模擬戦〈その2〉
「『転移』……『爆裂弾』」
転移と共にシンピの指先から爆裂弾が放たれる。
レオンは飛び回るシンピを〈殺気〉で捕らえようとするが、避けなければならない『爆裂弾』と一瞬にして姿を消す『転移』の組み合わせにより、その姿を認識することすらままならなくなっていた。
「くっそ……! 早すぎるだろ!」
転移魔法使いのシンピと近接攻撃と〈殺気〉以外の戦い方を持たないレオン。
状況はあまりにも一方的で、勝負は見えている。
しかし、レオンの脳は勝つための手段を模索し続けていた。
「『狂戦士化』は……ダメだ。暴走の危険があるし、状況の根本的な解決にはならない。なら打開策になりうるのはやっぱり……」
レオンが唐突に足を動かすことをやめ、己の周囲へとその意識を集中させる。
その意外な行動にシンピは驚いたが、攻撃の手を止めはしなかった。
「……! ……『爆裂弾』」
「上手くいってくれよ……!」
目を閉じ、レオンは目線の先に〈殺気〉を放つことを止める。
「レオン、危ない!」
傍から見ていたリンネが声を上げる。
シンピの放った『爆裂弾』は、立ち止まったレオンへと真っ直ぐに飛んでいく。
しかし、それでもレオンは動かなかった。
「殺そうという気持ちを……作る!」
瞬間、レオンの全身から鋭い〈殺気〉が放たれる。
――その手があったか
転移を繰り返していたシンピの身体はもちろん、少し離れた場所で見ていたリンネとベルの身体も、その〈殺気〉を感じ硬直した。
されど当然『爆裂弾』の軌道は変わらず、レオンに直撃した。
「レオン!」
〈殺気〉から解放されたリンネがすぐさまレオンに駆け寄る。
砂埃の中、レオンは倒れてこそいたもののはっきりと意識があり、心配そうなリンネにも軽く笑って答えてみせた。
「リンネ、大丈夫だよ」
その声に、リンネは胸をなでおろす。
「よかった……まったく。心配させるんじゃないわよ」
「はは、ごめん」
二人が会話を交わしていると、シンピがすぐ近くに転移してくる。
「師匠……完敗でした。俺、まだまだですね」
レオンが苦笑交じりに言うと、シンピは少しだけ間を置いて答えた。
「……いや、そうでもない。その短剣と〈殺気〉には恐ろしいとすら思えるものを感じた……おそらく、斬撃が当たりさえしていれば私が負けていた。成長したな、レオン」
予想だにしていなかった師匠からの言葉に、レオンは喜びを覚える。
だからだろう。
隣に立つリンネの表情に焦りの色が見えたが、レオンはそれに気がつくことはなかった。




