竜ちゃんの大好きは俺だけだから☆彡
「どうしてよ、顔が広いって良い事じゃない?」
竜は言った。心底そう思うからだ。「そもそも、虎時さんはこんなに優しいし賢い顔してるから……きっと虎時さんを好きな人はたくさんいるわ」そう思う。でも「虎時さんが、色んな人からモテるとしたら私……」竜は瞬時にそんな事を考えてしまった。
「考えたくなんかないけどさ、虎時さんがそんなにもモテるの私は、嫌だよ」
「!!」
「えっ、アハハ! 竜ちゃん、俺、そんなにモテるかな?」
「う、うん、虎時さんカッコイイし!」
「まあな、俺はゴーゴーカレー、イケメン、僕、冷麺!!」
「うっ」
竜は笑いを堪えるのに必死だ。
虎時は胸を張って魅せた。
ベルサール秋葉原前の信号前まで、二人は歩いて着ていた。
交差点から眺めて見ると、いつの間にか麒麟の小説即売会はもう終わっていたようで撤収済みだった。
「麒麟のやつ、いつも仕事が速い」
虎時は、そう呟いて左手で竜の手を引いていた。
「麒麟さんは、渋カッコイイよね――一度でいいから、抱かれてみたい!」
「あぁ。竜ちゃんてば、俺より麒麟が好きなのでありますか?」
虎時は、わざとらしく目を細めた。
「ンっ! そんな事、無いもん!」
竜も、笑いを堪えるのに必死だ。
「そんな事、無いのか? ……なーんだぁ☆」
「なんだ、じゃないもん!」
横断歩道を渡り静まり返ったベルサール秋葉原を横目にそのまま、真直ぐ歩いて行く。
秋葉原の騒がしい熱気と狂乱に満ち満ちた声が、少し離れるだけで消える。
手を繋いで歩く、虎時と竜。
二人の空間にその気は無い。
東京の喧騒を越え、一歩入れば闇。
昼間の光と真逆の、東京の夜。
やろうと思えば、若い男女の様に連れだって歩いている最中に腕を腰に回して、唇を重ねる事だっておちゃのこさいさいだ。
そう、誰の事も気にしない。そんな、東京の空気でさえ。一昔前よりかははばかる精神もあるので、見かけなくなってしまったが。
そそっと、虎時は竜の腰に手をまわした。
どこかに忘れていない純真さを併せ持つ竜が虎時を無言で見つめる。
歳相応か、それより若く見える竜の瞳は楽しさだけを求めている。
いや、虎時にそれ以外は何も求めていない様に見える。
もし、ここで竜の純真さを犯してしまうような事があったとするのならば、虎時の漢の誓いに反するだろうと、その手を留めた。「そもそも、俺は。そんな、エロは求めてはいない。俺の求めているものは、竜ちゃんのそれと同じく。同じだからこそ……つうか、こんな所で俺のいい所誰かに目撃されたか、ないからな」
ニヤリとコッソリ微笑む虎時。
二人は、そのまま細い歩道を歩く。
一見すれば、ビルや商店の明かりで夜でも明るい道だが。
玄武の待つ、神田明神のその気は確かにありそうなのだが。
坂道は、雰囲気が薄暗い。
「ねぇ、ねぇ、虎時さん。本当にこっちで良いのかな? 玄武さんが待っているって言う『神田明神』って」
「ええ、まあ」
「ねぇ、本当?」
コンビニの横を通り、なおも少し暗い坂道を登る。