赤い玉⭐︎美女!と
竜は麒麟の車、運転席に乗り込もうとして止められた。
「竜ちゃん、そのヒールじゃペダルを踏みにくいのではありませんかな」
「はっ、確かにそうですね、麒麟さん。でも、私が履いてきた草履かコレしかないんだ。ーー草履に履き直してきます!」
「おいおい、わしの私物で良いなら……ブーツがあります。どうぞ、使うと良い」
麒麟に黒光り丈の長いブーツを手渡された。
「あの、コレl」
麒麟の私物だと言うが、どう見ても女性物だ。
運転席に横座りをして、ブーツにしっかりと張られた紐を足首の辺りまでほどくと、ヒールを脱いだ。
「麒麟さんーー」
ふと、何を思ったのか、助手席に座る麒麟の足元にある紙袋に目が止まった。
艶やかな、衣服が少しのぞいていた。
「もしかして、その紙袋に入っているのって、ライダースーツじゃ、ありませんか?」
「良くわかったね。そうだが、竜ちゃん、着てみるか」
「良いんですか! 一度、着て見たかったんです」
竜はウキウキしながら、ブーツと紙袋を持って、再びトイレに向かって行った。
コツン。
「麒麟」
虎時が麒麟側の窓ガラスを軽くノックした。
「虎時、わしの趣味も悪くはないと思うがな」
「なーに言ってんだか。ーー昔、俺は昔話の三枚のお札みたいなーー」
「どんな竜とて、登竜門を通らざるおえないだろう」
「たとえ麒麟だとしても、悪さが過ぎると俺も怒りますよ」
「わしが過去に、度が過ぎた行いをした事があるか?」
「ハイ、それはいつものことでしょう!」
握る拳から血が出そうな位の事はあったねと、虎時は苦笑いした。
麒麟が勧めるから、竜が嫌がるから(竜の為に)やめていたタバコを口に咥えた。
「虎時」
「どうした、玄武」
「俺ーー」
虎時は苦笑い。短くなったタバコを麒麟が差し出した携帯灰皿にねじ込んだ。
「色狂いの玄武も、やっと身を固めたくなったのか」
麒麟は、静観している。
「虎時、どうして君はそんなにストレートに言葉を吐き出せる?」
「思った事をそのまま言うと、よく言われるが。ーー数十年来の仲間のお前の悩みが分からないわけではないぞ!」
麒麟にもう一本タバコを勧められたが、断る。
「虎時、君は……」
「玄武、お前は前世で竜の弓の先生だった。あの時の師弟関係だった時の気持ちを引きずって、ーー今に至るから、仕方ないのかもしれんが、所詮、竜にとって俺たちなんざーー」
虎時が言いかけた時、肩を叩かれ背後を振り向いた。
「虎時さん、どう、コレ着るだけで、運転上手そうに見えない?」
一同、息を呑んだ。
「綺麗だ、似合っているよ」
虎時は、言葉を必死に探し出して、小声で言った。
二十代後半で、少しふくよかな竜だがピッタリとボディにフィットした(竜はライダースーツだと思っている)ボディスーツに膝下までの、コレまたキツく結ばれた紐によりセクシーさをより引き立てるブーツ姿で私人の四神の前に華麗に登場した。
「ホント、嬉しい……。でも、コレ、ピッタリすぎて、肉がはみ出そう」
竜はつまめないが、腰のお肉を摘もうとした。
「ワッハッハ! 竜ちゃん。そのボディスーツは激しく動いたとしても、滅多やたらに破けたりせんぞ!」
「破けないの、ーー良かった。あと、それとこのマスクもあったけど、これも被らないとカッコ良くないかな?」
竜は、どうやらキャッツなマスクを持って首を傾げている。首元まで上げられていないファスナーから胸の谷間が。
虎時は、ついその胸元に指を挟んでみたくなったが。
「やっぱり、麒麟のコレクションはーー」
虎時が麒麟を睨みかけた時、麒麟が頭が痛そうに額を撫でた。
「虎時、わしをお前の車に乗せてくれんか」
玄武の車ですけれども。
「良いです……けど、なんで突然?」
「良いか、それなら、わしが運転しよう!」
麒麟は虎時が軽く握っていた、車のキーを奪うと、すぐさま運転席に乗り込んだ。
「さぁ、君達は後部座席に乗ってくれ!」
「えぇーー」
虎時がため息をついた。
「虎時、そんなに僕と一緒に乗りたくないのなら、僕は竜ちゃんと一緒に麒麟の車に乗りますよ!」
「おう、そうするのか」
虎時は、良いとも、悪いとも言わない。
「えぇ、なに、なに?」
「竜ちゃん、良いから僕と麒麟の車に乗りましょう」
いつも通り、竜はこの場のアンニュイな雰囲気に気が付かず、麒麟から車のキーを受け取った玄武に手を取られ、麒麟の車の前まで来た。
「ちょっと、待ってよ。玄武さん!」
「竜ちゃん、さあ、助手席か、後部座席に乗って」
玄武が助手席のドアノブに手をかけようとしたが。
「私が運転します!」
「えっと……?」
玄武が後部座席へ、返り討ちにあった。
竜は素早く運転席に滑り込むとキーを差し、エンジンをかけた。
竜の目は爛々と輝いている。
(これは、危険だ!)
すぐさま、後部座席から飛び出ると、玄武は助手席に座り、キッチリシートベルトを閉めた。




