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落ちこぼれの魔獣狩り  作者: 織田遥季
王と忠誠
64/115

暗いキッチンで

「リンネさんが抱えているもの、少しだけ私にも背負わせてくれませんか」


 水に濡れた手でリンネの手を掴み、真っ直ぐに目を見てベルが言う。

 リンネはそんなベルから逃げるように目を逸らした。


「それは……できない」


「どうしてですか」


「あんたを、巻き込みたくない」


 それを聞いたベルは真剣な表情のままリンネの顔を掴み、その蒼い瞳を覗き込む。

 自分から目を逸らしてほしくはなかったから。


「巻き込んでほしいって言ってるんです。私を言い訳に使わないでください」


 強い語気ではっきりと言い切るベルに、リンネもとうとう観念して苦笑を浮かべて見せた。


「……あんたも厄介な性格ね」


「あはは、リンネさん程じゃないですよ」 




「『悪を滅ぼすのは正義か?』ですか……」


 蠟燭の灯りのみが照らす、仄暗いキッチンでベルが呟く。

 リンネは一つ頷いて言葉を続けた。


「『悪を滅ぼすのはいつだって別の悪だ』とも言ってたわ。それと、私はどう思うのか考えておいてほしい、とも」


 「ふむ」とベルが口元に手をやる。


「……で、どう思うんですか?」


 ベルからの問いに、リンネはどこかうんざりしたような表情を浮かべる。


「答えが出てたらここまで悩まないわよ……ただ、私が人を助けるのは、自分がそうしないと生きていけない異常者だから。それは誰かの窮地を、不幸を願っている()だと言われてしまえば反論のしようがないわ」


「なら、リンネさんは〈魔獣王〉の言うことが正しいと思うんですか?」


「いや? そう簡単に賛同はできない。けど、まったくの間違いってわけでもないと思うわ」


「……そうですか」


 小さな静寂を挟み、ベルは再度口を開く。


「私はリンネさんのことを悪だとは思いません。感謝だってしてる。リンネさんがどう思うとそれは変わらない」


 そう言って、ベルはリンネに微笑みかける。


「そのことだけは、どうか覚えていてください」


 リンネはなんと返していいか分からなくなり、少しの逡巡の後、小さく呟いた。


「……ありがとう」


 そしてリンネは精一杯笑って見せる。


「駄目ね。なに言われても関係ないって思えるくらい、もっと強くならないと」


「リンネさんはもう強いですよ……だから、抱えすぎたと思ったら私に分けてください。それで少しでも軽くなるなら、私は喜んで背負います」


 月明かりがベルの横顔を照らす。

 リンネは、嬉しいような、安心したような気持ちになって、ベルを強く抱きしめて、泣いた。

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