決別
「どういうことだ……?」
この地に必要なのは連邦ではなく魔獣。
理解しがたいウルフの発言に、シンピは問答の継続を選んだ。
「言葉通りだよ。一種族が台頭するくらいなら、すべて魔獣によって滅ぼされる方がいいに決まってる……その方が平等じゃないか」
「理解できない。それの何が良い? 隣国の食い物になる未来と何が違う?」
「違うさ! 無駄な争いもなく、魔獣の闊歩する原初に回帰するんだ。人同士で争いあう未来よりも余程美しいッ……!」
そう話すウルフの表情はどこか恍惚としていて。
狂信的にすら思えるその様子には、なにか底知れぬ恐ろしさがあった。
「狂ってやがる……」
ビーディーの呟きが風に乗ってさらわれる。
シンピは、どこか諦めたように、残念そうに「そうか」と言った。
「もう、ウルフはいないんだな」
「……なにか言ったか?」
「いや、なんでもないさ。聞きたいことは聞けたし、これ以上お前に構っている暇はない……『転移』」
そう言って、シンピはビーディーのところまで転移する。
「行こう、ビーディー」
「え? あ、ああ……」
戸惑いつつも、ビーディーはシンピの手を握る。
一緒になって転移するためだ。
二人を見やるウルフの表情はどこか悲しげだった。
「そうか……共感してもらえなかったか」
「共感してもらえると思っていたことが驚きだな。なにがあったかは知らんが、お前はもう……あの時のウルフじゃない」
「まさか! 私はあの時のままさ。君は賢い人だと思っていたから残念だよ」
「残念なのはこっちだ……じゃあな。次会った時は、殺す」
「ははっ。君には無理だよ」
「無理でも殺す、それだけだ。『転移』」
シンピとビーディーの姿がその場から消える。
ウルフはひとつ、ため息をついて天を仰いだ。
「さようならだな……シンピ」




