秋☆
レイヤー女性に連れられて竜は、雑居ビルの地下室に招かれた。
竜にとって、女性と二人っきりでいるのは男性と二人っきりでいるより辛い。
それに、私人の四神――その、トップで隊長? である、麒麟が絡んでいるとすれば、なおのこと怪しい。
何か、企てられているに違いない。
この場を一秒でも早く離れ、虎時のそばに行きたい。
「こんな時、虎時さんだったらどうするかな……」
竜は焦る。
「ごめん、玄武。俺、竜ちゃんを探さないといけません」
虎時は、手に持っていた十束の剣を玄武に手渡そうとした。
「こちらこそ、すみません。虎時には走って頂きます」
玄武は硬い表情を変えず、アキバの狭い空を見上げて言った。
「なんだって、この俺に走れだと??」
「虎時が走らないのであれば、僕が走るので」
玄武はてのひらを突き出して強い眼差しを向けた。
「玄武……お前、まさか」
虎時が言いかけ、玄武はそんな虎時をよそにイベント会場から飛び出すと走り出した。
「玄武」
玄武の力強い背中を見送る。手には突き返そうとしてタイミングを逃した十束の剣がずっしりと重みをもって、その波動が手元から脳天を突き抜ける。
「よろしくないです。玄武……やめてくれよ。本当に、真面目に」
パーテーションから一部始終を見ていた麒麟が事もなげに虎時の前に現れた。
「ごきげんよう。虎時」
「いや、のんきに『ごきげんよう』ではないのであります! 玄武のやつ、今走り出しちゃったのであります☆」
「いやはや、虎時。お前こそ、なにのんきに玄武の背中を見送っておるのだ! ――お前も走るのだ!」
「走るって……俺、齢四十七ですぜ、旦那??」
麒麟は、ガハハハッと笑った。
「大丈夫だ、わしはその年齢の時は、朝まで女の子と遊んだもんだ!」
「女の子と遊ぶ?」
麒麟の言っている意味が分からない。「麒麟の言う『遊ぶ』とは、世間一般のオッサンの夜遊びでは無い。第一、今は昼間……あ、ですがもうじき夕暮れ。だんじて言える。これは……」と、そこまで虎時が肌感で感じた時、麒麟が虎時の左手にこれまたずっしりと重く少し麒麟の温もりを感じるモノを手渡した。
「コレは要。いざと言う時に使いなさい」
「麒麟、コレは竜ちゃんへのおやつですか?」
紫色の絹の布に包まれている。
「良い芳香がする」
虎時の鼻には少し匂いがキツイ気がするが、そのモノからは香の匂いが漂う。
「良いだろ。女の子はこういったモノが大好きなのだ」
虎時も麒麟に「俺もそれくらい知っています」と言い返したいところだが、右手に握る玄武から託された十束の剣と麒麟から託された「女の子が大好きなもの」必ず行に使う何かなのだろう。
「さて、困った」
虎時は、頭を掻いた。困ったにしては、困った様に見えない爽やかな切れ長の目尻が虎時の爽やかさをかもし出す。
麒麟は来場したファンにサイン本を手渡す作業に戻っていた。
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前作―婚活四方山紀行ーもよろしくね!
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