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落ちこぼれの魔獣狩り  作者: 織田遥季
ブレンダムにて
55/115

もう一人の

 ()()は真っ暗で、ただ一つ、怪しい炎のようなものが赤く揺蕩っていた。

 暗闇の中には炎以外なにもなく、レオンは引き寄せられるように炎のもとへと歩いて行った。


「これは……」


 炎の向こうで、ぼんやりとした人影が揺らめく。

 それは段々その輪郭をはっきりとさせていく。

 その姿を、レオンは知っていた。


――そうだ、あれは


 間違いない。

 炎の向こうから姿を現したのは、他ならぬレオン自身であった。


「はじめまして。いや、久しぶりというべきかな。レオン・ハルベルト」


 もう一人のレオンは、冷たい声色で言葉を投げかける。

 しかし、レオンはそれに臆することはなかった。


「……お前は俺のなんなんだ」


「随分せっかちだな。あまり答えを急いていては、手に入れられる物も手に入らんぞ」


 神妙に問いかけるレオンに対し、もう一人のレオンはわざとらしくおどけて見せる。

 しかし、その態度は火に油を注ぐようなものだった。


「いいから答えろ」


 珍しく苛立ちを隠さない様子のレオンを、もう一人は口笛を吹いて冷やかした。


「なんだよ、ちゃんとそういう態度もとれたんだな」


「おい」


「わかったわかった。答えるよ」


 仕方なく、といった風に、もう一人がもったいぶっていた正体についてようやく口を開く。

 レオンは恐怖にも似た緊張を感じて、生唾を飲み込んだ。


「俺はお前だよ。お前の〈魔獣王〉としての部分だ」


「魔獣王?」


 レオンが聞き返す。

 もう一人はニヤリと笑って話を続けた。


「ああ。だから俺を使いこなすことができれば、お前はより大きな力を手にすることができる」


「俺を、使いこなす……?」


 もう一人が頷く。

 その顔から、いたずらっぽい笑みは消えていた。


「ああ。お前はまだ〈魔獣王〉の力を半分も使いこなせてはいない。俺を解放しろ。そうしなければ、お前は今ここで死ぬ」


 死ぬ。

 その言葉に、レオンは自分の身に死が迫っていることを思い出す。


「お前がやれるなら手を出さないつもりだったが、そうもいかなくなった。俺はまだ死にたくない」


 そう語るもう一人から非常に強い力を感じることに、レオンは気がついた。

 これは、善い力ではない。

 その事実を、レオンは直感で理解する。


――本当にこいつを解放してもいいのか?


 レオンに迷いが生じる。

 それを知ってか知らずか、もう一人が炎の向こうから囁く。


「魔獣を一体残らず殺すんだろ? こんなところで死ねないのは、お前も同じはずだ」


 その声は、重く、レオンの心の奥底まで響く。


――そうだ、こんなところで死ぬわけにはいかない


「ならば今、お前がやるべきことは一つ」


――俺が今、やるべきは




解放(バースト)


 中空に放り出され、地面に向かって落下していたレオンが呟く。

 するとその眼は大きく見開かれ、黒の瞳は深紅に染まる。

 空を足元に置いた()()は、子供のようにいたずらっぽく笑って、その身を華麗に翻した。


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