竜⭐︎門
「どうして、埼玉の岩槻の総本社の久伊豆神社なのですか?」
虎時の素直な感想だ。
しかも、竜は頭の中で岩槻城址公園に行っていると言うじゃないか。
「ああ、ごめん、虎時さん。小説とは関係なく、先日久伊豆神社に行ったときにそう思ったの」
「竜ちゃん、話があちこちに飛びますね」
竜のこんなごちゃ混ぜ感はいつもの話だ。
ーー竜だけに、何か支線を飛び越えて人生を生きているようなのだーー
虎時のちょっとしたパラレルワールドを垣間見る力が、竜の天然な一見取り止めもない話にどこかしらシンクロするのだろう。
「私の住んでいるここも、岩槻だし」
「そうですね、そう言えばーー」
虎時にとって、岩槻は少し不便な土地だとは思うが、竜と家を構えて住むには良いところだと思っていた。
「私の書いている小説のその黒い男の人はずっと守ってくれていたの」
「すみません、俺、竜ちゃんの小説は読んでいませんので内容を知らないのであります」
「良いの、虎時さん。恥ずかしくって読んでもらおうとは思わないしさ」
「先ほどのお話だけでも、岩槻とは何ら関係ないと思うのですが、少し調べてみましょうか?」
「うん」
虎時は、「岩槻」「竜」とワードを入れて検索してみた。
「竜ちゃん、龍門寺がヒットしました。どうやらこの龍門寺には岩槻城主の大岡忠光のご霊廟があるらしいのであります」
「ねえねえ、虎時さん。確か久伊豆神社は江戸城の鬼門を守っていて、岩槻城の敷地内にあったんだよね!」
「竜ちゃんはーー」
「はい? どうかしたの? 虎時さん?」
「俺、以前から思っていた事があるんですがーー」
「なになに?」
「俺たち、江戸城の鬼門めぐりをしていませんか? ーー秩父の……」
「あっw そうかも……。方位避けの寒川神社とか、氷川神社の方位避けのお稲荷さんとかもお参りしたりしたけどさ」
「確か、お稲荷さんと言えば竜ちゃん、小学生の時から江戸百景、王子装束稲荷とかも興味がおありで」
「うん、そうだけどーー」
「もう一度、江戸の街を散策するのも良いのかもしれませんね」
「でもさ、今、私達は岩槻の久伊豆神社や岩槻城址公園の話をしていたんですけど?」
「※大岡忠光は9代将軍徳川家重の難のある言葉を唯一理解できた側近、だったらしいのです」
「虎時さん、それが江戸城ーーひいては江戸と繋がると?」
「そうですねーー竜ちゃんは過去、現在、あるのかないのかーーパラレルなワールドをホッパー……無意識に駆け回っているのかもしれません」
「はあ、私が?」
「そうです。俺以外の人が竜ちゃんの言動をそのまま鵜呑みにしたらそれを理解出来ずにいたでしょうが。俺ですから、大丈夫であります」
「いやいや、何が大丈夫なのかわからんけど?」
「そもそもが竜ですよ、俺をその背に乗せてもっと楽しませてください」
「いやいや、白虎を背になんか乗せたらーーそれこそ龍虎のなんとかで敗北したみたいじゃんねw 虎時さんも面白い所へ私を連れて行ってくださいなw」
「よし、わかった!」
「でもま、たぶん久伊豆神社の御眷属様が守っていてくれるからなんとなく小説を書けたのかもと思うよ」
「それは楽しいですね」
※参考資料
つわものどもが夢の後
大岡忠光ゆかりの地(龍門寺)9代将軍とともに生きた生涯より
https://fanblogs.jp/shirononagori/archive/471/0