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炎☆彡

 竜は、また暗がりに走り出そうとした。

 「待って下さい、竜ちゃん。そちらは……」

 「大丈夫だから、ちょっと、来て」

 虎時は止めたが「そう言えば、あいつは暗がりに潜り込むのが好きだったな」虎時は、ふとあのホワイトライオンの雌をカッパドキアで拾った時からの事を思い出していた。

 今より、ずっと寒い薄く雪が積もった深夜の原野で、野垂れ死にそうだった彼女を拾った時。今世より立派な胸毛が生えた胸元に彼女を抱え込んだら、彼女は味をしめたのだ。

 何かがあると、直ぐに胸元に飛び込んで来るように。今思えば、それは彼女の猫的要素だったのだが。

 暗闇の濃淡が深くなればなるほど、空色の狩衣は鮮やかに明るく浮かび上がる。それとは対照的に昼間では明るく見えた鮮やかな赤系統の竜の振袖が闇に紛れ込む。

 虎時は少し目が悪いので暗がりではよく見えなくなる。「本当に、竜ちゃんはすぐに暗がりに紛れ込もうとする」「それも、可愛いとは思うが少し危険だとも思う」「竜ちゃんの場合、危険は即……」

 虎時の心配をよそに、嬉しそうに竜の振袖の色と同じくらい暗闇に溶け込んでいる小さな鳥居が見えて来た。

 「裏参道」

 「ン? ねぇねぇ、ここだよ、ここ! 私が虎時さんを連れて来たかったのは」

 「ここからだと、秋葉へ戻るのには少し遠回りになってしまいますよ。表参道から戻った方がちかいのであります」

 合理的に考えれば虎時の言い分は、直ぐに疲れて身体を壊してしまう竜を護る言葉かけなのだが。本人が行くのであれば、仕方なし。虎時もゆっくりと裏参道まで近づいた。

 「……!」

 竜が裏参道の鳥居の前で手招きしながらニコニコ笑っている。

 「どうしたの?」

 時々、虎時さえも竜が何を見て何を考えているのか分からない事がある。まるで、猫が何もない空中をじっと見つめている時のよう。

 「虎時さん、もうちょこっと、こっちへ来て見て」

 竜は一体何を見て、とても楽しそうなのか。

 裏参道は、表参道が活気に溢れ広いのに対し、うっそうと生い茂る木々の林、帳の降りた今の時間では都会の闇がもっと暗く見え、女性が好き好んで行くとは思えないが。

 裏参道は幅一メートルほどの階段になっている。

 竜に手を引かれ、二、三段降りると少し離れた前方下段の方から楽しそうに話す男女の声が聞こえて来た。

 どうやら、若者のたまり場になっているようだ。

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