悪魔のアプリ
『どんな願いでも……とはいかないが貴方の願い事を叶えてくれるアプリがあるらしい』
そんな噂話を信じた俺はアンダーグラウンドなサイトを巡回しそのアプリを見つけ出した。
「悪魔のアプリ……」
如何にも怪しげなアプリだが欲望に毒された俺は生唾を飲み込みながらそのアプリを携帯端末にインストールした。
インストール完了を待ち……起動する。
「貴方の生態情報を獲得します? なんだそれ?」
アプリを起動させると貴方の血を魔法陣に一滴だけ情報端末の画面に垂らしてくださいと書かれている。
なんて黒魔術に通じる手が込んだ演出だろう。
何か起こる事などあり得ないが空気が読める俺はカッターナイフで指先を切り血を一滴画面に垂らした。
すると垂らした血ではスマホは動く筈がないのに魔法陣が暗い赤の光で強調される。
「すごいな……どうなっているんだ?」
携帯端末をあらゆる角度から眺めたが液晶に垂らした筈の血が跡形もなく消え画面には生態情報を獲得しましたと表示されている。
ジクジクと痛む指先を抑えながら俺は興奮していた。
「このアプリは本物かもな……」
ただのネタ探しのつもりだったから俺は願い事など考えていなかった。
明後日出演するラジオで話すネタさえ見つかればよかったからだ。
しかし携帯端末の画面には願い事を言えと書かれている。
ワンルームの風呂なしの家を見渡して考えるが特に思いつく事などない。
「どうしたもんかね……」
とりあえず携帯端末の画面を落として考えようと電源ボタンを軽く押す。
暫く何かないか考えよう。
どうお願いすれば皆が納得する結末が迎えられるのだろうか?
ふと気になって手元を見ると携帯端末の画面は無事に暗くなったのだが魔法陣だけが暗く赤い光を放ちながら残っていた。
「どうなっているんだコレ?」
携帯端末に映し出された魔法陣を確認してみるが俺が理解の範疇を超えている。
製作者すらわからないアプリなのだからこの状況が意味することを誰かに教えてもらう事はできないだろう。
「しかし困ったな……。願い事を言わないちこの携帯端末が使い辛いじゃないか!」
携帯端末の画面上にデカデカと魔法陣が表示されている以上何をするにも不便でしかない。
何か上手い願い事を考えなければ……。
「そうだ! 一生話のネタに困らない様にしてくれ!」
そうだ。
この願いこそ俺の悲願だ。
話のネタさえあればこんな怪しげなアプリをダウンロードする事もなくこんな狭い部屋にも住んでいないだろう。
携帯端末の画面上に俺の願いが表示され確認を促す言葉が続いている。
「了承っと。楽しみだ……ネタが尽きない人生。ありがとう悪魔のアプリ……」
しかし一向に話のネタは何も浮かんでこない。
「やっぱり詐欺アプリか……でも話のネタにはなった……な?」
情報端末の画面上にガチャガチャの様な画面が表示されている。
まだ願い事は完了していない様だ。
「代償を決めるガチャ?」
あちこちで命を取られる事はないとは書かれていたが代償がないとは書かれていなかった。
ただ一度詐欺アプリだと思ってしまった俺は早く終わらせる為に何も考えずにガチャを回す。
ガチャから出た物はリアルな目玉のイラスト。
その上には左目と書かれている。
「左目?……うわぁっ!」
左目に激痛が走る。
手で抑えながら状況を確認する為に鏡を開く。
手で抑えている左目から血が溢れ激痛から目を開ける事が困難になった。
「病院……いや眼科か! 早く行かないと!」
慌てて携帯端末で眼科を検索しようとした時には既に悪魔のアプリは画面上から消えていた。
俺は二度とインストールする事はないだろうが叶えたい願いがあるなら試してみるといい。
大丈夫だ。
命までは取られないだろうから……。
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