よくも調子こいてくれたなぁ!
「……? なんだ?」
もう一人のレオンが自分の意思に反し止まった右の腕を不可解そうに見やる。
その間にビーディーがリンネを抱きとめ、レオンから距離を取った。
「リンネ、なにやってんだお前」
「ララが暴走したの。多分だけど、レオンが魔獣王と入れ替わったのが原因だと思う。だから……イタッ!」
それより先を言う前に、ビーディーがリンネを小突く。
「だからっつって、あんな無防備で前に出て死んだら元も子もねぇだろうが。馬鹿がよ」
「……ごめん」
「ん。わかりゃいい。そんで……あいつ、何してんだ?」
ビーディーが動きの止まったレオンに視線を戻す。
なにやらレオンは頭を抱え、中空に向かって叫んでいるようだった。
「お前、どうして……! やめろ! 抵抗するんじゃない!」
一見、気が触れたようにすら思えるレオンの行動に、二人は僅かな期待を覚える。
「もしかして……」
「ああ。まだもしかしての域を出ねぇけど……あり得ない話じゃねぇ」
そう言ってビーディーはレオンに向かって歩き始める。
リンネも、ボロボロの体でそれを追いかけた。
「俺……は……! 出て、くるな……くそっ!」
レオンの目から〈魔獣王〉の象徴である赤が薄まってゆく。
その現象は、身体の主の帰還を示していた。
「おいおい魔獣王さんよぉ! ピンチそうじゃねえかおい?」
「うる……さい……! 話し、かけるな……!」
すぐ近くまで寄ってきたビーディーの小馬鹿にしたような口調に、レオンは明確に声を荒げる。
額には大粒の汗が浮かんでいた。
「冷静じゃねぇなぁ……おら!」
ビーディーの行動に、リンネは目を疑った。
苦しむレオンの鳩尾目掛けて、ビーディーが思い切り蹴りを入れたのだ。
その一撃によりレオンの身体が沈む。
「グフッ! ぐおお……!」
「ちょ、ちょっとビーディー! なにしてんの!?」
「あ? なにって……気合い入れてやったんだよ。この方がレオンも出てきやすいだろっと!」
そう言ってビーディーは転がっているレオンを再度蹴りつける。
確かに言う通りなのかもしれないが、一方的な暴力にしか見えない現状を見ているとリンネはレオンが不憫に思えた。
「まあその……程々にね?」
「おう! おらてめぇさっきはよくも調子こいてくれたなぁ!」
「グアァッ!」
なんだかビーディーが楽しんでいるように見えたのは、きっとリンネの見間違いだろう。




