もう一人の狩人
「青が良かったなぁ」
ララが呟く。
どうやら、首飾りの色のことについて言っているようだ。
「いいじゃないか。藍色の首飾りは二級冒険者の証、三級冒険者の青よりも格は上だぞ」
「そういうことじゃなくて……まあいいけどね」
そう言ってララは少々頬を膨らませる。
リンネは、どこか呆れも混じったような表情で二人を見やる。
「ちょっとあんた達、もう少し緊張感持ちなさいよ。ギルドからの直接依頼。それも龍の討伐っていう、重要かつ高難易度のクエストなんだから」
そう。
レオン達は、黒い龍が暴れているという連邦東部の森林地帯からほど近い人里に来ていた。
シンピとビーディーは森の中で龍を捜索しているので別行動である。
ちなみにベルは冒険者登録をしていないため、ノシュキルの町に一度帰ることとなった。
「必ず無事に戻ってきてって、ベルも言ってたでしょ……ちゃんと気合い入れなさい」
どこか張りつめた様子のリンネは、そう言って空を見上げる。
――今回の討伐対象は空を自在に飛びまわる龍……その背中に転移できれば一番いいんだけど
「あんたら、ギルドから来た奴らだな?」
不意に背後から声がかけられる。
三人が振り向くと、背の低い少年と一体の青い龍がそこにいた。
「そうだ。君はこの里の人かな?」
レオンが答えると、少年は吟味するようにジロジロと三人を見る。
「ふぅん……あんたらがあの暴れ龍に勝てるとは思えねぇけどな」
その意外かつ不躾な発言に、ララとリンネの眼光が鋭くなる。
リンネに至ってはただでさえどこかピリピリしているというのに、これはますます手が付けられなくなりそうだとレオンは冷や汗をかいた。
「……どうしてそう思うの?」
リンネが静かに問うと、少年は得意げに笑って語りだす。
「そりゃ決まってんだろ。あんたらは知らねぇかもしれねえけど、龍ってのは物凄いスピードで空を駆けるんだ。飛べない人間が束になったところでどうにかなるもんでもねえよ」
これはキレるかもしれないとレオンが身構えていると、意外にもリンネはむしろ不敵な笑顔を覗かせた。
「ふふっ……そうね。たしかにあんたの言う通り、飛べない私たちにどうにかできるものじゃないのかもしれない……けどね」
リンネの蒼い瞳が鋭く光る。
それは正に、獲物に狙いを定めた狩人のような眼だった。
「不可能でも必ず狩る……そんな、道理が通ってない存在こそが私たち冒険者なの。指くわえてよく見ときなさい」




