決戦前
「落ちてくんぞッ!」
ビーディーが叫ぶ。
魔龍の巨体は、もうすぐそこまで迫ってきていた。
「おい! 俺はどうすればいい?」
オーバの問いに答えたのはシンピ。
「里の方までララやリンネを迎えに行ってくれ! こっちに向かってるはずだ」
「え、でもそれは……」
どこか煮え切らない様子でオーバがしり込みする。
その理由をレオンは知っていた。
同乗者は飛行中、掴まるところがない。
そのため、どうしても操縦士であるオーバに抱きつかざるを得ないのだ。
とはいえ――
「今は緊急時だ! 頼む!」
レオンが言うと、オーバは「あ~……もう!」と頭を掻いて、ジジに飛び乗った。
「わかったよ、やりゃあいいんだろ! ……死ぬんじゃねぇぞ」
「もちろん」
レオン達を一瞥して、オーバはジジと共に飛び立った。
「……師匠」
「なんだ」
「殺すんですか。ドラクルさんを」
「……そうするしかないだろうな。お前の〈魔獣王〉スキルは、既に術中にある魔獣に対して効果がないはずだ」
「そう、ですか」
少し表情に影が見えたレオンに、シンピは忠告する。
「手加減はするなよ。衰えたとはいえ、本気を出さずに倒せる相手じゃない」
「大丈夫……わかってます」
そう言ってレオンが短剣を構えた。
「やるぞ、お前ら!」
ビーディーが大地を蹴り、飛ぶようにして落下してきた魔龍に殴りかかる。
しかしその気配を察知したのか、ビーディーがその拳を振りぬく直前、魔龍がその双眼を見開いた。
「まずいっ……ビーディー!」
「あ?」
シンピの声も虚しく、空中で無防備となっていたビーディーの体は魔龍のブレスによって吹き飛ばされた。
「ビーディー!」
二人がビーディーの吹き飛んでいった茂みを見やる。
「だ~、くそが! いてぇじゃねえかよドラクルぅ……!」
すぐさま立ち上がって恨み節を言い放ったビーディーに、二人はホッと胸をなでおろす。
再度魔龍を見やると、すっかり意識を取り戻したようで、レオン達を睨みつけていた。
「私が気を引く。だからお前達はその隙に彼にダメージを与えてくれ」
「おうよ」
「特にレオン、恐らくお前の短剣には傷を与えた相手の自由を奪うかのような能力がある」
使用者本人すらも把握していない情報が出てきて、レオンは驚く。
「え、そうなんですか!?」
「まだ断定はできんがな。この勝負、その力を発動できるかどうかで戦況がかなり変わってくる……頼んだぞ」
「……! はい。任せてください」
力強く答えるレオンの様子に、シンピは一瞬だけ頬が緩んだ。
「信頼している……『転移』!」




