え、私?
「さて、儂から伝えられることはこの程度だ」
ララが忠誠を誓った後、ドラクルは二人に告げる。
「あ、最後にもう一つ聞きたいことが……いいでしょうか」
レオンが手を挙げ、お開きとなりそうだった雰囲気を遮る。
ここに来た一番の理由について、まだ達成できていなかったからだ。
「よい。なんだ」
「実は……」
レオンはなんと説明したものか迷いつつも、なるべく分かりやすいよう言葉を選ぶ。
巨大ゴーレムとの戦闘中に突如表面化した〈魔獣王〉を名乗るもう一人の自分についてだ。
「……つまり、貴様の〈魔獣王〉は人格を有しており、身体の主導権を握ることもできると。そういうことか?」
「はい。身体の主導権に関しては俺が委ねない限りは乗っ取られることはないと……今のところは考えてます」
「そうか……」
岩のようにゴツゴツとしたドラクルの顔が憂いを帯びる。
「悪いが……そのような事象は聞いたことがない。少なくとも我が主から伝え聞いてはいないな」
「そうですか……」
レオンが肩を落とす。
それを聞きたかっただけに落胆も大きい。
少しの間考え込んでいたドラクルはそんなレオンをよそに、また言葉を続けた。
「〈魔獣王〉が人格を有するということは、おそらく〈魔獣王〉自体が貴様に馴染んでいないということだと考えられる……しかしそうなると厄介だな」
「厄介ってなにが?」
ララが問うと、ドラクルは「少し複雑な話になるが」と前置きしてから答える。
「貴様はレオンに忠誠を誓い、その結果として〈魔獣王〉の力を授かった。このことからわかるのは、レオンと〈魔獣王〉は確かに同一人物だということだ」
「……たしかにそうか」
レオンが理解を示す。
ララが忠誠を誓ったのはレオンだが、与えられたのは〈魔獣王〉の力。
つまり、通常状態であればレオン=〈魔獣王〉であることは間違いない。
ちなみにララは既に理解を諦めていた。
「しかし貴様は〈魔獣王〉自体が人格を有していると言う」
「はい。それは間違いないです」
「であれば、なにがトリガーとなっているかは分からないが、その人格が目覚めた時は〈魔獣王〉スキルの主導権は〈魔獣王〉自身に委ねられると考えるのが自然だ。そうなった時、魔人の娘……ララが忠誠を誓った貴様自身からは〈魔獣王〉が剝奪される」
レオンが何かに気づき、ハッと顔を上げる。
「ってことは……!」
「ああ。ララは〈魔獣王〉への忠誠を失ったことになり……暴走が始まる」
よくわからないのですっかり興味を失っていたララだったが、深刻そうな雰囲気の時に自分の名前が出てきて驚いて目を見開き――
「――え、私?」
場違いな程に気の抜けた声を上げた。




