乗せるのは
「……やはり、いないか」
東部森林地帯の奥深く。
シンピとビーディーは、ドラクルの棲み処だった場所を訪れていた。
「残念だが……これでほぼ確定だな。暴れてる黒い龍ってのはドラクルだ」
ビーディーは、すっかり短くなった葉巻を素手で強く握り締め、先端の火を消す。
その拳は怒りで震えていた。
「ウルフの野郎……ぜってぇ許せねぇ……!」
「本当に、ウルフなんだろうか」
「あ? 何言ってんだシンピ。あいつ以外ありえねぇだろうが」
「……そうだな。すまない、忘れてくれ」
そう言って空を見上げるシンピの後ろ姿に、ビーディーはどこか不安を覚えた。
「それで何の用? わざわざそんなこと言うために来たわけじゃないでしょ?」
所は戻り人里にて。
ララが問うと、少年はいかにも不服そうに答える。
「里長から言われて来てやったんだよ。飛べないあんたらを龍に乗せてやれってな」
「龍に乗せるって……」
「え。もしかして君、ドラゴンライダー!?」
ララの言葉を遮り、レオンが驚愕の声を上げる。
「なによ、あんた知ってんの?」
「知ってるもなにも、東部のドラゴンライダーと言えばかなり有名だぞ! 龍と相性がいいのは勿論、バランス感覚や操縦勘が優れてないとなれないんだ」
「へぇ、こいつが……」
レオンの熱弁にリンネは目の前の少年を見やる。
不服そうな表情からどこか得意げに変わった彼は隣の青い龍を撫でる。
「そういうことだ。俺はオーバ。この里において唯一のドラゴンライダーで、こいつ、ジジに乗って空を駆けることができる」
「ふ~ん……でもそのドラゴン、全員が乗れるようには見えないよ?」
ララの言葉に、オーバは頷く。
「そうだな。乗せられるのは俺以外にあと一人。だから全員を空に連れていくことはできねえ。そんで……」
オーバがレオンを指差す。
「乗せるのはあんただ。他二人は認めねえ」
「え、俺?」
「……ちなみに理由は?」
リンネが訊くと、オーバは少年らしい悪戯っぽい笑顔で答える。
「お前らが気に入らねーからだよ。不可能を可能にするのが冒険者なんだろ? なら別に俺らいなくてもいーよなあ?」
「こいつ……」
リンネは頭にこそきたものの、どちらにせよ乗れるのは一人なので、それ以上なにか言うことはなかった。
「まあいいわ……それじゃあ、作戦を立てましょう」




