになっていて、あろうことかそこに、この俺の普段の生活の有様が、そのまま映し出されているではないか!いま映っているのはアパートの部屋で眠る俺を、隣室から叩き起こしているヤクザどもの姿。どういう仕組みなのか、睡眠妨害を受けている俺も、それをしているヤクザどもも、同一画面に映っているのだ。屋根を取っ払って、上から撮影しているがごとしである』

錐最戸「あれはひどいな、確かに。画面のテロップにはこれを何年も受け続けた、と出ているな」

林「(腑抜けたように)あ、ほんとだ……テロップが出てる」

錐最戸「(笑い)どうかね、林君、恐れ入ったかね」

林「お、恐れ入ったって……こ、これはいったい」

錐最戸「まあまあまあまあ、そんなことはどうでも。それより林君、君はどうしてあんなひどい目に会っているんだ?何かわけがあったか」

林「で、ですからそれは、止んごとなき事情があったと……たぶん私のタバコの吸い過ぎで、イビキがうるさいとか……」

林(M)『などと上の空で答えながら俺は現れた画面に見入っていた。車上生活者におちぶれるまでの数年間、確かに俺は、同じアパートに住んでいたチンピラどもから、執拗な睡眠妨害を受けていた。睡眠妨害のみならずもろもろの生活妨害を。たとえば通勤に使っていた俺の車のマフラーに石を突っ込まれる、アイドリングをMAXまであげられる、さらには自転車を何度でもパンクさせられる等々のこと。あげれば切りがない……眠れなければ誰が働けようか。俺の車上生活への転落は必至だった。しかしこんな仕打ちを受けるに至ったわけは実に下らぬことだ。口にするのも憂ざったい。ただ云えるのはアパートのオーナー始め、こいつらチンピラどもの親分など、世の金持ちや権力者の意向に従わねば貧乏人はどうなるか……人権や法律など方便でしかない、世の不条理さを思うばかりである。彼ら権力者らの草履・下駄のような、チンピラどものあざ笑う顔を見ていると、込みあげる怒りをおさえきれない……』

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