魔龍救出作戦
「んじゃ、こいつどうすっかな。気分はよくねぇが、動かない今のうちに殺さなきゃだろ?」
「ああ。短剣の効果もいつまで続くかわからない。早急に対処すべきだ」
「だよなぁ……」
想像通りなシンピの返答に、ビーディーは渋い顔をしてみせる。
ウルフによって暴走させられている状態とはいえ、無抵抗な昔の仲間を殺すことにはやはり躊躇いが感じられたのだ。
「あの」
そんな空気感の中、声を上げたのはレオンだった。
「どうしたレオン」
「……よければ少し時間をくれませんか。ドラクルさんに〈魔獣王〉を試したい」
「〈魔獣王〉を?」
レオンを見やるシンピの視線がどこか怪訝なものに変わる。
「どういうことだ」
「言葉の通りです。ウルフのかけた〈魔獣王〉の上から俺の〈魔獣王〉をかけ直すことが出来ないか試させて欲しいんです」
そう説明してもシンピの目つきは厳しいまま。
むしろ先程よりも鋭くなったようにすら、レオンには感じられた。
「言ったはずだ。他の〈魔獣王〉スキルの制御下にあるものに〈魔獣王〉をかけても基本的には……」
そこまで話して、何かに気づいたようにシンピは目を見開く。
「そうか。お前なら……」
「はい。俺が〈殺気〉を上手く使いこなせれば……奴の〈魔獣王〉は解けるはずです」
「……つまり?」
確信じみた二人についていけず、ビーディーは首を傾げる。
その疑問に答えたのは、シンピの身体を支えているリンネだった。
「レオンは〈殺気〉によって“奴”……ウルフの〈魔獣王〉を解くことができるんです。だから理論上、魔龍に対してもそれは可能なはず」
「おじいちゃん、まだ助けられるってこと?」
ララの希望に満ちた問いに、レオンが頷く。
「ああ。だが……ドラクルさんにかけられている〈魔獣王〉は今までの雑魚魔獣とは比べ物にならない程に強力なはずだ。それに、そもそも俺がドラクルさんより強くなければ〈魔獣王〉をかけることはできない」
「……絶望的じゃねえか」
「ああ。だが、やる価値はあるのかもしれない」
その場にいた全員が頷く。
「決まりだな。それじゃあ早速試してきます」
レオンが振り返り、動かない魔龍の巨体に向かって駆け出した。
夕陽に照らされるその後ろ姿を見送りながら、シンピは口を開く。
「もう夕方か……日が落ちるまでだ、ビーディー」
「……わかった」
日が落ちるまでに〈魔獣王〉のかけ直しが成功しなければ殺す。
それがビーディーに課せられた任務だ。
拘束のタイムリミットが分からない以上は仕方のないこと。
だが――
――頼むぞ、レオン
まだ成熟していない少年の背中に、ビーディーは成功を祈らずにはいられなかった。




