ロード⭐︎
麒麟はタイピングの手を止めて、ニヤリと笑った。
「文明の力ーーロードバイクですか。わしは愛馬にまたがって行きたいところだが……」
小説の締め切りが近いのだ。
もう、何十年とやっている副業で、今まで締め切りを破った事は無かった。
麒麟も、他の四神のメンバーと同じく同じ気配を感じていた。
「それで、竜ちゃん……」
竜は、赤色の巾着袋に入れていた青い花の形の両面鏡のコンパクトを覗いていた。
「リユース店で俺が買った鏡ですか」
「ううん、コレは昔、友達から貰ったものなの」
「どういう事ですか?」
竜は、リビングに行くと巾着袋に入った鏡とは別の鏡だが、とても似ている、いや同じ製品の鏡を竜は虎時に見せ、先ほどの巾着袋の方に入っていた鏡を右手に、リビングに置いておいた虎時からもらった鏡を左手に持って見せた。
「私の昔の友達がこれを持っていてって」
竜の両手に青い花の形の両面鏡が薄っすら輝いている鏡が収まっている。
そっくり、そのまま二つ。
(この感じ、同じような祈りが込められている)
虎時が一瞬、じっと視線を向けていたが。竜がボソッと呟いた。
「面白いよね、この鏡を見ていると……」
「「今の私には無理だけど、この子を守って」」
二人の声が重なった。
「竜ちゃん」
「虎時さん。プププ、シンクロしたね」
「そうですね〜〜、えっと、その鏡は貰い物ですか」
まだ、ニコニコ笑っている。
「うん、中学生の時だったかな……、親友から貰ったの。同じ鏡、うちにもあるなって探したらあったの」
「竜ちゃんも、物持ちいいですね。ーーああ、あの子」
「あの子って、虎時さん、どこまでもストーカー」
「一応、将来のお嫁さん候補の竜ちゃんの周辺調査は欠かせません!」
「って言うか、それって、許嫁とか婚約者ーーどっちでも同じかな。でも、私はそんなの知らなかった」
「そう言う、俺を人はストーカーと呼ぶ!」
「そうなんだーー、結婚してしまっている今では、どうでもいい事だけどーー」
「ですが、竜ちゃん。竜ちゃんは俺に会うまで、大変だったのではありませんか?」
「確かにーー。色々大変だったよ」
虎時は、リビングから持って来た両面鏡にそっと手を置いた。
「何するの」
「鏡に話しかけただけですよ……」
「鏡に話しかけるってば、ちょっと、やめてよ!」
「穢されたような見方をしないで下さいよ。うむ、確かにお友達さんは可愛いお方でしたね(笑)」
「ふん、こうだから、虎時さんは変態って言われるんですよ!」
虎時は、不甲斐なく笑うと玄関の鍵を閉め、二人でリビングに入った。




