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折り合いをつける☆彡

  「……竜ちゃんらしくないですね」

   竜は、先ほどからずっと黙ったままだ。

  「私らしくないって何が?」

  「そう言う所がですよ」

  「そうかな――だって、虎喜さんはこれから会う女性と居る時は一緒にいてくれるっていったじゃん」

   虎時は、ふっと肩を下ろした。

  「まず、現地に着いたらコスプレしましょう」

  「ン? コスプレ……どうして? 今回会う人は虎時さんのレイヤー仲間なの?」

  「レイヤー仲間……。まあ、そんなところです」

  「そっか――。コスプレする人に悪い人はいないW」

  「なんですか、その理論」

  「論じてなんぼの事でもない」

   いきなり、変な口調になった竜に、ハンドルを握る手に力が入る。

  「竜ちゃん、今回竜ちゃんに着てもらいたいコスプレ衣装は……」

  「衣装、虎時さんが用意してくれたんだ……また、虎時さんの趣味の一品とかじゃないよね?」

  「俺の趣味を、皆に披露するつもりはありませんので、そこは気にしなくても大丈夫ですよ」

  「そっか、じゃあ、どんなコスプレ衣装なの?」

  「……既に、竜ちゃんも知っているやつです」

  「私が知ってる? なんかのアニメのキャラクター?」

  「いいえ、昨日俺が着ていた空色の狩衣。なんちゃって神主衣装であります」

  「……好きだね」

   若干、引き気味に言う竜。

  「ええ? 何をおっしゃいます、竜ちゃん。あの衣装は前世の君にそっくりなのですよ」

  「!!」

   竜は言葉にならない、虎時の斜め上から発言に焦った。

  「じゃあさ、今まで虎時さんは前世の私のコスプレをしていたと言うの?」

  「竜ちゃんの為なら、なんだって俺はしますよ?」

  「その……しますよって、なんだか、挑戦的な発言だね?」

  「ええ、その通りです。俺は竜ちゃんに戦いを挑もうとしているわけですから」

  「私と、虎時さんが戦うの?」

  「さようでございますれば、わざわざ、竜ちゃんの嫌がる女の人と引き合わせる事はしませんよ」

  「自分を好いてくれて、着いてきたと言うのに、虎時、お前もかW」

  「竜ちゃん」

  「いやいや、単にこのセリフ言って見たかったの。――流石に、虎時さんが女の人を友達に出来ない私の為にやってくれようとすることはなんとなく、分かっていたよ」

  「分かって、いた……。竜ちゃんは自分の嫌な事をされようとしているのに怒らないのでありますか?」

  「……わかんない。虎時さんは私に悪い事をするとは思えないし」

  「竜ちゃんは、怒れない」

  「そうそう、内心では嫌なんだけど」

  「それでは、俺の思うつぼではありませんか? それで、竜ちゃんは良いのでありますか?」

  「虎時さんの思うつぼ? なにそれ、虎時さんて私に何か悪い事をしようと企んでいるの?」

  「はい、そうですが?」

  「フフフ、そうやって白状する虎時さんが好き」

  「そうですか」

   虎時は車のウインカーを上げて左折した。

  「ところで、話は変わるんだけど。私の前世って神官さんだったの?」

  「そうですね、もぐりの神官だったようですよ」

  「もぐりW」

  「元々、神社、仏閣はその土地に住まう地域の人の中で守り育まれてきたものであり、その宗派に属する団体が維持管理していたわけで」

  「わけで?」

  「その、団体に所属しもしくは縁者、またはその教義に批准していれば成れたものでありますし」

  「だからと言って、みんながみんな成れた職業ではないでしょう?」

  「竜ちゃん、だからもぐりと言ったでしょう」

  「どう言う事?」

  「伊勢神宮などの格式の高い神社ならばいざ知らず、江戸時代は今よりもっと寛容だったのであります」

  「寛容ね?」

  「はい、例えば近所で赤子が生まれたとしましょう。すると即興でお祝いの舞を披露したりして、幸福の御裾分けをしてもらうと言う職業もあったものですよ」

  「へぇ――、そんな職業が?」

  「職業と言うか、即興です」

  「虎時さん、私もその類だったってこと?」

  「現代で言えば、神主は本業では無かったってことですかね……。何と言えば良いのかはわかりかねますが、本業は別で頼まれれば……派遣されると言う。普段が農民で戦には駆り出されるような……」

  「そう言われると、分かるかも」

  「クスクス。竜ちゃん。それ、自分でも認めちゃいますか?」

  「うん、だって……前世って、少なからず今世の自分に影響しているって言うじゃない?」

  「言うじゃない――」

   虎時はさも、楽しそうに竜の言葉を反復する。

  「はいはいはい」

   二人にとっていつもの事だ。

  「それで、俺が竜ちゃんの前でこの服を着て見せれば、竜ちゃんは何かを思い出すかと思って、着てみたんだけれども」

   小動物のような瞳を輝かせ竜を見つめる虎時。

  「虎時さん、私ってさ、なんでも影響されやすいから。嘘つくのはやめてよ」

  「嘘?」

  「だって、前世でさそんな神職やっていたら、もうちょっと神様と繋がれたり、純粋無垢とか。ダークな私がそんな事やってそうにないよ」

  「嫌ですか? 神職」

  「嫌いとかではなくて。しかも、あの狩衣を着て会う女の人ってもしかして、私と前世で関係がある人だったりするの?」

  「……そう思いますか?」

  「虎時さん」

  「竜ちゃんはそう思うことに、リスクを感じていたりするのですか?」

  「リスク……。女の人は怖い」

  「竜ちゃんはどうして女の人が怖いのですか?」

  「腹のうちで、何を考えているのかがわからない」

  「まあ、女性は切腹しても臓物は見せない主義ですからw」

   事実は違うが、男性よりも淑やかさに隠された悪意は目立ちにくい。

  「男も……同じようなものですがーーともかく、ちょっと着替えて遊んでみましょうw」

  「嫌」

  「まあまあ、そう言わずに。一度やってみたらいかがでしょう」




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